足の少陰腎経
足の少陰腎経(あしのしょういんじんけい、中国語 足少陰腎經 zu shaoyíng shenjīng、英:The Kidney Meridian of Foot-ShaoyinもしくはZushaoyin Shenjingxue)とは、腎経に属する足を流れる陰経の経絡である。膀胱と腎臓は共に中国の五行(木、火、土、金、水)でいうと水に属するため密接な関係を持つ。流注によると腎臓はもとより、肺のまわりを取り囲んでいるため肺結核などの病気にこの腎経の経穴を使うこともある。腎経の募穴は京門穴(足の少陽胆経)。
国際表記はKIまたはKと表記する。
症状
主に空腹だが食欲はない、顔が黒い、咳や唾に血が混じる、口内の熱感、咽頭腫痛、脊柱・大腿内側部痛などが起こるとされている。
目次
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流注(経絡の流れの道筋)
足の第5指外側より脈気を受け、足底の湧泉穴を通って足の内果の後を循り、太谿穴より別れて踵の中に入り、下腿内側を上り、膝窩の内側(陰谷穴)に出て大腿内側を上り、脊を貫いて長強穴に会し、前に出て盲兪穴まで上り、腎に属し膀胱を絡う。その直行するものは、腎より上って、肝、横隔膜を貫いて肺に入り、喉嚨を循って舌本を挾む。
その支なるものは、肺を出て心を絡い胸中に注ぎ、手の厥陰心包経に連なる。
足の少陰腎経に所属する経穴の一覧
KI1.湧泉(ゆうせん)
取穴部位:足底中央の前方陥中で、足指を屈すると最も陥凹する部
要穴:井木穴
筋肉:足底腱膜、短趾屈筋
運動神経:内側足底神経
知覚神経:内側足底神経
血管:足底動脈弓の枝
KI2.然谷(ねんこく)
取穴部位:内果の前下方、舟状骨粗面の直下
要穴:滎火穴
知覚神経:内側足底神経
血管:内側足底動脈
KI3.太谿(たいけい)
兵法:内黒節(うちくろぶし)
取穴部位:内果の最も尖ったところの高さで、内果とアキレス腱の間陥凹部、内果の後5分、後脛骨動脈拍動部
要穴:兪土穴、原穴
筋肉:アキレス腱、後脛骨筋腱、長趾屈筋腱
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:後脛骨動脈
KI4.大鐘(だいしょう)
取穴部位:太谿穴の下5分で踵骨上際、アキレス腱の前陥凹部
要穴:絡穴
筋肉:アキレス腱、長趾屈筋腱
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:後脛骨動脈
KI5.水泉(すいせん)
取穴部位:太谿穴の下1寸で、踵骨隆起の前、陥凹部、踵骨内側縁陥凹部
要穴:郄穴
知覚神経:伏在神経、内側踵骨枝(脛骨神経の枝)
血管:後脛骨動脈
KI6.照海(しょうかい)
取穴部位:内果の直下1寸
筋肉:後脛骨筋腱、長趾屈筋腱
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:後脛骨動脈
KI7.復溜(ふくりゅう)
取穴部位:太谿穴の上2寸で、アキレス腱の前
要穴:経金穴
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:後脛骨動脈
KI8.交信(こうしん)
取穴部位:復溜穴の前方、復溜穴と脛骨後縁の間
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:後脛骨動脈
KI9.築賓(ちくひん)
取穴部位:太谿穴の上5寸で、腓腹筋とヒラメ筋の間、膝をあげて膝を屈すると、腓腹筋とヒラメ筋が浮き出る
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:後脛骨動脈
KI10.陰谷(いんこく)
取穴部位:膝を少し屈曲し、膝窩横紋の内端で半腱様筋腱と半膜様筋腱の間
要穴:合水穴
筋肉:半腱様筋腱、半膜様筋腱
運動神経:脛骨神経
知覚神経:伏在神経
血管:膝関節動脈網
KI11.横骨(おうこつ)
取穴部位:曲骨穴の外5分、肓兪穴の下5寸、神闕穴の高さより下5寸で正中線から外方5分
禁鍼穴
運動神経:肋間神経
知覚神経:腸骨下腹神経前皮枝、腸骨鼠径神経
KI12.大赫(たいかく)
取穴部位:中極穴の外5分、肓兪穴の下4寸、神闕穴の高さより下4寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:腸骨下腹神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
KI13.気穴(きけつ)
取穴部位:関元穴の外5分、肓兪穴の下3寸、神闕穴の高さより下3寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝、腸骨下腹神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
KI14.四満(しまん)
取穴部位:石門穴の外5分、肓兪穴の下2寸、神闕穴の高さより下2寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
KI15.中注(ちゅうちゅう)
取穴部位:陰交穴の外5分、肓兪穴の下1寸、神闕穴の高さより下1寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
KI16.肓兪(こうゆ)
取穴部位:臍の外5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:浅腹壁動脈、下腹壁動脈
KI17.商曲(しょうきょく)
取穴部位:下脘穴の外5分、肓兪穴の上2寸、神闕穴の高さより上2寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
KI18.石関(せきかん)
取穴部位:建里穴の外5分、肓兪穴の上3寸、神闕穴の高さより上3寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、下腹壁動脈、上腹壁動脈
KI19.陰都(いんと)
取穴部位:中脘穴の外5分、肓兪穴の上4寸、神闕穴の高さより上4寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈
KI20.腹通谷(はらのつうこく)
取穴部位:上脘穴の外5分、肓兪穴の上5寸、神闕穴の高さより上5寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈
KI21.幽門(ゆうもん)
取穴部位:巨闕穴の外5分、肓兪穴の上6寸、神闕穴の高さより上6寸で正中線から外方5分
筋肉:腹直筋
運動神経:肋間神経
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:肋間動脈、上腹壁動脈
KI22.歩廊(ほろう)
取穴部位:中庭穴の外2寸、第5肋間
知覚神経:肋間神経前皮枝
KI23.神封(しんぷう)
取穴部位:膻中穴の外2寸、第4肋間
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:胸肩峰動脈胸筋枝、内胸動脈
KI24.霊墟(れいきょ)
取穴部位:玉堂穴の外2寸、第3肋間
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:胸肩峰動脈胸筋枝、内胸動脈
KI25.神蔵(しんぞう)
取穴部位:紫宮穴の外2寸、第2肋間
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:胸肩峰動脈胸筋枝、内胸動脈
KI26.彧中(いくちゅう)
取穴部位:華蓋穴の外2寸、第1肋間
知覚神経:肋間神経前皮枝、鎖骨上神経
血管:胸肩峰動脈胸筋枝、内胸動脈
KI27.兪府(ゆふ)
知覚神経:鎖骨上神経、肋間神経前皮枝
血管:胸肩峰動脈胸筋枝、内胸動脈
関連項目
足の少陰腎経
WHO |
ツボ名 |
場所 |
こんな時に使う |
ツボの由来 |
KI-1 |
湧泉 |
足底中線上で、上1/3の陥凹部に取る。 |
足・腰・下腹部の冷え、足指痛、頭痛、不眠、高血圧、熱中症、失神 |
「湧」は底から水が噴水のように湧き出る様。腎経の脈気が湧き出ることから名づけられた。 |
KI-2 |
然谷 |
足内側縁、舟状骨粗面の後下縁に取る。 |
足指痛、婦人病、泌尿器・生殖器系疾患、片麻痺、足の冷え |
舟状骨を然骨といい、そのくぼみにあることから。 |
KI-3 |
太渓 |
内果頂点の後方で、後脛骨動脈拍動部に取る。 |
足指痛、片麻痺、泌尿・生殖器系疾患、婦人病 |
内踝の大きなくぼみにあるため、湧泉から流れ出た、腎の気の流れがここで一つに集まり、大きな渓流となり、海へ注がれるから。 |
KI-4 |
大鐘 |
太渓の下5分で、踵骨上縁、アキレス腱の前縁に取る。 |
内果腫痛、踵痛、足関節障害、泌尿・生殖器系疾患、婦人病、水腫 |
「鐘」=種。天から賦与されたもの(腎は先天の気。つまりは生まれ持った気を主る)の種。大鐘はまじりけのない精気の種が集まっているところという意。 |
KI-5 |
水泉 |
太渓の直下1寸、踵骨隆起の前の陥凹部に取る。 |
婦人病、踵痛、泌尿・生殖器系疾患 |
水泉はげき穴(経気が深いところにある)。腎は水の臓=水源。水源が深いところで溢れ出てくるという意。 |
KI-6 |
照海 |
内果直下1寸に取る。 |
足関節障害、婦人病、泌尿・生殖器系疾患、不眠症、むくみ、アレルギー体質 |
「照」=光で照らす。「海」=川が一つになる深い場所。陽きょう脈の気が生じるところでもある。 |
KI-7 |
復溜 |
太渓の直上2寸、アキレス腱の前縁に取る。 |
婦人病、泌尿・生殖器系疾患、むくみ、盗汗、下腿の知覚・運動障害、冷え症 |
「復」は再び戻ること。太渓→大鐘→水泉→照海から再び上行する意味。 |
KI-8 |
交信 |
復溜と脛骨内側縁との間に取る。 |
婦人病、泌尿・生殖器系疾患、盗汗、下腿の知覚・運動障害、冷え症、下痢 |
腎経は脾経の三陰交穴で交わるという説と生理周期を月信と言い、この経穴が生理不順に有効的という意味の説もある。 |
KI-9 |
築賓 |
太渓の直上5寸、腓腹筋下垂部とヒラメ筋の間に取る。 |
下腿の知覚・運動障害 |
「築」=土台を築く。「賓」=主人と並ぶ来客。来客に当たるのが、腓腹筋・ヒラメ筋(もしくはアキレス腱)。その境目に属す為、下腿の痛み等に効果がある。 |
KI-10 |
陰谷 |
膝窩横紋の内側、半腱様筋腱と半膜様筋腱の間に取る。 |
膝窩内側の知覚・運動障害、膝の冷え、婦人病、泌尿・生殖器系疾患 |
「陰」=内側。膝の内側の谷間にあるという意味。 |
KI-11 |
横骨 |
肓兪の下5寸、曲骨(任脈)外5分に取る。 |
婦人病、泌尿・生殖器系疾患、下腹痛 |
横骨は恥骨とも言った。横骨は恥骨の直上にあるため、横骨と呼んだ。 |
KI-12 |
大赫 |
肓兪の下4寸、中極(任脈)外5分に取る。 |
婦人病、泌尿・生殖器系疾患、下腹痛、下痢 |
「赫」は盛ん、はっきりするという意。この真下に子宮があるため、妊娠すると、ここが大きく膨らむため。 |
KI-13 |
気穴 |
肓兪の下3寸、関元(任脈)外5分に取る。 |
婦人病、泌尿・生殖器系疾患、下腹痛、下痢 |
腎気が集まるところで、ここに気を凝縮させる。 |
KI-14 |
四満 |
肓兪の下2寸、石門(任脈)外5分に取る。 |
婦人病、泌尿・生殖器系疾患、下腹痛、下痢 |
「四」=四隅に広がるい。「満」=みたす。枠いっぱい。腹部の代表する不調(血・気・食積・水湿脹満)を主治としているため。 |
KI-15 |
中注 |
肓兪の下1寸、曲骨(任脈)外5分に取る。 |
婦人病、便秘、下痢、腸鳴、腹痛 |
この内側には胞宮や精巣があり、腎気が集まるところでここから胞中(子宮)へ注がれるから。 |
KI-16 |
肓兪 |
神闕(臍)の外5分に取る。 |
婦人病、便秘、下痢、腸鳴、腹痛 |
「肓」=隠れた部分。横隔膜。「兪」=気の集まったくぼみ。衝脈との交会穴でもあり、婦人科系や消化器系に効果がある。 |
KI-17 |
商曲 |
肓兪の上2寸、下?(任脈)外5分に取る。 |
婦人病、便秘、下痢、腸鳴、腹痛 |
「商」=表裏関係の大腸の五音。大腸の曲弯部。つまり、腸鳴を表わしている。 |
KI-18 |
石関 |
肓兪の上3寸、建里(任脈)外5分に取る。。 |
便秘、下痢、腸鳴、腹痛、嘔吐、腹脹、不妊症 |
「関」は物が通らないこと。石のように頑固な疾病を通す効果のある穴。便秘や不妊など。 |
KI-19 |
陰都 |
肓兪の上4寸、中かん(任脈)外5分に取る。 |
便秘、下痢、腸鳴、腹痛、嘔吐、腹脹 |
陰の気が集まって上へあがるのが都上がる様なので。胃の近くでもあるので、胃を整える作用がある。 |
KI-20 |
腹痛谷 |
肓兪の上5寸、上かん(任脈)外5分に取る。 |
嘔吐、腹痛、腹張、腹鳴、消化不良。 |
黄帝内経に『谷の道は脾を通ず』とある。水穀(飲食物)を上から下へ流す穴という意味。 |
KI-21 |
幽門 |
肓兪の上6寸、巨闕(任脈)外5分に取る。 |
嘔吐、腹痛、腹張、腹鳴、消化不良。 |
「幽」=暗い。「門」=胃の上口にある。この暗く秘められたところで、腹から胸に経気が流れるため。 |
KI-22 |
歩廊 |
第5肋間、中庭の外2寸に取る。。 |
咳嗽、喘息、嘔吐、食欲不振 |
「歩」=ゆっくり歩く。「廊」=ぐるりと回る。腎気がぐるりとゆっくりまわりながら、胸中に入っていくことから。 |
KI-23 |
神封 |
第4肋間、だん中の外2寸に取る。 |
咳嗽、喘息、胸部苦満、嘔吐、食欲不振、乳部の腫脹 |
「神」=心。胸。「封」=境界線。胸中線の脇にあり、心に近いため。 |
KI-24 |
霊墟 |
第3肋間、玉堂の外2寸に取る。 |
咳嗽、喘息、胸部苦満、嘔吐、乳部の腫脹 |
心神の住居である玉堂穴のとなりにあり、「霊」は心の意味。「墟」は土で盛られた高い山。霊墟は胸の高いところにあり、心神と関係しているため。 |
KI-25 |
神蔵 |
第2肋間、紫宮の外2寸に取る。 |
肋間神経痛、喘息、咳嗽、胸部苦満、心胸痛 |
心に近い紫宮の両側で、霊墟の上にあり、神霊=心を守っている穴。 |
KI-26 |
彧中 |
第1肋間、華蓋の外2寸に取る。 |
喘息、咳嗽、胸部苦満 |
「彧」=郁。いろどりの意味。この経穴は肺の傍にあり、肺は別名:華蓋である。肺は文郁(華やかないろどり)の府と呼ばれている(肺は君主の車の上の絹の傘の形に似ている)ので、この名がついた。 |
KI-27 |
兪府 |
鎖骨の下縁、せんきの外2寸に取る。 |
喘息、咳嗽、胸部苦満 |
「兪」は輸送する。「府」は集まるところ。腎気が足から胸へ運ばれ、最後にここに集結するから。 |