酵素

コウソ

【英】enzyme, ferment

【独】Enzym, Ferment

【仏】enzyme, ferment

 

生体内における化学反応を触媒するタンパク質で,生体細胞内で合成される.一般に熱に不安定であり,60℃以上では変性,失活する.物質代謝など生体内の多種,多様の反応は,個々の反応にそれぞれ固有の酵素によって触媒される.したがって反応が起こり得るかどうかは,その反応を触媒する酵素を生物が合成し得るかどうかに依存しており,酵素の種類と性質が生物種の特性を決めると考えられる.酵素反応は基質が酵素に結合することによって進行し,酵素は基質の構造に対してきわめて厳密な特異性(基質特異性substrate specificity)を示すのが普通である(例えば光学異性体を識別する).酵素表面の触媒作用に直接関与する部位を活性中心*といい,タンパク質の構造のみからできている場合と,触媒作用に不可欠な補酵素*coenzyme,補欠分子族*,金属などの配合族を含む構造から成る場合がある.配合族を除いた酵素(アポ酵素*)は酵素活性を示さない.酵素が機能する際には特定の条件(温度,pHなど)を必要とし,また種々の物質によって酵素活性が増大(賦活化)したり減少(阻害)したりすることもある.国際生化学連合酵素委員会は,触媒する反応の様式によって酵素を次の6群に分類している. 1)酸化還元酵素oxidoreductase(オキシドレダクターゼ*), 2)転移酵素transferase(トランスフェラーゼ*), 3)加水分解酵素hydrolase(ヒドロラーゼ), 4)除去付加酵素lyase(リアーゼ*), 5)異性化酵素isomerase(イソメラーゼ*), 6)合成酵素synthase(シンターゼ;→リガーゼ).これらは基質の性質,作用様式などによってさらに細かく分類される.→酵素反応