任脈(にんみゃく、英: Conception
Vessel(The Ren Meridian), Renmaixue)は、経絡の一つ。奇経に属する体の前正中線を流れる経絡である。
国際表記はCVまたはRenと表記する。
目次
会陰部に起こり、下腹部の正中を上り、臍に達し、さらに腹部、前胸部の正中を上り、のどを循り下顎の正中から下歯齦に終わる。
CV1.会陰(えいん)
兵法:戸渡(とわたり)
取穴部位:会陰部の中央
筋肉:会陰腱中心、外肛門括約筋
運動神経:陰部神経
知覚神経:後大腿皮神経の会陰枝、陰部神経
血管:内陰部動脈
CV2.曲骨(きょくこつ・きょっこつ)
兵法:北辰(ほくしん)
取穴部位:前正中線上で、恥骨結合の上際、神闕穴の下5寸、気衝穴、衝門穴、横骨穴と同じ高さ
筋肉:白線
知覚神経:腸骨下腹神経前皮枝、腸骨鼠径神経
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
CV3.中極(ちゅうきょく)、玉泉(ぎょくせん)
兵法:妙見(みょうけん)
取穴部位:神闕穴の下4寸、曲骨穴の上1寸、帰来穴、大赫穴と同じ高さ
要穴:膀胱経の募穴
筋肉:白線
知覚神経:腸骨下腹神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
要穴:小腸経の募穴 筋肉:白線 知覚神経:肋間神経前皮枝、腸骨下腹神経前皮枝 血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈 |
CV5.石門(せきもん)
兵法:気海(きかい)
要穴:三焦経の募穴
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
CV6.気海(きかい)、脖胦(ぼつおう)
取穴部位:神闕穴の下1寸5分
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
CV7.陰交(いんこう)
兵法:渦中(かちゅう)
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
CV8.神闕(しんけつ)
兵法:天南(てんなん)
取穴部位:臍の中央、天枢穴、大横穴、肓兪穴、帯脈穴と同じ高さ
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
CV9.水分(すいぶん)
兵法:明星(みょうじょう)
取穴部位:神闕穴の上1寸、滑肉門穴と同じ高さ
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈、下腹壁動脈
CV10.下脘(げかん)
兵法:欄門(らんもん)
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈、下腹壁動脈
CV11.建里(けんり)
兵法:中脘(ちゅうかん)
取穴部位:神闕穴の上3寸、中脘穴の下1寸、関門穴、腹哀穴、石関穴と同じ高さ
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈、下腹壁動脈
兵法:上脘(じょうかん) 要穴:胃経の募穴、腑会 筋肉:白線 知覚神経:肋間神経前皮枝 血管:肋間動脈、上腹壁動脈 |
CV13.上脘(じょうかん)
取穴部位:胸骨体下端の下3寸、中脘穴の上1寸、神闕穴の上5寸、承満穴、腹通谷穴と同じ高さ
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈
CV14.巨闕(こけつ)
兵法:水月(すいげつ)
取穴部位:胸骨体下端の下2寸、神闕穴の上6寸、不容穴、幽門穴と同じ高さ
要穴:心経の募穴
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈
CV15.鳩尾(きゅうび、はとのお)、尾翳(びえい)
取穴部位:胸骨体下端の下1寸、神闕穴の上7寸
要穴:任脈の絡穴
筋肉:白線
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈
CV16.中庭(ちゅうてい)
兵法:胸尖(きょうせん)
取穴部位:膻中穴の下1寸6分、胸骨体正中線上、第5肋間、乳根穴、食竇穴、歩廊穴と同じ高さ
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:内胸動脈の枝
取穴部位:両乳頭を結ぶ線が、胸骨体正中線上と交わるところ、乳頭は第4肋間の高さ、乳中穴、天谿穴、神封穴、天池穴、輒筋穴、淵腋穴と同じ高さ 要穴:心包経の募穴、気会 知覚神経:肋間神経前皮枝 血管:内胸動脈の枝 |
CV18.玉堂(ぎょくどう)
取穴部位:左右第3肋間の高さで、胸骨体正中線上、膺窓穴、胸郷穴、霊墟穴と同じ高さ
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:内胸動脈の枝
CV19.紫宮(しきゅう)
取穴部位:左右第2肋間の高さで、胸骨体正中線上(胸骨角)、屋翳穴、周栄穴、神蔵穴と同じ高さ
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:内胸動脈の枝
CV20.華蓋(かがい)
兵法:肥骨(はこつ)
取穴部位:天突穴の下2寸、胸骨角上際正中線上、第1肋間、庫房穴、彧中穴、中府穴と同じ高さ
知覚神経:肋間神経前皮枝、鎖骨上神経
血管:内胸動脈の枝
CV21.璇璣(せんき)
兵法:脃骨(ぜいこつ)
取穴部位:天突穴の下1寸、胸骨柄正中線上、天突穴と華蓋穴の間、兪府穴、気戸穴、雲門穴と同じ高さ
知覚神経:肋間神経前皮枝、鎖骨上神経
血管:内胸動脈の枝
CV22.天突(てんとつ)
兵法:秘中(ひちゅう)
取穴部位:頚窩の中央
知覚神経:頚横神経
血管:下甲状腺動脈
CV23.廉泉(れんせん)
兵法:結喉(けっこう)
取穴部位:喉頭隆起上際で舌骨との間
知覚神経:頚横神経
血管:上甲状腺動脈
CV24.承漿(しょうしょう)
兵法:下昆(かこん)
取穴部位:オトガイ唇溝の正中
運動神経:顔面神経
知覚神経:下顎神経
血管:下唇動脈
犬の場合
陰兪(いんゆ)
取穴部位:陰嚢(陰唇)と肛門の中間
神闕(しんけつ)[編集]
取穴部位:臍の中央
下脘(げかん)
取穴部位:中脘穴と神闕穴の中間
中脘(ちゅうかん)
取穴部位:鳩尾と臍の中間
上脘(じょうかん)
取穴部位:鳩尾と中脘穴の中間
膻中(だんちゅう)
取穴部位:両前肢間の胸骨線上
承漿(しょうしょう
取穴部位:下唇直下の窪み
任脈
WHO |
ツボ名 |
場所 |
こんな時に使う |
ツボの由来 |
CV-1 |
会陰 |
会陰部の中央にある。 |
排尿障害、痔、月経異常、子宮脱、ED、前立疾患 |
「会」=会合するところ、「陰」=前陰(生殖器)と後陰(肛門)を指している。二陰の間にあるため、名付けられた。 |
CV-2 |
曲骨 |
前正中線上で恥骨結合の上際に取る。 |
排尿障害、月経異常、子宮収縮不全、帯下病、ED、遺精 |
「曲」=曲がる、「骨」=今でいう恥骨のことを。恥骨の上縁の湾曲したところにあるから。 |
CV-3 |
中極 |
臍の下4寸に取る。(曲骨穴1寸上) |
尿閉、尿漏、頻尿、生理不順、不妊症、ED |
「中」は体の上下左右の真ん中、「極」は端。この中に、胞宮や精室があり、膀胱経の募穴なので、生殖器系や泌尿器系に効果が高い。 |
CV-4 |
関元 |
臍の下3寸に取る。 |
尿閉、尿漏、頻尿、生理不順、生理痛、不妊症、ED、下痢、体力回復 |
「関」=関所、重要な場所。「元」=元気。元気が生まれるところ。 |
CV-5 |
石門 |
臍の下2寸に取る。 |
小便不利、生理不順、腎炎、下痢、腹痛 |
「石」は詰まって通らない。「門」っは経気が開合するところ。通りづらいものを通す作用に効果がある。 |
CV-6 |
気海 |
臍の下1寸5分に取る。 |
臍辺りの腹痛、下痢、生理不順、ED、早漏、自律神経失調症 |
「気」=先天の気、「海」=広く集まるところ。臍下に寒気がたまったり、気の滞る病に作用する。 |
CV-7 |
陰交 |
臍の下1寸に取る。 |
臍辺りの腹痛、下痢、生理不順、ED、早漏、自律神経失調症 |
「交」=交わる。任脈・衝脈・腎経の陰経の三脈が交わる穴という意味。 |
CV-8 |
神闕 |
臍の中央に取る。 |
臍辺りの腹痛、下痢、冷え症、体力回復 |
「神」は生命。「闕」は宮中の門。臍からへその緒をつたい、胎児は滋養するので、臍は神の気の出入り口という意味。 |
CV-9 |
水分 |
臍の上1寸に取る。 |
腹脹、腸鳴、、浮腫、水腫、吐き気、胃腸炎 |
水分穴は小腸の入口にある。小腸は水分と物質に分けるとこなので名がついた。 |
CV-10 |
下かん |
臍の上2寸に取る。 |
食後の腹脹、腸鳴、腹痛、吐き気、胃腸炎 |
「かん」は胃の管全体の意味。下かん穴は下部にある経穴のため。 |
CV-11 |
建里 |
臍の上3寸に取る。 |
胃痛、消化不良、胃下垂、胃腸炎 |
「建」=建ておく、位置する。「里」=居住地、ここでは胃にあたる。胃の通り道の途中に位置することから。 |
CV-12 |
中かん |
臍の上4寸に取る。 |
胃の代表穴。食後腹脹、胃痛、嘔吐、下痢、便秘、食中毒、胃下垂 |
「中」=中央。「かん」=胃腑。消化管を表わす。胃の中央にあるため。 |
CV-13 |
上かん |
胸骨体下端の下3寸、中かん穴の上1寸に取る。 |
食後腹脹、胃痛、嘔吐、吐き気、噫気、口臭、吐血、黄疸 |
胃の上部。噴門部にあるため。 |
CV-14 |
巨闕 |
胸骨体下端の下2寸に取る。 |
食後腹脹、胃痛、嘔吐、吐き気、噫気、口臭、横隔膜痙攣 |
「巨」=並はずれて大きいこと。「闕」=宮中。君主。心に近いため、心の募穴である。心は君主。心気が最もたくさん集まるところという意味。 |
CV-15 |
鳩尾 |
胸骨体下端の下1寸、神闕穴(臍)上7寸に取る。 |
動悸、気管支炎、嘔吐、吐き気、噫気、口臭、横隔膜痙攣、肋間神経痛 |
胸骨の剣上突起が、鳩の尾に似ているため。その真下にある経穴なので名づけられた。 |
CV-16 |
中庭 |
だん中穴の下1寸6分、胸骨体正中線上に取る。 |
「中」=中央。「庭」=宮殿(君主)の庭園。?中の下(宮殿の下)にあるから。 |
「曲」=曲がる、「骨」=今でいう恥骨のことを。恥骨の上縁の湾曲したところにあるから。 |
CV-17 |
だん中 |
両乳頭を結ぶ線が、胸骨帯正中線上に取る。 |
胸焼け、心胸痛、動悸、咳嗽、喘息、嘔吐、げっぷ、肋間神経痛 |
だん中は君主の宮城なりと言われている。心の周囲に心包が囲み、心の代わりに命令を受け、胸膜(=宮城)にあるため。 |
CV-18 |
玉堂 |
左右第3肋骨の高さで、胸骨帯正中線上に取る。 |
咳嗽、喘息、心胸痛、動悸、嘔吐 |
「玉」=高貴なもの。「堂」=前堂。宮殿の前にある建物。?中(=宮殿)」の前にあるため。この名が付いた。 |
CV-19 |
紫宮 |
左右第2肋骨の高さで、胸骨帯正中線上に取る。 |
咳嗽、喘息、心胸痛、動悸、嘔吐 |
「紫」=赤。「宮」=中央。任脈はここに至って、心に会合し、血脈(=赤色)を主るため。 |
CV-20 |
華蓋 |
天突穴の下2寸、胸骨角上際正中線上に取る。 |
咳嗽、喘息、心胸痛、咽頭痛 |
華蓋は帝王の車の上に付いている絹の傘のこと。肺は臓腑の中で一番高いところにあり、心(君主)や臓腑を守っていることから、こう呼ばれた。また、肺の別名も華蓋である。 |
CV-21 |
せんき |
天突穴の下1寸、胸骨柄正中線上に取る。 |
咽頭炎、咳嗽、喘息、扁桃炎 |
「せん」と「き」は北斗七星の星のひとつ。北斗七星が天を動くように、せんきも体の動きにあわせて、動くことから名づけられた。 |
CV-22 |
廉泉 |
咽頭隆起上際で舌骨との間に取る。 |
舌炎、気管支炎、喘息、咽頭炎、言語障害、舌知覚・運動麻痺 |
「曲」=曲がる、「骨」=今でいう恥骨のことを。恥骨の上縁の湾曲したところにあるから。 |
CV-24 |
承漿 |
オトガイ唇溝の正中に取る。 |
顔面神経麻痺、三叉神経痛、下歯痛、顔面浮腫 |
「承」は受けること。「漿」は涎(よだれ)。下歯茎の中央にあるため。溢れ出る涎を受け止める器のようなことから。 |