肺 (五臓)
肺(はい)は、東洋医学における五臓のひとつである。
肺のカタチ]
肺は、東洋医学においても、「呼吸」を司る臓器で、脾が食物を消化して作った営気と肺が呼吸によって取り入れた宗気(衛気)をあわせて、気血として全身に配分するとされており、現代医学の肺とほぼ同じものである。
『和漢三才図会』より「肺」
しかし、古典の記述や、和漢三才図会の挿絵などを見ると、のどから肺に通じる管(気管)は9つの節があり、肺は、コスモスを伏せたカタチ、またはさつまいもやダリアの芋を掘り出したような格好で、8葉に分かれ、重さは3斤3両=510匁(約1.9キロ)あるとされている。現代医学における肺は、5葉からなっているが、東洋医学では、肺は五行の金に属し、金の数は9、生数は4なので、気管の節を9、肺葉を4が左右2対で8葉としたものである。
合理性・科学性を重んずる現代社会から見ると、いかにもいい加減なこじつけのように見えるが、東洋醫學は、自然科学とは全く違った価値観によって成り立っており、古典を遵守して施術・投薬するとうまくゆくが、疑ってやっているとなかなか技術が進歩しないものである。
肺は、皮毛を司るとされ、肺が充実していると、色白でもち肌の美人になるが、肺に問題があると、顔色は青白く、肌がかさかさして毛が抜けやすくなるという。また、肺が充実していないと、悲しみやすく心配性になる。肺は「魄」を宿すが、いかにも「落魄した」状態になる。
アシカ(右)とオットセイ、38巻72頁
明治17年翻刻の中近堂版
『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)は、寺島良安により江戸時代中期に編纂された日本の類書(百科事典)[1]。正徳2年(1712年)成立。
編集者は大坂の医師寺島良安で、師の和気仲安から「医者たる者は宇宙百般の事を明らむ必要あり」と諭されたことが編集の動機であった。明の王圻による類書『三才図会』を範とした絵入りの百科事典で、約30年余りかけて編纂された。
全体は105巻81冊に及ぶ膨大なもので、各項目には和漢の事象を天(1-6巻)、人(7-54巻)、地(55-105巻)の部に分けて並べて考証し、図(挿絵、古地図[2])を添えた。各項目は漢名と和名で表記され、本文は漢文で解説されている。木版による印刷で版元は大坂杏林堂。
『三才図会』をそのまま写した項目には、空想上のものや、荒唐無稽なものもあるが、博物学などにとり貴重な文化遺産といえる。博物学者南方熊楠は、全巻を筆写したという。また著者が医師(もちろん漢方医)であるだけに、東洋医学に関する記事は非常に正確で、鍼灸師の中には、これをもっとも信頼できる古典と見る人もいる。
巻数 |
分類[3] |
1 |
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3 |
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4 |
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暦択日神(暦日吉凶) |
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人倫之用 (※ 結婚、媒酌人、友人、独身。旅人、主人・客人、盗人、囚人、密夫、男色、ふたなり。盲人、聾唖。白子、いぼ、こぶ、そばかす。勇者、飲んだくれ。死、葬儀 等々) |
11 |
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12 |
支体部 (※ 身体の各部位(頭、目、鼻、口、胸、腹、腰、尻、陰嚢、子宮、月経。肩、腕、手、脚、足 等々)の機能、症状と対処法) |
13 |
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外夷人物 |
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芸器 |
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17 |
嬉戯部 |
18 |
楽器類 |
19 |
神祭附仏供具 |
20 |
兵器防備具 |
21 |
兵器征伐具 |
22 |
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23 |
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24 |
百工具 |
25 |
容飾具 |
26 |
服玩具 |
27 |
絹布類 |
28 |
衣服類 |
29 |
冠帽類 |
30 |
履襪類 |
31 |
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32 |
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33 |
車駕類 |
34 |
船橋類 |
35 |
農具類 |
36 |
女工具 |
37 |
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38 |
獣類 |
39 |
鼠類 |
40 |
寓類 怪類 |
41 |
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42 |
原禽類 |
43 |
林禽類 |
44 |
山禽類 |
45 |
龍蛇部 |
46 |
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47 |
介貝部 |
48 |
魚類 河湖 有鱗魚 |
49 |
魚類 江海 有鱗魚 |
50 |
魚類 河湖 無鱗魚 |
51 |
魚類 江海 無鱗魚 |
52 |
卵生類 |
53 |
化生類 |
54 |
湿生類 |
55 |
地部 |
56 |
山類 |
57 |
水類 |
58 |
火類 |
59 |
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60 |
玉石類 |
61 |
雑石類 |
62本 |
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62末 |
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63 |
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64 |
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65 |
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66 |
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67 |
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68 |
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76 |
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77 |
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78 |
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79 |
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80 |
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81 |
家宅類 |
82 |
香木類 |
83 |
喬木類 |
84 |
灌木類 |
85 |
寓木類、苞木・竹之類 |
86 |
五果類 |
87 |
山果類 |
88 |
夷果類 |
89 |
味果類 |
90 |
瓜果類 |
91 |
水果類 |
92本 |
山草類上巻 |
92末 |
山草類下巻 |
93 |
芳草類 |
94本 |
湿草類 |
94末 |
湿草類 |
95 |
毒草類 |
96 |
蔓草類 |
97 |
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98 |
石草類 |
99 |
葷草類 |
100 |
瓜菜類 |
101 |
芝茸類 |
102 |
柔滑菜 |
103 |
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104 |
菽豆類 |
105 |
造醸類 |
原本の復刻。1巻本のオンデマンド版がある。