肺高血圧症
ハイコウケツアツショウ
【英】pulmonary hypertension(PH)
【独】pulmonale Hypertension
【仏】hypertension pulmonaire
肺動脈圧が上昇し,収縮期圧30mmHg,拡張期圧15mmHg,平均圧25mmHgを超えた場合,肺高血圧症という.本疾患は,僧帽弁狭窄症や,左心不全など肺毛細血管の圧上昇に基づく肺高血圧(後肺毛細血管性肺高血圧postcapillary pulmonary hypertension),左‐右短絡のために,肺血管系に大量の血液が流れるために生じた場合,さらに慢性閉塞性肺疾患や肺結核など,肺実質の破壊により,また同時にみられる低酸素血症により生ずる肺動脈攣縮に基づくもの(前肺毛細血管性肺高血圧precapillaryp. h.)など,原因の明らかな二次性肺高血圧症secondary pulmonary hypertensionと,全く原因不明のいわゆる原発性肺高血圧症*に大別される.いずれの原因でも右室負荷が著明で,その程度により,労作性呼吸困難,易疲労性,せき,血痰,ときに失神発作もみ,徐々に心不全状態が進展し,心拍出量低下,静脈圧上昇,浮腫,腹水などが出現,時に突然死をまねく.心電図,心エコー上右室肥大,拡大所見があり,胸部X線写真上,左第2弓突出と,肺動脈主幹部の拡大と末梢の急激な狭小化,明るい肺野をみる.聴診上肺動脈2音の亢進とときに拡張期性逆流性心雑音を聴く.予後不良で,徐々に進展し,心不全で,あるいは突然死をとげることが多い.一般に収縮期圧40~69mmHgを中等度,70mmHg以上を高度肺高血圧症とする.