頭痛
頭痛 |
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分類および外部参照情報 |
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頭痛(ずつう)とは、頭部
頭部頭部(とうぶ)とは、動物の頭に当たる部分をさす。体の進行方向最前方に位置し、感覚、摂食器官が集中する。進行方向に口があっても、その周囲にそのような器官が集中していなければ、頭とは見なされない(例;ミミズ)。さまざまな動物群に、ある程度似たような頭部が見られるが、必ずしも相同とは見なしがたい。 脊椎動物の場合脊椎動物以外の脊索動物では、明確な頭部は見られないが、脊椎動物は、どれもはっきりとした頭部がある。口はほぼ前端、やや下面に開き、消化管は前方部分両側の側面に鰓裂(さいれつ)が並ぶ。この鰓裂までがほぼ頭部に当たる。左右に目が1対のほか、上面にろ頂眼という目が一つあるが、これは残っているものがほとんどない。両目の間には中枢神経である脳があり、脊髄が背中側を後方に伸びる。脳を包むように頭蓋骨がある。無顎類以外では、上顎と関節する下あごの骨があり、これは鰓裂の支持をする骨に由来する。この構造は、消化管入り口に枠をつけ、大きく開く能力を与えたことで、他の分類群に類例がないものである。なお、頭部のうち背後側を、後頭部(こうとうぶ)ということが多い。 鼻は、魚類においては口の上側の皮膚に口を開く穴で、出口も体外に向かうものが多かったが、出口を口腔内に持つものから両生類が進化し、空気の取り入れと化学物質の受容器に発達した。 耳は、平衡胞として頭蓋骨内部に由来し、両生類が陸上に進出したとき、これを応用的に聴覚器官として発達させたものである。 扁形動物の場合扁形動物では、渦虫綱のものに頭部らしきものがある例があるが、それほどはっきりしないものも多い。彼らの場合、這って歩くので、プラナリアのように、進行方向前端には感覚器官の集中した、やや構造的に異なった部分があって、それより後ろの部分からややくびれているものもあるが、全体にのっぺりした楕円形など、はっきり区別される部分がないものも多い。上面に数対の目がある。ほとんどのものは消化管の入り口が体の中央腹面にあり、餌を見つけると、その上に乗りかかり、頭部が行きすぎたところで摂食にかかる。 また、条虫(サナダムシ)類では、先端に腸壁に付着するための鉤や吸盤などを持つ、独特の体節(実際には個虫)があり、これを頭節というが、機能的にはいわゆる頭ではない。 軟体動物の場合軟体動物では、多板類、単板類で口は体の先端にあり、その後ろに頭に当たる部分があるが、体の陰に隠れて発達が良くない。堀脚類・斧足類(二枚貝類)では頭部は退化している。 腹足類(巻き貝類)では、殻の口が狭くなり、その代わりに頭部と腹足が殻の外に出て前後に細長くなったため、頭部が明確で、やわらかな触角や目が発達する。目は柄を持つ場合もある。 タコ、イカなど頭足類では、本来は腹足類のような構造から派生して殻の口に頭が引きつけられ、脚は分枝して束になっているので、頭から脚が生えたような形になっている。頭足類の名はここから来たものである。頭には無脊椎動物中、もっともよく発達した目が1対ある。口は脚の真ん中に位置し、キチン質の歯がある。現生の頭足類の大部分は、殻を退化させ、体内に取り込むか、あるいは殻を失っている。この中で、イカ類は腹部にひれを持ち、それを波打たせて頭と脚の方向に進むのが通常であるが、外套膜内の水を噴出し、素早く腹部のある後方へ進む能力がある。つまり、目の向かない方向への急速移動が可能なので、水槽飼育では腹部先端を壁にぶつけ、けがを負うことが多く、ここから弱って死に至るのが、彼らの飼育を難しくしている。 環形動物の場合多毛類(ゴカイの仲間)には頭部がある。環形動物の体は体節に分かれ、いわゆる体節制をもつ、体の先端には口があるが、口の前にもう一つ体節がある(口前葉・こうぜんよう)。ここに1対の目、数対の触手があって、頭部を形成する。口には引き込むことのできる吻があり、その先端には歯がある。吻をのばすと、頭部はその基部の上面に乗っかった形になる。 固着性のものでは、頭部の触手が鰓状に発達して、頭部そのものは退化傾向にある。 節足動物の場合節足動物の体は、環形動物と同様に体節制をもち、体節ごとに1対の付属肢(関節肢)がある。ただし、複数の体節が融合して一つの部分を作る、合体節(がったいせつ)というものを形成するものが多い。頭部はその代表的な例である。頭部には眼・触角・口器など、対をなす構造があるが、それらは体節に対応した部分である。そのうち、眼・上唇・口は口前葉(先節)に由来する器官で、触角・顎などの口器などはその直後の体節に由来する付属肢であると考えられる。頭部の構造は、節足動物の系統を考える場合、もっとも重視される特徴の一つである。 現生の節足動物から見ると、頭部の構造は以下の3つに大別できる。 · 甲殻類の頭部は2対の触角、1対の大顎と2対の小顎を持つ。一部の分類群では、さらに胸部最前数節の付属肢が顎脚(がっきゃく)として口器に参加する。また、触角のうち第2対は二叉型である。一部では、頭部がさらに歩脚をもつ胸部と癒合して頭胸部を形成する。 · 六脚類(広義の昆虫)と多足類の頭部は、1対の触角、1対の大顎と2対の小顎を持つ。ただし六脚類の場合、第2対の小顎はお互いに癒合して1枚の下唇となる。 · 鋏角類の前部の合体節は前体といい、触角はなく、付属肢として独立した口器は1対の鋏角(きょうかく)のみであり、多くの場合は直後の付属肢(主に触肢)の基部が特殊化した突起をもち、口器として参加する。また、他の現生節足動物の頭部とは異なり、鋏角類の前体は歩脚をも備え、機能としては頭胸部である。 |
に感じる痛みのうち、表面痛でないもの。様々なタイプの痛みを含んだ幅の広い症状概念である。ありふれた症状である一方、これを主症状とする致命的疾患もあり、他方で原因が特定できないことも多いという、症候学上非常に重要な症状。原因はさまざまといわれるが、基本的には、すべての頭痛の原因は一つとされる。血液中のある物質による炎症反応ともいわれる。
目次
疫学
頭痛はありふれた症状で、外来初診患者の約10%が頭痛を主訴とする。
日本人の3 - 4人に1人(約3000万人)が「頭痛持ち」である。そのうち2200万人が緊張性頭痛
緊張性頭痛
緊張性頭痛(きんちょうせいずつう、tension headache, tension-type headache)、あるいは緊張型頭痛は、頭痛の最も一般的なタイプである。痛みは首・後頭部・眼・体のその他の筋肉に広がっている。緊張性頭痛は頭痛のタイプの約90%を占めている。人口の約3%は慢性的緊張性頭痛を持っている。 国際分類であるICHD-Ⅱでは病型は稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛の3型に分けられている。診断基準も示されているが緊張型頭痛は片頭痛と異なり、独立した疾患単位ではない。診断基準はトリプタンが効果的な片頭痛を緊張型頭痛と診断しないように片頭痛の除外を意識したものとなっている。この基準では変容型片頭痛を緊張型頭痛と診断する可能性があり、現場の診断としては使いづらい。そこで典型的な緊張型頭痛の特徴をまとめる。また緊張型頭痛と診断できた場合はジストニアが関係している可能性があるいつも肩こりを伴っている頭痛(従来からの日本人の緊張型頭痛)、精神的要因による頭痛、元来、片頭痛が存在し、経過とともに毎日痛むようになった頭痛(変容型片頭痛)の3つのカテゴリーに分類できることが多い。 特徴的な臨床所見
いつも肩こりを伴っている頭痛特徴的な臨床所見を満たした上で以下のような特徴が認められた場合はジストニアが関係している可能性が高い。ストレッチ、筋弛緩薬、ジストニア治療すなわち、トリヘキシフェニジル (Trihexyphenidyl)、クロナゼパム、ジアゼパム、メキシレチンやボツリヌス毒素が効果を示す可能性がある。ICHD-Ⅱでは頭頸部ジストニーによる頭痛や顎関節症による頭痛または顔面痛もこのカテゴリーに診断される可能性がある。
精神的要因による頭痛特徴的な臨床所見を満たした上で以下のような特徴が認められた場合は精神的要因によるものである可能性が高い。抗不安薬、抗うつ薬、心理療法が有効である可能性が高い。その他の疾患の可能性が低いと判断してから積極的に疑うべきである。
変容型片頭痛特徴的な臨床所見を満たした上で以下のような特徴が認められた場合は変容型片頭痛である可能性が高い。変容型片頭痛は緊張性頭痛の特徴もあるがあくまでも片頭痛であり、片頭痛の治療を行う。しかし典型的な片頭痛とは異なる点もある。頭痛の頻度が多いこと、片頭痛とは異なる成分の痛みが混在していること、概して年齢が高く合併症がある可能性があること、薬物使用がすでに過剰になっている可能性などがあげられる。その結果、頭痛予防薬の使用やボツリヌス毒素の使用なども考慮する。
複数要因の合併上記のカテゴリーはオーバーラップすることも多く、これらをまとめて緊張性頭痛と診断する。どのパターンが優位かということを参考に治療方針を決定する。 鑑別するべき頭痛一次性頭痛を鑑別する以外に、二次性頭痛で緊張性頭痛と診断されやすい頭痛に関して概説する。低髄液圧頭痛、副鼻腔炎による頭痛、頸原性頭痛、むちうち損傷による慢性頭痛などがあげられる。「高血圧による頭痛」も鑑別が必要であるが、高血圧と頭痛の関連に関しては明らかになっていないため、それは心因性の緊張性頭痛である可能性が高い。 低髄液圧頭痛低髄液圧頭痛の場合は以下のような特徴がある。
副鼻腔炎による頭痛副鼻腔炎による頭痛の場合は以下のような特徴がある。
頸原性頭痛頸原性頭痛の場合は以下のような特徴がある。
むちうち損傷による慢性頭痛むちうち損傷後の急性頭痛の原因は頚椎捻挫や筋線維断裂、筋膜下出血が主な原因である。これらは3ヶ月以内に軽快することがほとんどであり、心因性の強い緊張性頭痛そのものである可能性がある。 原因緊張性頭痛を引き起こす原因は、様々な要素がある[3]。 患者の半分は悪化の原因としてストレスや空腹がある 緊張性頭痛は頭と首の筋肉緊張によって引き起こされることがある。 1つの説では、緊張性頭痛と偏頭痛の主な原因は、慢性的に側頭筋で歯の噛みしめていることがある。 別の説では、脳幹に位置する痛みのフィルタの誤動作によって引き起こされる可能性がある。 これは脳が情報を間違って解釈しているもので、側頭筋や他の筋肉などの信号を痛みとして解釈しているものである。神経伝達物質の1つであるセロトニンがおそらく関与している。 この理論の証拠は、慢性緊張性頭痛がアミトリプチリンなど特定の抗うつ薬で治療することができるという事実から来ている。 しかしながら、慢性緊張性頭痛におけるアミトリプチリンの鎮痛効果は、セロトニン再取り込み阻害にのみ起因するものではなく、おそらく他のメカニズムが関与している。 最近の窒素酸化物メカニズムの研究では、窒素酸化物がCTTHの病態生理に重要な役割を果たしていることは示唆していなかった。[4] 痛覚経路は、一酸化窒素シンターゼと窒素酸化物生成の活性化に関連しているかもしれない。 予防三環系抗うつ薬はSSRIよりも効果があることが判明しているが、副作用についても大きい。[5] プロプラノロールと筋弛緩薬は、緊張性頭痛の予防についてのエビデンスは乏しい。[6] 英国国立医療技術評価機構(NICE)は慢性の緊張性頭痛の予防として、5~8週あたり10回までの鍼治療の検討を提案している[7]。 治療薬突発性の緊張性頭痛には市販薬の鎮痛薬、パラセタモール(アセトアミノフェン)、アスピリン、イブプロフェンなどがよく処方されている。鎮静剤と鎮痛薬の組み合わせも広く用いられている。慢性的緊張性頭痛には、アミトリプチリン[8]、ミルタザピン[9]、トピラマート、 バルプロ酸ナトリウム (予防用途)[10]も用いられる。 NICEは急性の緊張性頭痛に対し、アスピリン・アセトアミノフェン・NSAIDを患者の体質・リスク・副作用をふまえて考慮すべきとしている[7]。さらにNICEは、薬物乱用頭痛のリスクを説明することを勧告している[7]。さらにオピオイドを投与してはならないとしている[7]。ベンゾジアゼピンもまた不適用であると英国医薬品再評価委員会はしている。 バイオフィードバック技法にも役立つことがある。[11][12] 結果はさまざまであるが、ボツリヌス毒素も緊張性頭痛を持つ人に試されている。 鍼鍼治療は、頻繁もしくは慢性的な緊張性頭痛に有効だと言われている。NICEは慢性の緊張性頭痛の予防として、5~8週あたり10回までの鍼治療の検討を提案している。 手技療法緊張性頭痛を持つ人は、よく脊椎牽引、Soft tissue therapy、筋膜トリガーポイント治療などの手技治療を受けている。 2006年のシステマティック・レビューでは、緊張性頭痛について手技療法を支持する厳密なエビデンスは存在しなかった。 2006年のシステマティック・レビューでは、カイロプラクティックについてのエビデンスは弱く、おそらく偏頭痛より緊張性頭痛に効果があるというものだった。 2004年のコクランレビューでは、頚椎牽引は偏頭痛と緊張性頭痛に効果があり、頚椎牽引と首の運動は外傷後頭痛に有効であるというものだった。e. その他、2000年から2005年5月の間に掲載された2つの系統的レビューでは、脊椎牽引を支持する決定的なエビデンスは見つからなかった |
、840万人が片頭痛、1万人が群発頭痛といわれる。クモ膜下出血・脳腫瘍による頭痛は、毎年約1万人 - 3万人に発生する。
日常生活に支障ある頭痛を、世界中で最低40%の人が経験する。
男性よりも女性のほうが頭痛の症状を訴えることが多く、筋緊張性頭痛の6割、片頭痛の8割が女性である。
女性が訴えることが多い頭痛の1つに生理時に伴うものがあるが、これは生理中にエストロゲンが血中から減少し、それがセロトニンに何等かの影響を与えて片頭痛を引き起こしやすくなるからではないかとも考えられている。
原因
血管拡張
片頭痛など。有力なのは後述の「三叉神経血管説」。血管収縮による頭痛はないとされる。
精神・筋の緊張
肩こりからくる筋緊張性頭痛など。筋緊張性頭痛では、『ストレス → 筋収縮 → 頭痛 → ストレス』という悪循環が生じる。
牽引性
頭蓋内の痛覚感受組織がひっぱられたり圧迫されて起こる(例:脳腫瘍、頭蓋内血腫、低髄液圧症候群)。
炎症性
髄膜炎やクモ膜下出血などでは、痛覚閾値の低下のために頭痛が起こる。いわゆる髄膜刺激症状のひとつとして起きる。
頭部を支配する感覚神経である三叉神経や上部頸髄神経の損傷は頭部の神経痛を引き起こす。
耳・鼻・歯などの疾患による痛みの関連痛となる。
頭痛の誘因となりうる食品
食品中に含まれる物質が、血管作動作用をもたらすことがあり、この血管作動作用には、血管拡張作用と血管収縮作用(収縮作用消失から拡張への反転)があり、どちらも片頭痛発作の誘因となりえる。頭痛の誘因となりうる食品は、片頭痛#原因を参照のこと。
心因性などを原因とする例は、下記参照。
危険な徴候
頭痛は、緊急に集中治療を施さなければ死に至る疾患の表徴であることがある。その疾患とはクモ膜下出血、髄膜炎、大きな脳出血の3つである。脳腫瘍も放置すれば確実に死に至るが、緊急度では前3者には遠く及ばない。また、重度の緑内障発作であった場合には、生命には影響しないが失明の危険が大きく、緊急度は高い。
それらの疾患を示唆する徴候は以下の通りである:
プライマリ・ケアにおいて頭痛を診療する医療従事者は、以上の徴候を見逃さないことが防衛医療の上でも重要である。特に急速に増悪する頭痛、病歴のつじつまが合わない、以前と違う、神経局在所見、睡眠から覚醒させるほどの頭痛がある場合は頭部CTが施行される場合が多い。危険な二次性頭痛を疑う兆候としてはSNOOPというものが提唱されている。
SNOOP |
内容 |
Systematic symptoms |
全身性症状(発熱、倦怠、るいそう、筋痛)、全身性疾患(悪性疾患やAIDS) |
Neurological |
神経欠落症状 |
Onset abrupt |
突然の発症、雷鳴頭痛、急速に悪化 |
Older |
40歳以上の新規発症 |
Pattern change |
以前と異なる頭痛(頻度、持続、性状、重症度) |
一次性頭痛
頭痛は大きく、基礎疾患のない一次性頭痛と、別の原因疾患による二次性頭痛に分けられる。一次性頭痛の場合、一次性頭痛の1つが単独で起こっている場合もあれば、2つ以上が合併して起こっている場合もある。
一次性頭痛は慢性・反復性のため、多くの場合、患者が「いつもの頭痛」と心得ており、医療機関を受診しないことが多い。受診時はたいてい、「ふだん経験したことのない頭痛」として受診する。
緊張型頭痛(Tension headache)
詳細は「緊張型頭痛」を参照
緊張型頭痛が発症する原因としては、精神的・身体的ストレスや筋肉の緊張などが複雑に絡み合っていると考えられている。この種の頭痛に関係すると考えられる項目は次の通りである。
身体的ストレス
原因としては無理な姿勢・合わない枕・目の酷使など。特に目や肩などにストレスが集中してかかると周囲の筋肉がこわばって血行が悪くなり(肩こり)、さらに疲労物質などがたまって周囲の神経を刺激し、頭痛を招くと考えられる。パソコンなど、長時間テレビ画面・モニタなどに向かって作業に従事する人などによく見られる。
精神的ストレス
原因としては心配事や不安・悩みを抱えることなど。これによって自律神経がうまく機能しなくなると、筋肉が緊張していなくても頭痛を訴えることがあるとも考えられている。このことは人間の性格にも左右される一面があり、例えば几帳面で律儀な人・生真面目な人ほどこの症状が現れやすいとも言われている。
いずれも女性に多く、数日持続する。緩徐に進行し、典型的には、頭をとりまくはちまき状に痛む。ストレスやうつによって起こり、主に頚部・側頭部の異常な筋収縮に起因する。
治療は、NSAIDs・筋弛緩薬やチエノジアゼピン系、抑うつ症状に三環系抗うつ薬などが使われる。低い枕で寝ることも有効。
片頭痛(migraine)
詳細は「片頭痛」を参照
「片頭痛」は「偏頭痛」とも書き、「へんずつう」または「へんとうつう」と呼ぶ。朝、目が覚めて起きた時から頭痛として感じる場合や、太陽の光などを頭や目に受けて頭痛が起こった場合は片頭痛の可能性が高い。激しい運動後や緊張が解けてほっとした時、休日などにも起こりやすい。片頭痛患者の1割前後で、前兆がみられる。片頭痛の発生メカニズムについてはまだ解明されていない部分もあるが、有力な説としては「セロトニン説」と「神経血管説」の2つがある。また、遺伝の要因もあるとも考えられている。
セロトニン説
ストレス・緊張などにより脳が刺激を受けると、血液成分である血小板から血管を収縮させる作用を持つセロトニンが多量に放出されるようになり、脳内の血管が収縮する。時間の経過と共にセロトニンが分解・排泄されて減少すると、一度収縮した血管が逆に広がりはじめるようになり、この時に頭痛が起こるようになるというもの
三叉神経血管説
脳から伝えられた何らかの刺激が血管周囲にある三叉神経を刺激し、三叉神経の末端から血管を拡張させる作用をもつサブスタンスPなどのさまざまな神経伝達物質が分泌される。その結果、血管が広がり、その周囲に炎症が起こって頭痛として自覚されるというもの。1980年代から有力視されてきた説の1つ。(三叉神経痛)
片頭痛は血管による拍動性の痛みで、若い女性に多く、しばしば家族性である。片頭痛の前は食欲が旺盛になる、甘いものが食べたくなる、眠気をさすなどと言われているが、実際に発作を予知することは不可能である。悪心嘔吐・羞明・めまい・圧痛・食欲不振・多幸感などを伴うこともある。前兆を伴うタイプもあり、視覚暗点・閃輝暗点(ギラギラ輝く歯車のようなものが見える)・一過性半盲(視界の一部が一時的に欠けて見えなくなる)・片麻痺・片側性感覚障害(痛みと半盲の出ている側の手の痺れ)・言語障害(舌のもつれ)などが前兆としてみられる。
睡眠で軽快することが多いが、起床で始まることも多い。ただし、睡眠中に呼吸が無意識のうちに止まってしまうという「睡眠時無呼吸症候群」が原因となっていることもある。口呼吸する習慣のある人・肥満気味の人は要注意である。
軽症ではNSAIDs、中等症以上ではトリプタン系薬物が用いられる。エルゴタミン製剤も有効な場合がある。またカフェインも効果的である。
群発頭痛(Cluster headache)
詳細は「群発頭痛」を参照
発症のメカニズムについては未だ明らかにされていない点が多いが、頭部の血管の拡張が関わっているのではないかと考えられている。 飛行機の着陸時に耳を何某かのもので塞いでいたら、この痛みが出たというケースもある。
群発頭痛の最大の特徴は1年から3 - 4年に数回程度、1か月から3か月に渡る「群発期」に毎日のように決まった時間に発症する場合が多い(近年は薬の副作用なのか、時間だけがずれて群発発作が起きる人が多い)。 群発地震のようにある時期に固まって起きることから、群発頭痛と言われている。
日本では、偏頭痛や三叉神経痛と間違われる場合が多く、この病名を知らない医療関係者も多いと考えられる。 人により発作が来る時間は様々だが、睡眠中に発作が来ると激痛で目が覚める。 これにより睡眠に恐怖を感じるケースも多い。痛みは数ある頭痛の中でも群を抜き、「スプーンで目玉をエグられる程」と例えられる。 また、火山がマグマを噴出す感じが「痛みを現す」状態に似ている、と例えられる。 あのマグマのような群発発作は「急激」に襲って来て、こんなに痛くて何故死なないのか不思議なほどと言われる。 【患者にしか解らない所(自己申告)が残念であり、誤解されるところでもある】とされる。
お産などよりも痛いとされ、心筋梗塞、尿路結石、と並び生きているうちに味わえる三大痛の一つとされ、別名「自殺頭痛」とまで呼ばれている。 目の後ろを通っている血管が拡張して炎症を引き起こすため、目の奥の痛みを自覚するようである。また、この血管を取り巻いて、涙腺のはたらきや瞳孔の大きさをコントロールしている自律神経が刺激されて、涙・鼻水が出る、瞳孔が小さくなるといった症状を伴うともいわれる。吐き気を伴う場合もある。
現在の治療法は、イミグラン(3mg)の注射と純酸素吸入が効果的である。英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは、経鼻トリプタン[4]と酸素[4]を勧告している。
治療薬は、トリプタン系の「イミグラン」などが使われるが、作用には個人差も大きいため、必ず医師の診察をうけること。酒石酸エルゴタミンを使用した「カフェルゴット(平成20年3月末日で販売中止)」「クリアミン(S錠・A錠)」などが使われることもある。また、酒石酸エルゴタミン系とトリプタン系の薬は併用禁止で、薬は、必ず24時間あけなければならないため服用には充分注意すること。 トリプタン系(イミグランなど)の薬は、閉経後の女性、心疾患の危険因子を有する患者には慎重に投与する必要があるとされる。
群発頭痛の海外での一般的な治療法は、イミグランの自己注射だったのだが、最近まで日本では頭痛に対しての自己注射療法が認められていなかったために即効性のある効果的な治療が困難であった。しかし2008年4月より保険適用にてイミグランを自己注射して群発頭痛を治療することが可能となっている。予防薬に関しては実際にはSSRI(パキシル等)・ステロイドなどが処方されているが、保険適応とはなっていない。 カルバマゼピンとガバペンチンが新薬として注目されているとされる。(2011年現在)外部リンク:大阪大学医学部附属病院疼痛医療センター参照のこと。
群発頭痛は激痛のため、トリプタン系の薬(イミグランなど)の多量服用は慎重にしなければならない。とは言え「我慢の限界」を超えた痛みであることは経験者にしかわからないので、周囲から誤解を受けることもしばしばである。 また、「群発期」中にアルコールを摂取してしまうと、薬の効果が薄くなり即座に激痛に襲われることもある。
プレドニンやデカドロンなどのステロイド療法もあるが、副作用のリバウンドで苦しむこともあり注意が必要である。 また、重症の場合は『慢性の群発頭痛』に至ることがある。 『慢性の群発頭痛』とは、痛みの最大値を10段階で表すと、常にレベル3 - 5の痛みが「とれない」状態が続くものを言う。群発発作期と群発発作期の間も常にレベル3 - 5の痛みがあり、発作時の痛みはレベル10(max)が1 - 2時間続きその中に群発的に10段階の痛みが襲ってくる耐え難いものであると言われる。
二次性頭痛
頭部外傷による頭痛
頭頸部血管障害による頭痛
脳血管障害により頭痛が起こることもあり、代表的なものに「脳出血」「クモ膜下出血」「髄膜炎」「硬膜動静脈瘤(こうまくどうじょうみゃくろう)」などがあげられる。これらの頭痛の特徴は、突然頭部を何か堅いもので殴られたような突発的な痛みが発生することがあげられる。いずれにしても脳血管障害の場合は命に関わる危険性が極めて高くなるので、早急な救急処置を行うことが大切である。
巨細胞性動脈炎は日本では頻度は少ないが、頭痛と策状の圧痛を主症状とする頭部の比較的大きな動脈を侵す血管炎である。側頭動脈が病変の主座であることが半数であるが、残りは頭部の他の動脈の炎症である。治療が遅れると半数が失明するので、見逃してはならない。
非血管性頭蓋内疾患による頭痛
脳脊髄液圧の上昇(偽性脳腫瘍)や低下、サルコイドーシス・SLEなどの非感染性炎症性疾患、髄腔内への投与に関連する頭痛、脳腫瘍などの頭蓋内腫瘍など。
物質またはその離脱に伴う頭痛
食品では、赤ワイン・チーズ・チョコレートなどのチラミン含有食品、アルコール(下の「二日酔いの頭痛」も参考)、グルタミン酸、亜硝酸塩などが頭痛を起こす。 人によっては、アイスクリームなどの冷たいものを食べた時に頭痛を感じる人もいる。この症状を「アイスクリーム頭痛」と呼ぶが、これは冷たいものを食べることによって喉元が冷やされた時、体は体温を維持しようと血流量を増すために血管が拡張して引き起こされる頭痛である。これを防ぐには、なるべく急激な血管の拡張が起こらないよう、冷たいものはゆっくりと食べるようにするのも1つである。 |
感染による頭痛
脳膿瘍、脳炎、髄膜炎、肺炎球菌感染症、インフルエンザ菌感染症、伝染性単核症、風邪などあらゆる感染症は頭痛を起こしうる。 恒常性の障害による頭痛 低酸素血症、高二酸化炭素血症、低血糖、透析、月経、経口避妊薬、妊娠、褐色細胞腫、失望などのストレスなどは頭痛を起こす。 頭蓋、頸部、眼、耳鼻、副鼻腔、歯、口腔などによる頭痛・顔面痛 中耳炎、緑内障、副鼻腔炎、眼の屈折異常、齲歯、歯髄炎、変形性頚椎症など。 精神科的頭痛 二日酔いの頭痛 アルコール飲料を飲み過ぎた場合に起こる頭痛で、二日酔いの代表的な症状としてもよく言われる。二日酔いの頭痛の原因については様々なものが複雑に絡み合っていることもあり一概に断言はできないが、主なものをあげると以下のものがある。 アセトアルデヒド アルコール飲料を飲み過ぎると肝臓などで完全にアルコールが代謝できずにその中間生成物であるアセトアルデヒドが体内に多量に存在するようになり、血液の流れによってそれが脳に到達すると、脳内ではそれを中和するためにより酸素を多く取り入れようと血管を拡張させるため、それに伴って周囲の神経が刺激されて頭痛として感じられるというもの 脳の髄液圧低下 脳は、頭蓋骨内部の髄液の中に浮かぶ形で存在する。アルコールが体内に取り込まれると、その高い浸透圧によって体内で保持している水分が失われるが、この時に髄液中の水分も失われて低圧状態になる。これによって脳周囲の神経や筋肉が刺激を受けて頭痛として感じられるというもの(低髄液圧症候群) なお、どのアルコール飲料をどの程度飲めば頭痛が起こるということには個人差があるようだが、同一量を飲むと想定した場合、アルコール代謝能力が低い人ほど、アルコール度数が高い飲料ほど頭痛を起こしやすいとも言える。なお赤ワインは、チラミンを含有するぶんだけ頭痛を起こしやすい。 |
治療と予防
基本的に頭痛の治療は薬物などによる対症療法が行われることが多いが、脳の疾患がある場合はその原因を取り除く治療も行われる。また、頭痛を引き起こす原因が生活習慣に存在する場合は、それを改善し取り除くことも推奨される。以下、主に対症療法で使用される薬物等を紹介するが、薬の服用や生活習慣の改善を行っても症状が緩和しないなどの場合は素人判断せず、脳外科などの専門医で相談する方が望ましい。 なお、これら薬物を長期に渡って常用すると体が薬に慣れてしまって効きにくくなったり、「薬の効果が切れる → 薬を飲む」という悪循環に陥って「薬物乱用頭痛」と言われる症状が起こることがある。また、頭痛治療薬服用中にアルコール飲料を飲むことは、胃をあらす原因になったり、薬剤によっては体内で毒性の高い物質に変化するなどの弊害を起こすことがある。 |
治療と生活習慣改善による予防
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頭痛予防薬
片頭痛の予防薬として「バルプロ酸ナトリウム」「カルシウム拮抗薬(きっこうやく)」「β遮断薬(ベータしゃだんやく)」などの服用がなされる。
Ca拮抗薬にはミグシス、テラナスなどがある。β遮断薬にはインデラルがある。
市販頭痛薬の主な成分
「鎮痛剤」
主に「痛みを引き起こす物質の合成を抑える」「痛みを感じる中枢をブロックする」の2タイプに分けられる。
英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは、アセトアミノフェン・アスピリン・NSAIDを単独または併用の服用が、月に15日以上ある状態が3ヶ月以上続く場合、薬物乱用性頭痛の可能性が疑われるとしている[6]。NICEは急性期の頭痛患者に対して薬物乱用頭痛のリスクを説明することを勧告している
アセトアミノフェンとも呼ばれるもので、脳の痛みを感じる中枢(痛覚中枢・つうかくちゅうすう)に働きかけて痛みを鎮める。このアセトアミノフェンとカフェイン・エテンザミドを合わせた「ACE処方」と呼ばれる組み合わせで用いられることが多い。アセトアミノフェンは抗炎症作用をほとんど持っていないが、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と異なり、副作用が無ないという利点を持っている。
アセチルサリチル酸とも呼ばれるもので、痛みを引き起こす原因物質の1つであるプロスタグランジンの合成を抑え、炎症に伴う痛みを緩和する。粘膜を荒らしたり、潰瘍を作る原因にもなりやすいので、胃を保護する成分と併用することが多い。
イブプロフェン(英: Ibuprofen)・イソプロピルアンチピリン
アセチルサリチル酸同様の解熱・鎮痛・抗炎症成分だが、医療現場で使用されていた成分を市販薬に転用しており、抗炎症作用がやや強いとされる。イブプロフェンは全ての非選択性NSAIDの中で最も胃腸障害が少ない。
ビタミン・補酵素・アミノ酸など
ミトコンドリア関連
片頭痛を伴うミトコンドリア病 (ミトコンドリア脳筋症)の場合は、ナイアシン (ビタミンB3)、ビタミンB1、ビタミンB2、リポ酸や、コエンザイムQ10の補給が行われている[7]。これらはミトコンドリア内のクエン酸回路および電子伝達系を回すために必要となる栄養素である。また、慢性片頭痛は、反復性片頭痛よりもビタミンB2 (リボフラビン)やコエンザイムQ10の欠乏が多いとする研究が存在するものの、これらのサプリメントが片頭痛を予防するかはまだ分かっていない。ビタミンB2はレバーに、コエンザイムQ10はハツに多く含まれている。 また、ミトコンドリア病の治療において、タウリンの補給も試みられている。ミトコンドリアでのタンパク質合成にはタウリンが必要となるものの、ミトコンドリア病の一種であるMELASおよびMERRFの患者ではタウリンと転移RNA (tRNA) の結合減少が指摘されており、その解明が進んでいる。なお、片頭痛患者は、片頭痛に伴い血漿および脳脊髄液にタウリンが放出されるとする研究があるものの、原因は不明。 また、筑波大学の研究によれば、アミノ酸のグリシンは、老化による後天性ミトコンドリア呼吸欠損を回復するとしているものの、グリシンが頭痛に効くかは不明。片頭痛患者は、脳脊髄液のグリシン量が健常者よりも多いとされる。 レスベラトロールはミトコンドリア機能を改善するとされるが、頭痛に効くかは不明。逆に、レスベラトロールの副作用によって頭痛が起こる場合もある。ミトコンドリアは褐色脂肪細胞に多く含まれているが、マウス実験において褐色脂肪細胞はSIRT1の活性化により増えるとされており、レスベラトロールはそのSIRT1を直接活性化するとみられていたが、後にその直接的な活性化は間違いであり、蛍光分子の導入により起きていたことが判明した。レスベラトロールはイタドリに多く含まれている。 |
アセチル-CoA不足
クエン酸回路の燃料となるアセチル-CoAを生成するための解糖系及びβ酸化 (脂肪酸代謝) も重要となる。 補酵素A (CoA) は解糖系および脂肪酸代謝の両方において必須となっているが、その補酵素Aの合成にはパントテン酸が必要となる。パントテン酸欠乏症でも頭痛が起きるとされる。 また、脂肪酸代謝ではL-カルニチンが必要となる (カルニチン#働き)ほか、解糖系ではグルコースのリン酸化にマグネシウムイオンが必要となる。酵素欠乏によるカルニチンレベル低下は片頭痛の原因となりうるとの報告がある。また、L-カルニチンおよびマグネシウムの摂取は偏頭痛に効果のある可能性がある。 |
酸欠
ミトコンドリアの好気的呼吸には酸素が必要となるため、酸素欠乏症や高山病などにより酸欠状態になることによっても頭痛が起こる。この場合、酸素吸入などが行われる。酸素吸入は群発頭痛の治療にも使われている]ほか、片頭痛や緊張性頭痛などの他の頭痛にも効果のある可能性がある。 また、酸素を運ぶ赤血球が減って貧血になることでも、頭痛が起こりうる[28][29]。鉄欠乏性貧血の場合、鉄分や鉄分の吸収を助けるビタミンCの補給が行われている。悪性貧血の場合、ビタミンB12の補給が行われる。 なお、セリアック病などによる消化器官の損傷も、長期的に鉄欠乏性貧血や悪性貧血を引き起こしうる。セリアック病の場合は、グルテンフリー食品への切り替えが行われている。 血液の流れが阻害されて酸素の供給が滞ることでも頭痛が起こりうる。例えば、多血症は赤血球が多くなることで血流を鈍くし、その結果頭痛を起こす。脱水によっても相対的多血症が起き、頭痛が起こりうる[31]。脱水の場合は、水分と電解質の摂取が行われる。なお、逆に水分過剰の場合でも頭痛が起こりうる (#頭蓋内圧の上昇)。 |
頭蓋内圧の上昇
頭蓋内圧の上昇でも、頭痛が起こりうる。 頭蓋内圧上昇の原因の一つとして低ナトリウム血症がある。低ナトリウム血症には、様々な要因によるナトリウム欠乏や、水中毒 (水分過剰) などがある。水分過剰の場合は水分の摂取を控える必要が有る。ナトリウム欠乏の場合は塩化ナトリウムの補給が行われている。 また、脳虚血は神経細胞を守るためにヒスタミン放出を促し、ヒスタミンは脳浮腫を誘導して頭蓋内圧を上昇させる。そのため、脳虚血は群発頭痛 (別名ヒスタミン頭痛) を引き起こす。群発頭痛の場合は酸素吸入が行われている。 ヒスタミン頭痛はヒスタミン食中毒のようなヒスタミンの直接摂取でも起こりうる。ヒスタミンを含有する食品の摂食は注意が必要となる。 |
神経障害
片頭痛患者は三叉神経の髄鞘 (別名ミエリン鞘。神経の被膜部分) に異常があるとの報告が存在する。 髄鞘の構成要素にはセラミドとホスファチジルコリンより合成されるスフィンゴミエリンが存在するが、エピソード性片頭痛患者は血清中の全セラミド量及びジヒドロセラミド量が少ないとの報告がある。セラミドはDe novo経路により、パルミトイル-CoA(英語版)とL-セリンなどから合成される。また、マウス線維芽細胞でのin vitroの実験によれば、ホスファチジルセリンもセラミド合成に使われるとされる[37]。しかし、L-セリンやホスファチジルセリンの摂取が頭痛を防ぐかは分かっていない。関係は不明だが、ホスファチジルセリンとホスファチジン酸を含むレシチンの摂取に、(しばしば頭痛を伴う)月経前症候群 (PMS) への効果があるとする研究がある。 また、ネルボン酸も髄鞘の構成要素となっている。ネルボン酸の摂取は脱髄を予防できる可能性があり、(頭痛を伴うこともある)脱髄疾患に有益な可能性がある[40]。その他、高血圧の片頭痛患者は突発性難聴になりやすいとされる[41]が、突発性難聴のリスク因子にはネルボン酸やコエンザイムQ10の低レベルがあるとする研究がある[42]。しかし、ネルボン酸の摂取が片頭痛や片頭痛に関連する突発性難聴を防ぐかは分かっていない。 重金属中毒によって神経等が冒された場合も頭痛が起こりうる。例えば、鉛中毒になった場合[43]、気化した金属水銀を吸い込んで水銀中毒になった場合、カドミウムを吸引してカドミウム中毒になった場合などに頭痛が起こりうる。水銀体温計や蛍光灯が割れた場合は、水銀を吸い込まないように注意が必要となる。 また、頭痛の一つに頭部神経痛があり、これは頭部の末梢神経障害 (ニューロパチー) による疼痛となっている。末梢神経障害の原因の一つに、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12レベルの低下が存在する[46] (栄養障害ニューロパチー)。この場合、これらビタミンの補給が行われる。 糖尿病でも末梢神経障害の起こる可能性があり[46] (糖尿病性神経障害)、それによっても頭部神経痛が起こりうるという報告がある。糖尿病では、ビオチン (ビタミンB7) と三価クロムの同時補給に血糖値を下げる効果のある可能性がある。なお、糖尿病の治療では砂糖や炭水化物などの糖質を控えたり (糖尿病の食事療法)、薬を使ったりによって血糖値を下げることが行われているが、これによって低血糖症になることでも頭痛が起こりうる (#アセチル-CoA不足)。 |
還元型グルタチオンレベルの低下[
還元型グルタチオン (GSH) は脳における酸化ストレスの保護に重要となっている[49][50][51]が、関係は不明なものの、還元型グルタチオンレベルの低下は片頭痛の重さに相関するいう報告がある。グルタチオンはL-グルタミン酸、L-システイン、グリシンより構成されており、グルタチオンの赤血球濃度はL-システイン及びグリシンの経口補給によって上げることができるとされる[53]ものの、それらの摂取が頭痛に効くかは不明。 ライム病は頭痛の原因の一つであるが、ライム病を引き起こすボレリア・ブルグドルフェリ菌は、L-システインを吸収することにより増殖率が上がり]、また、宿主のL-システインを減らすことで宿主のグルタチオンレベルを低下させる可能性がある。 アレルギー性鼻炎も頭痛の原因の一つである[56]が、ラットでの実験によればアレルギー性鼻炎はグルタチオンレベルを低下させる[57]とされ、実際のアレルギー性鼻炎患者もグルタチオンレベルが低いとの報告がある[58]。アレルギー性鼻炎はアラキドン酸-5-リポキシゲナーゼによるアラキドン酸からのロイコトリエンA4合成を促し、ロイコトリエンC4シンセターゼ(英語版)がグルタチオンを消費してロイコトリエンA4からシステイニルロイコトリエンを生成する。 また、グルタチオンレベルの低下は慢性副鼻腔炎や慢性中耳炎などの慢性炎症とも関係があるとされる。 |
アルギニン関連
アルギニンから生成される。 アルギニンの生合成は尿素回路で行われているが、関係は不明なものの、慢性尿素回路障害の症状にも頭痛が存在する。また、頭痛を持つ非高アンモニア血症のオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症患者は、頭痛を持たない同病患者よりもNOx及びアルギニンレベルが低いという報告が存在する。 ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群 (MELAS) においては、L-アルギニンの摂取が(頭痛を含む)その症状を改善するとされる。 アレルギー性鼻炎は頭痛の原因の一つであるが、アレルギー性鼻炎では鼻粘膜においてL-アルギニン分解酵素であるアルギナーゼの発現レベルが上昇しているという報告がある。関連は不明だが、L-アルギニンとL-グルタミンの組み合わせが肥満細胞におけるロイコトリエンC4の遊離を防ぐというin vitroな研究が存在する[69]。しかし、L-アルギニンの摂取は、逆にアレルギー反応を引き起こす可能性がある[70]。 また、体内の細菌には、宿主のアルギニンやその代謝物を減らして、自らのエネルギー源とするものが存在する。歯周病は片頭痛の原因の一つとして疑われている[が、関連は不明なものの、主な歯周病の病原菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスは、他の口腔細菌と異なりペプチジル-アルギニンデイミナーゼ(英語版)によってタンパク質-アルギニンの代謝を行っている[73]。高気圧酸素治療は歯周病にも効果があるとされる (ただし、スケーリング・ルートプレーニングと組み合わせた方が効果的とされる)。 |
一酸化窒素 (NO) は頭痛を引き起こすと見られている (NO誘発性片頭痛)[64]が、体内において一酸化窒素は一酸化窒素合成酵素によってL-
粘膜等の炎症
急性副鼻腔炎からくる頭痛の場合、主要な原因はウイルスにあるため、原因ウイルスによってはHSPA5を阻害する没食子酸エピガロカテキン (EGCG)に効果のある可能性がある。没食子酸エピガロカテキンは緑茶に多く含まれている。 また、上咽頭炎でも咽頭痛と共に頭痛が起こるという報告がある。 後部尿道炎と(頭痛を伴うこともある)神経衰弱に関係があるとする古い報告も存在する[76]。 ナイアシン欠乏によって起こるペラグラも頭痛を引き起こす[77]。ナイアシン (ビタミンB3)は粘膜の健康に保つために必要であり、ナイアシンの摂取はペラグラ患者の粘膜の痛みを緩和する[。またナイアシンは、作用機序が不明ながら一部の頭痛に効果があったという報告がある]。 ビタミンA過剰症も頭痛を引き起こす。ビタミンA過剰症は皮膚や粘膜を乾燥させ[80]口角炎などを引き起こす[]。ビタミンA過剰症の場合、ビタミンAの摂取を控える必要がある。一方、ビタミンA欠乏については、粘膜の上皮化生を起こすという報告がある[80]ものの、頭痛との関係は報告されていない。 ビタミンD欠乏を伴う片頭痛も存在する。頭痛との関係は不明だが、ビタミンDには慢性炎症を抑制する効果があるとされる。 |
その他
抗酸化物質のアスタキサンチンは眼精疲労に効くとされており[84]、眼精疲労に伴う緊張性頭痛にも効く可能性がある (なお、アスタキサンチンは酸化ストレスを下げミトコンドリア機能を改善する効果があるとされ、また、カルニチンによる筋肉内の脂質代謝を促すとされる)。アスタキサンチンは鮭などに多く含まれている。 そのほか、ビタミンB12の補給に頭痛軽減の効果のある可能性がある。 |
首から上の神経痛
頭痛の分野からは、やや外れるが、神経痛とはいえ頭痛との区別がつきにくい場合がある。 次に代表するものは鎮痛剤よりも坑てんかん薬などの使用が望ましい。 三叉神経に何らかの異常が生じて、顔面の左右いずれかに焼け火箸を突き刺されるような痛みを生じる病気。 原因は、三叉神経の脳幹に入る直前の弱い部分に、動脈や静脈が直接ぶつかり、神経を圧迫することである。痛みは非常に強く、手術によって改善される。 |
後頭神経痛
群発性頭痛と区別しにくいが、頭痛とは異なるものであり、あまり良く知られていない。 首の後ろの神経(頚(けい)神経)が刺激され、耳の後ろ、頭の付け根、側頭部などに瞬間的な針で刺されたような痛みを感じる。どちらかというと浅いところに感じる痛み。 また髪の毛を触るとビリビリした感じがすることもある。多くは首の骨の変形やヘルニア、筋肉などの炎症、風邪や中耳炎の後などに発症しやすいと考えられる。 |