腋窩動脈
腋窩動脈(えきかどうみゃく)は胸部や脇の下、上肢を栄養する大きな動脈である。鎖骨下動脈が脇の下付近にさしかかり、腋窩動脈と呼び名を変える。大円筋下縁を通過後、上腕動脈と呼ばれる。
目次
1 構造 |
•2 神経や静脈との関係 |
•3 枝 |
•4 臨床的意義 |
構造
小胸筋との位置関係に基づき以下の3部から構成される。
· 第1部:小胸筋より上部に位置する。
· 第2部:小胸筋の後部に位置する。
· 第3部:小胸筋より下部に位置する。
神経や静脈との関係
腋窩動脈は腋窩静脈の外側を併走する。 腋窩では、腋窩動脈は腕神経叢
腕神経叢右の頚部を切開したところの図。前斜角筋の後部から腕神経叢がでている。 腕神経叢(わんしんけいそう、brachial plexus)とは脊髄神経から分岐し頭・首・上肢のうちに鎖骨・上腕・前腕・手へ繋がる神経叢の名称。 腕神経叢は脊髄神経から分岐し頭部・背中・肩部と上肢のうち後頭部・首・鎖骨に繋がる頚神経叢と相互に連結しているためこれらを合わせて頚腕神経叢と呼ぶ。 腕神経叢の構成腕神経叢は第5頚神経~第1胸神経の前枝から構成されており、根と神経幹と神経束の3つからなる。 第5、第6頚神経の前枝が合流し上神経幹、第7頚神経の前枝が中神経幹、第8頚神経と第1胸神経の前枝が合流し下神経幹を形成する。上・中神経幹からの枝(前部)が合流し外側神経束(C5~C7)、上・中・下の神経幹からの枝(後部)が合流し後神経束(C5~Th1)、下神経幹からの枝(前部)から内側神経束(C8、Th1)が形成される。 外側神経束外側筋皮神経(C5~C7) 外側神経束内側と内側神経束外側の合流部正中神経(C5~Th1) 内側神経束内側尺骨神経(C8~Th1) 後神経束[編集]橈骨神経(C6~C8) 腋窩神経(C5~C6) 腕神経叢の枝腕神経叢の枝は大きく分けると、鎖骨上枝と鎖骨下枝に分かれる。 鎖骨上枝肩甲背神経(C4~C6) 肩甲上神経(C5) 長胸神経(C5~C7) 鎖骨下筋神経(C5) 鎖骨下枝胸背神経(C5~C8)· 外側胸筋神経(C5~C7) · 内側胸筋神経(C7~Th1) · 肩甲下神経(C5~C7) · 外側上腕皮神経 · 内側上腕皮神経 · 外側前腕皮神経 · 内側前腕皮神経 腕神経叢麻痺· 原因は外傷、分娩麻痺、リュックサック麻痺、睡眠中の圧迫、腫瘍、肩関節脱臼、注射、手術などが考えられる。 · 上部麻痺(エルブ麻痺):C5-6の麻痺症状。三角筋、上腕二頭筋麻痺、肩関節挙上・肘関節屈曲・前腕回外障害などの運動麻痺。C5-6領域の知覚異常。 · 下部麻痺(クルンプケ麻痺):C8-Th1の麻痺症状。手指屈筋・手内筋・手関節掌屈筋障害などの運動麻痺。C8-Th1領域の知覚異常。 |
に囲まれ、腕神経叢の神経束の名前に関係している。たとえば、腕神経叢の後神経束は腋窩動脈の後面を走るためにそう呼ばれている。
枝
腋窩動脈はいくつかの小さな枝を持つ。心臓に近い順に並べると以下のようになり、「さきがけ前後」と覚える。
· 最上胸動脈(さいじょうきょうどうみゃく)
· 胸肩峰動脈(きょうけんぽうどうみゃく)
· 外側胸動脈(がいそくきょうどうみゃく)
· 肩甲下動脈(けんこうかどうみゃく)
· 前上腕回旋動脈(ぜんじょうわんかいせんどうみゃく)
· 後上腕回旋動脈(ごじょうわんかいせんどうみゃく)
大円筋より下方にくると上腕動脈として続く。
臨床的意義
腋窩動脈の近位端に限り、腕を危険にさらすことなく安全に締め付けることができる。また、肩甲骨を囲む動脈網をつくり、肩甲深動脈や肩甲浅動脈と吻合する。右腋窩動脈は心臓手術(特に大動脈乖離など)の際、挿管部位としてよく使われる。