ハハコグサ      (キク科ハハコグサ属:越年草:草丈 〜30センチ:花期 〜7月)

薬効
せき・たん          
           
分布生育場所

科名:キク科/属名:ハハコグサ属
和名:母子草/学名:Gnaphalium affine
日本全土の日当たりのよい畑地、原野、道端などに普通に見られる2年草。

キク科ヤマハハコ属カワラハハコ(河原母子)
キク科ヤマハハコ属ヤマハハコ(山母子)

見分け方・特徴

ハハコグサの、若苗は綿毛におおわれ、冬から早春に地面にはりつくように生えています。
根元の方で分枝した数本の茎が伸びて立ち上がります。
葉は互生し、先は丸みを帯びた倒披針形で長さ4〜5センチ、巾2.5〜7ミリで上面は緑色をしていて、葉質は厚みがあって綿毛が密生しています。
花は茎の上端に頭状花序を数個集合してつくり、色は黄色、まわりの管状花は雌性で細く、中心の筒状花は両性で、総苞片は5裂淡黄色をしていて、外片は短くて白毛があります。
痩果(果実のみで果肉のないもの)には、細点があり、冠毛は白毛をしています。
採集と調整
ハハコグサは、開花期に全草を採取します。水洗いして天日でよく乾燥させます。
乾燥した全草を、生薬の鼠麹草(そきくそう)といいます。
薬効・用い方
有効成分は、全草にルテオリン・モノグルコサイド、フィステロール、無機物の硝酸カリなどを含有する

ハハコギサの全草を、乾燥したもの鼠麹草(そきくそう)は、鎮咳(ちんがいさよう)があります。
たん、せきには1日量10グラムに水0.5リットルを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、1日3回服用します。
また、よく乾燥したハハコグサを細かく切り、1日量20グラム位を火にくべ、立ち上がる煙を吸っても、せき、たんには効き目があるといわれています。
慢性の気管支炎には、1日量50グラムを煎じて、1日2回食間に服用します。但し、胃痛、悪心といった軽い副作用を伴った場合は服用をやめた方がよいでしょう。

急性扁桃腺炎には、ハハコグサの全草10グラムと0.2リットルの水で煎じて、その液でうがいをします。
ハハコグサの全草の黒焼き粉を作り、トウガラシ粉を加えて、植物油で練り合わせたものを、たむしに塗ります。
ハハコグサの若芽を、摘み取りゆでて水にさらして七草粥(ななくさがゆ)の具にします。
ハハコグサの草団子は、ハハコグサの若芽を、塩を入れた熱湯でゆでで、水につけて軽くアク抜きしてから、細かく刻みます。こねた米(もち米)の粉に混ぜて、よく練ってついてから、餅や草団子を作ります。
また、ハハコグサの若芽を、ころもを薄くつけて天ぷらににします。
その他
名前の由来は、葉や茎が白い綿毛をかぶっている様子が、母親が子を包みこむように見えたことから、母子草(ハハコグサ)の名がついたという説と、昔は葉を餅に入れて草団子にして食べた「葉っこ草」が転訛して、ハハコグサの名がついたという説があります。

ハハコグサは、春の七草のひとつで「おぎょう」といい、昔から若芽をゆでて七草粥にしたり、草団子や草餅の原料にしていましたが「ヨモギ」の方が、緑の色が濃くて喜ばれるようになり、ハハコグサの利用は少なくなったようです。

日本の古書の小野蘭山(おのらんざん)の書いた「本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう・1803)」には「3月3日の草もちはこの草で作ったものであったが、近ごろはヨモギで作ったほうが、緑が濃くて喜ばれるようになった」と記述していることから、草餅、草団子の原料にはハハコグサが使われていたことがわかります。

また、「和漢三才図会(わかんさんさいずえ・1713)」には、胆石に用いる方法として、花をよく乾燥し煙草にして、その煙を吸ったり、または、ハハコグサ、フキの花、熟地黄(じゅくじおう・アカヤジオウ)の3品をあぶってよく混ぜあわせて、炉にくべてその煙を吸うとよいと書かれています。

ハハコグサは、古代に農耕とともに渡来した帰化植物であると考えられています。