カヤ                (イチイ科カヤ属:常緑高木:樹高 〜25メートル:花期 〜5月)

薬効
便秘 夜尿症(やにょうしょう) 腸管寄生虫症
分布生育場所

科名:イチイ科/属名:カヤ属
和名:榧/別名:ホンガヤ/学名:Torreya nucifera Sieb. et Zucc.
温帯地域の山地に自生。庭木などに植栽される

イチイ科カヤ属チャボガヤ
イチイ科イチイ属イチイ(一位)
イチイ科イチイ属キャラボク(伽羅木)

見分け方・特徴

カヤは、暖帯林に自生(じせい)する雌雄異株の常緑の高木です。高さが25メートルにも達するものもあって、社寺林などには巨木がよく見られます。
樹皮は、灰褐色で老樹になり縦裂してはげ落ちます。
葉は、堅くて先端が鋭く尖り扁平(へんぺい)の線形で横枝にきれいに2列に並んでいます。
葉の表面には光沢があって、裏面には淡黄緑色の2本の黄白色の気孔帯(きこう)が走っています。
花は4〜5月ころに開花して、雄花は葉腋(ようえき)について枝の下面に並んでついていて、長楕円形黄色、包鱗には3個の葯(やく)があります。
雌花は無柄で小枝の先に群がってついていて、数層の細かい鱗片(りんぺん)をもち中央に1胚珠(はいしゅ)があります。
種子は、長さ2〜3センチ、直径1〜2センチで肉質の仮種皮に包まれていて楕円形、10月ころに紫褐色に熟して、翌年秋に仮種皮が裂けて、淡赤褐色の堅い種子が地上に落ちます。
採集と調整
カヤの種子を採取して、種子の肉質の外種皮を取り除いて、天日で乾燥します。
これを生薬(しょうやく)で、榧実(ひじつ)、種子を榧子(ひし)といいます。
薬効・用い方
夜尿には、カヤの種子を炒(い)って粉末にして、3〜5歳くらいまでならば、1回に0.3〜0.6グラムを1日3回内服するか、生の種子を1〜2個焼いて食べます。
十二指腸虫駆除には、空腹時に、乾燥した種子を大人では1日1回3〜5グラムを粉末にして内服します。
中国産の榧子(ひし)も条虫(じょうちゅう)駆除に、1日量として、30〜50グラムを炒めて毎日寝る前にかみ砕いて内服します。
小児癇癪(かんしゃく)には、1日量15〜30グラムを煎じて服用します。
また、消化吸収を増進する作用があって、消化機能が減少して食欲がなく腹がはって便秘するような場合には、常時1日量10〜15グラムを炒って榧子(ひし)を食べるとよい結果が得られるということです。
酒は飲めるが、どうも食欲がないという場合などにも、榧子(ひし)を数個食べると酒毒を榧子(ひし)が消して食欲を増進させるとされています。
その他
名前の由来は、カヤの古名は、カエ、カヘと呼び、それから転訛(てんか)して、カヤの名になったという。また、古くは根や枝葉を蚊遣りに使ったので、カヤの名がついたという説もあるという。

カヤは、日本の古書の「延喜式(えんぎしき・927)」の「典薬寮(てんやくりょう)」に、榧子(ひし)として記録されていますが、榧(ひ)は中国産のトレヤ・グランディスのことでカヤの類似植物です。

榧子(ひし)もカヤの実も腸内の寄生虫駆除薬として用いられ、また、カヤの実の油は、食用、頭髪油、灯火用に利用されてきました。

カヤの材は辺材、心材の区別が不明瞭で黄白色で、柾目材(まさめざい)は油気が多く弾力性に富むので、碁盤にした場合には最高のものとされていて、建築材、仏像などの彫刻材、そろばん玉、数珠、くし、かさの柄などにも利用されます。

古代の日本では、灯火として、ごま油を使い、その後、エゴマ油、シソ油、ナタネ油を使っていたが、灯火油が無い場合には、カヤ、イヌガヤ、チャボガヤなどの実から油を採り灯火用に使ったという