イチヤクソウ  (イチヤクソウ科イチヤクソウ属:常緑多年草:草丈 〜20センチ:花期 〜7月)

薬効
強心 降圧 抗菌 むくみ(浮腫・水腫)
       
分布生育場所

科名:イチヤクソウ科/属名:イチヤクソウ属
和名:一薬草/生薬名:鹿蹄草(ろくていそう)/学名:Pyrola japonica
日本、朝鮮半島、中国東北地方の山林に自生
朝鮮半島、中国、台湾に分布
新潟県旧村松町のイチヤクソウ、本州中部以北の深山の針葉樹林下に自生するコバノイチヤクソウ
イチヤクソウ科イチヤクソウ属の亜高山帯〜高山帯に自生するベニバナイチヤクソウ

見分け方・特徴

常緑の多年草草本で、細長い地下茎を出し増殖します。葉は深緑色の楕円形で根生します。質はやや厚く葉柄(ようへい)と葉裏はときに紅紫色を帯びることがあります。
6〜7月ころに高さ20センチくらいの花茎を抽出して総状に5〜10個の白色花をつけます。花は梅の花に似ていて直径1.5センチくらい、やや下向きき開きます。5花弁、10雄ずい、1雌しべで花柱は長く花の外に突き出ます。
果実は扁球形(へんきゅう)のさく果で、温帯のブナノキ、ミズナラなどの夏緑林下には花の紅色であるベニバナイチヤクソウがあります。
採集と調整
開花期に全草をとり、風通しのよい日陰で乾燥させます。これが生薬の鹿蹄草(ろくていそう)です。
薬効・用い方
有効成分:クエルチン(利尿作用)、ウルノール酸(利尿作用)、ベータ・シトステロール、オクアノール酸ほか

鹿蹄草(ろくていそう)の薬理実験では強心、降圧、抗菌などの作用が知られています。強心作用は、正常なカエルに対しては効き目がなく、衰弱したカエルだけに作用があり、降圧は血管を拡張させることによる血圧降下でその作用は葉が一番あります。
また、抗菌作用は黄色ブドウ状球菌、大腸菌などについて行ったもので、それぞれ発育を強く抑制します。
民間薬として脚気やむくみの利尿に1日量10グラムに水0.4リットルを加えて煎じ、約2分の1量に煮詰めて1日3回食間に服用します。
イチヤクソウの成分には、加熱が強いと分解するものがあって効き目が減ずるので、弱い火で煎じます。
生薬は汁液を切り傷や毒虫のかむ傷跡に塗布して効き目があるとされます。
中国での臨床上の応用は、数多くなされていて、リューマチによる関節痛に用いられて、とくに老人の慢性関節リューマチに適しているということです。
虚弱な体質のもので症状に悪風、自汗、身体の無力感が表れている場合には、白朮(びゃくじゅつ)と沢瀉(たくしゃ)を配合するとよいとされています。
細菌性の下痢には、鹿蹄草(ろくていそう)15グラムとハチミツ30グラムを混ぜ水0.4リットルを加えて煎じます。生のイチヤクソウの場合は30グラムを使用します。
鹿蹄草(ろくていそう)の粉末を服用すると避妊薬にも効果があるとされます。
また、お茶がわりに飲むと月経が常に順調になるともされています。
その他
名の由来は、和訓栞(わくんのしおり・後編・1877・谷川土清著)には、「一薬草の義、鹿蹄(ろくてい)他といえり」と、イチヤクソウを定義している、ひとつの薬草で多くの病気に効くことから、一薬草の名になったという記述がある

幕末の近代植物学者である飯沼慾斎(いいぬまよくさい・1783〜1865)があらわした「草木図説(そうもくずせつ)」にもイチヤクソウを収載しています。