SI3.後谿(こうけい)

兵法:後絡(こうらく)

取穴部位:第5中手指節関節の上、尺側の陥凹部、手を握ってできる横紋の端

要穴:兪木穴

筋肉:小指外転

運動神経:尺骨神経

知覚神経:尺骨神経浅枝

血管:背側手根枝(尺骨動脈)の枝

 
主治・対象疾患

頭痛

後頸部のこわばり

肩こり

尺骨神経障害

眼筋けいれん

眼瞼下垂

眼精疲労

眼痛

視力減退

眼の充血

腰痛

寝違え

精神障害

寝汗

てんかん

リウマチ

認知症

胸郭出口症候群

手部の痛み

感冒(かぜ)

小腸虚

小腸虚(しょうちょうきょ)とは、漢方医学で言う消化器系など全般の機能低下によりおこる症状を言う。

概要

漢方医学では六腑のうち小腸は五行思想で言う火を司る機能を指し、六臓で言えば心臓五官で言えば五体で言えば血脈に相当するため小腸の機能の低下は(西欧医学で言う小腸の機能障害とは異なる)消化不良による便秘、難聴、月経不順、眼精疲労、卵巣痛、下肢内則のつれ、肩凝り、偏頭痛などがあらわれるとされる。漢方医学では

対処としては

鍼灸においては五行や東洋医学の治療方針の関係から五行では自経が虚すれば、その母を補うとされており、この場合、火の気である小腸が虚すれば木の気である母の胆を補えとされており、小腸経後谿穴胆経足臨泣穴が用いられる。

 

めまい、気象病, 疼痛, 兪(土/木)穴「体重節痛を治す」, 八宗穴/八脈交会穴, 手太陽経筋, 手太陽小腸経

後渓(こうけい)

 

SI3)後渓hou4xi1)(こうけい)

【取穴】

手背、第5中手指節関節尺側の近位陥凹部、赤白肉際。

軽く拳を握り、遠位掌線の尺側端、赤白肉際にある。

【名の由来】

「渓=陥凹」。本穴が第五指中手指節関節の後方、陥凹部に在る事から。

【要穴】

『手太陽経兪木穴(火経木穴/木生火/自経母穴)』

『八脈交会穴(×督脈)』

【作用】

〔補〕補益小腸

〔瀉〕宣通太陽・清熱寧心・袪風通絡・通督解痙

【弁証主治】

小腸虚証「虚すれば其の母を補う」

顔が赤い・心身症的な胃腸症状〔透少府〕・積聚・脈浮洪・13:0015:00あるいは01:0003:00の異常など

手太陽経(筋)病/湿痺証「体重節痛を治す」

発熱による疼痛(下顎痛・項頚部痛・肩、肩胛骨痛・上肢後内側の痛み、火照り・第5指痛)・視力低下・耳鳴、難聴・頚部静脈瘤など

督脈病

〔補〕躁鬱・頭が重く、ふらふらする・腰背や膝の悪寒など

〔瀉〕注意欠陥多動性障害、統合失調症・強い頭痛・眼疾患・腰背部痛・四肢の冷えなど

【弁証配穴】

『八脈交会配穴:後渓+申脈』表証・背部全般の問題

【主症配穴】

+陰郄小児の身体の芯に熱が籠もるような感覚

+間使+合谷(+水溝)不安障害(パニック)

+腎兪多汗

+大椎寝汗

+労宮黄疸

+陽渓

手の太陽小腸経
Points of Small Intestine Meridian of Hand-Taiyang, SI19

小指の端に起こり、手の外側を循りて腕に上り、踝(尺骨茎状突起)の中に出で、直ちに上りて臂骨の下廉を循り、肘の内側の両筋の間に出で、上りて臑の外後廉を循り、肩解(肩の後ろの骨縫部)に出で、肩胛を繞り、肩上に交わり、缺盆に入り、心を絡い、咽を循り、膈に下り、胃に抵り、小腸に属す。
其の支れたる者は、缺盆より頸を循りて頬に上り、目の鋭眦(目尻)に至り、却きて耳中に入る。
其の支れたる者は、頬に別れて[出頁](眼窩下方で、顴骨の内連と上の歯茎を包括している)に上り、鼻に抵り、目の内眦に至り、斜めに顴を絡う
手の太陽の別は名づけて支正と曰う。腕を上ること五寸、内りて少陰に注ぐ。其の別れたる者は、上りて肘に走り、肩髃を絡う。実するは則ち節緩み肘廃る。虚するは則ち疣を生じ、小なる者は指の痂疥の如し。これを別るるところに取るなり。
霊枢・経脈』参照

記号

経穴

位置

取穴

解剖

意味

主治

要穴

交会

SI1

少沢(しょうたく)
小吉、
小結

在手小指之端、去爪甲一分陥者(甲乙)

小指尺側、爪甲の角を去ること1に取る。

固有掌側指動静脈

少は小さい、沢は潤沢の意味。手太陽の井穴で、が交通している。小腸は、液をつかさどる。経気が心経から最初に侵入する経穴なので、気血が潤沢であるため名付けられた。

熱病、中風昏迷、乳汁少、乳瘍、咽喉腫痛、目翳、寒熱往来、頭痛、難聴、耳鳴、肩臂外後側疼痛
前谷後谿陽谷完骨崑崙少海攅竹治項強急痛
醒脳開竅、清熱通乳

井金穴

 

SI2

前谷(ぜんこく)

在手小指外側、本節前陥者(甲乙)

5中手指節関節の前尺側、手を握ったときに中手指節関節の前、横紋頭、表裏の膚目に取る。

背側指動静脈

前は第五中手指節関節前方を指し、陥凹は谷のようである。

熱病で無汗、寒熱往来、癲癇、耳鳴、目痛、目翳、頭項急痛、頬腫、鼻づまり、咽喉腫痛、産後無乳、臂痛、肘痙攣、手指麻木
清利頭目、通経活絡

栄水穴

 

SI3

後谿(こうけい)

在手小指外側本節後陥者(甲乙)

5中手指節関節の尺側後方、第5中手骨の骨頭部、後縁表裏の膚目に取る。手を握ったときに、穴位は中手指節関節の後の横紋に取る。

小指外転筋の起始点後縁

後は第五中手指節関節の後方を意味し、拳を握ったとき、尺側横紋の溝が渓のようである。

頭項強痛、難聴、目赤目翳、肘臂・手指攣急、熱病、寒熱往来、癲癇、盗汗、目眩、眼瞼部びらん、皮膚病
1
清利頭目、清熱截瘧

兪木穴、八総穴

督脈の宗穴

SI4

腕骨(わんこつ)

在手外側腕前、起骨下陥者(甲乙)

腕関節の前、三角骨の前縁、表裏の膚目に取る。

小指外転筋の外下縁

手外側の腕骨(豆状骨)にあるので、名付けられた。

頭痛、項強、難聴、耳鳴、目翳、指攣臂痛、黄疸、熱病無汗、寒熱往来、脇痛、頸項顎関節の腫れ、消渇、目流冷泪、四肢痙攣、小児のひきつけ
陽谷肩貞頭竅陰侠谿治耳鳴
1
清利湿熱、通絡止痛

原穴

 

SI5

陽谷(ようこく)

在手外側、腕中、兌骨下陥者(甲乙)

三角骨後縁、表裏の膚目で、豆状骨と尺骨茎状突起の間に取る。

尺側手根伸筋腱の尺側縁

本穴は太陽に属し、手外側の豆状骨と尺骨の間にあり、その形が山谷のようである。

頸部顎関節の腫れ、臂外側痛、手腕痛、熱病無汗、頭眩、目赤腫痛、うつ病で精神錯乱し妄言、脇痛項腫、瘡やイボ、痔漏、難聴、耳鳴、歯痛
太衝崑崙治目急痛赤腫
清利頭目、通絡止痛

経火穴

 

SI6

養老(ようろう)

在手踝骨上一空、腕後一寸陥者(甲乙)

掌を下に向けて、尺骨茎状突起の尖端に取る。掌を胸に当てて肘を屈したとき手を回すので骨が動く。穴位は尺骨茎状突起橈側の骨の合わさったところに取る。(注1)

尺側手根伸筋腱と小指伸筋腱の間

老人を養うという意味。養生鍼灸の常用穴。主治は、難聴、老眼、肩・腕痛などの老年性疾患である。

目がはっきり見えない、肩背肘臂痛、急性腰疼痛
清利頭目、通絡止痛

郄穴

 

SI7

支正(しせい)

上腕五寸(霊枢)

腕関節横紋の上5寸、陽谷小海の連線上に取る。(注2)

尺側手根伸筋腱の尺側縁

支は絡脈、正は正経を指す。手太陽の絡穴で、ここで分かれて少陰に走る。

項強、肘攣、手指痛、熱病、頭痛、目眩、うつ病で精神錯乱、驚きやすい、よく笑いよく忘れる、消渇、瘡やイボ
寧心安神、通絡止痛

絡穴

 

SI8

小海(しょうかい)

在肘内大骨外、去肘端五分陥者中、屈肘乃得之(甲乙)

肘を屈し、肘頭と上腕骨内側上顆の間に取る。

尺側手根屈筋の起始部

手太陽の合穴で、小腸経の脈気が、河の水が海に入るようであるから。

頬腫、頸項肩臂外後側痛、頭痛目眩、難聴、耳鳴、鬱病、興奮する精神病、癲癇、瘍腫
寧心安神、袪風散熱

合土穴

 

SI9

肩貞(けんてい)

在肩曲胛下、両骨解間、肩髃陥者(甲乙)

肩関節の後下方、上腕を内転して、背部腋下横紋の上1に取る。

三角筋の後縁で深層は大円筋

貞は正の意味。本穴は肩の下にあり、まさに腋横紋の上1寸にあるから。本穴は腕を上げ下げしても、動かずに正しい位置にあることから名付けられた。

肩胛痛、手臂痛麻、上肢が挙がらない、缺盆中痛、頸部リンパ結核、耳鳴難聴
完骨治耳鳴
清利頭目、通絡聡耳

 

 

SI10

臑兪(じゅゆ)

在肩臑後大骨下胛上廉陥者(甲乙)

まっすぐに座り、上腕を下垂して肩貞の直上、肩甲棘下縁に取る。

三角筋の後部、深層は棘下筋

古代、臑は上腕三角筋のあたりをいい、兪は穴位を指す。

肩臂痠痛無力、肩腫、頸部リンパ結核
舒筋活絡、消腫化瘀

 

手太陽、陽維、陽蹻之会

SI11

天宗(てんそう)

秉風後大骨下陥者(甲乙)

まっすぐに座り、棘下窩中、肩甲棘下縁と肩甲下角の間で上から3分の1に取る。上へ伸ばした直線上には秉風穴がある。

棘下窩の中央、棘下筋中

天は上部、宗は本、中心の意味を含む。肩甲下窩正中にあるから。

肩胛疼痛、肘臂外後側痛、頬と顎の腫痛、気喘、乳瘍
通経活絡、止痛消腫

 

 

SI12

秉風(へいふう)

侠天[穴卯]、在外肩上小髃骨後、拳臂有空(甲乙)

まっすぐに座り、棘上窩中央、天宗の直上で上肢を挙げてできる陥凹に取る。

表層は僧帽筋、そのさらに下層に棘上筋

秉は掌握する、つかむ、風は風邪を指す。主治は肩痛不可挙である。

肩胛疼痛不拳、上肢痠麻
疏風活絡、止咳化痰

 

手陽明、手太陽、手少陽・足少陽之会

SI13

曲垣(きょくえん)

在肩中央、曲胛陥者中、按之動脈応手(甲乙)

肩甲棘内上端で、臑兪と第2胸椎棘突起の連線の中点に取る。

僧帽筋と棘上筋中

曲は湾曲、垣は壁の意味。本穴は、肩甲棘内側端にあり、湾曲した壁のようにだから。

肩胛拘攣疼痛
舒筋活絡、散風止痛

 

 

SI14

肩外兪(けんがいゆ)

在肩胛上廉、去脊三寸陥者中(甲乙)

まっすぐに座り、1胸椎棘突起下、陶道の外方3寸、肩甲骨内側縁直上に取る。

表層は僧帽筋、深層は肩甲拳筋と菱形筋

本穴は肩中兪の外側にあるから。

肩背痠痛、頸項強急、上肢冷痛
舒筋活絡、散風止痛

 

 

SI15

肩中兪(けんちゅうゆ)

在肩胛内廉、去脊二寸陥者(甲乙)

まっすぐに座り、第七頸椎棘突起下、大椎の外方2に取る。

表層は僧帽筋、深層は肩甲拳筋

肩部、大椎肩井の中間にあるから。

咳嗽、気喘、肩背疼痛、唾血、寒熱、目がはっきり見えない
宣肺解表、活絡止痛

 

 

SI16

天窓(てんそう)
窗龍

在曲頬下、扶突後、動脈応者陥者(甲乙)

まっすぐに座り、喉頭隆起に水平に胸鎖乳突筋後縁に取る。(注3)

僧帽筋の前縁、肩甲拳筋の後縁、深層は頭・頚部板状筋

天は上部、窓は通気孔を指す。主治は耳、舌、喉など七竅の疾患だから。

難聴、耳鳴、咽喉腫痛、頸項強痛、急に声が出なくなる、頬腫痛、甲状腺腫、皮膚過敏掻痒症、うつ病で精神錯乱、中風
臑会治甲状腺腫
利咽充耳、袪風定志

 

 

SI17

天容(てんよう)

在耳曲頬後(甲乙)

まっすぐに座り、下顎角に水平に胸鎖乳突筋の前縁陥凹部に取る。

胸鎖乳突筋の上部前縁、顎二腹筋の後腹の下縁部

天は上部、容は容貌を指す。本穴は下顎角の後ろにあり、ここから面容に入るから。

難聴、耳鳴、咽喉腫痛、咽がつまった感じ、頬腫、甲状腺腫、頭項瘍腫、嘔逆吐沫
聴会聴宮中渚治難聴
聡耳利咽、清熱降逆

 

手少陽の脈気の発

SI18

顴髎(けんりょう)
兌骨

兌骨(甲乙)

まっすぐに座り、視線は水平に、外眼角直下、頬骨下縁陥凹に取る。

咬筋の起始部、大小頬筋中

顴とは頬骨のことで、髎は孔。頬骨の下の陥凹にある。

顔面神経麻痺、眼瞼のひきつれ、歯痛、頬腫、目赤、目黄、面赤、唇腫
二間治歯痛、配内関治目赤目黄
風明目、清熱消腫

 

手少陽、手太陽之会

SI19

聴宮(ちょうきゅう)
多所聞

多所聞(大成)

耳珠と下顎関節の間、わずかに口を開き現れる陥凹に取る。

浅側頭動静脈

宮は五音の首位で、耳鳴、難聴の治療の要穴である。

難聴、耳鳴、中耳炎、声が出ない、癲癇、歯痛
聴会翳風治耳鳴・難聴
寧心定志、聡耳開竅

 

手少陽・足少陽、手太陽之会

「経穴概論」教科書小委員会著では
(
1)養老(SI6):尺骨茎状突起の中央の割れ目に取る。
(
2)支正(SI7):手を胸にあてて陽谷より小海に向かって上ること5寸に取る。
(
3)天窓(SI16):喉頭隆起の外方、胸鎖乳突筋の後縁に取る。

1 穴位主治鑑別表

穴名

共同性

特殊性

後谿

清利頭目

可清熱截瘧、用于瘧疾

腕骨

可通絡止痛、利湿、用于手指肘臂攣痛及黄疸