ナツメ       (クロウメモドキ科ナツメ属:落葉性小高木:樹高 〜10メートル:花期 〜5月)

薬効
滋養強壮 小便不利 不眠症      
           
分布生育場所

科名:クロウメモドキ科/属名:ナツメ属
和名:棗/生薬名:大棗(たいそう)/紅棗(こうそう)/黒棗(こくそう)/学名:Zizyphus jujuba var.inermis
日本全国で栽培。
南ヨーロッパかアジア西南部原産で中国にも自生。

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見分け方・特徴

ナツメは落葉の低木か小高木となり、高さ10メートルに達する場合もあり、よく分枝します。
葉は、小枝に互生して葉柄は短く、少し平面的に並び羽状複葉のように見えます、卵形か長卵形で長さは2〜4センチです。先は鋭か鈍で葉基は鈍形で、少し左右非対称です。質はやや堅く光沢があります。3主脈があり辺縁には鈍鋸歯があります。
花は、4〜5月ころに葉のわきに淡黄色の小さな花を数個ずつつけます。
果実は核果で楕円形で、はじめは淡緑色ですが、熟すと暗赤色になります。
採集と調整
暗紅色に熟した果実は生で食べたり、甘味を加えて煮たりしますが、日干しにして乾燥してから蒸して、また日干しにしたものを生薬の大棗(たいそう)といいます。
このように乾燥したものは保存がしやすく、このままで食べたり、薬としても用います。
食用にだけ用いる場合はホシナツメで、夜露に当ててから翌日日干しにしたもので、大棗(たいそう)のように暗褐色ではなく、赤いので紅棗(こうそう)と呼びます。
これに対して、生薬の大棗(たいそう)を黒棗(こくそう)といって区別します。
紅棗(こうそう)を赤く仕上げるためには、採取後すぐに湯通しして、スノコなどの上に並べて夜露にあてて乾燥させます。
日本で栽培されるナツメは小粒ですが、剪定をしたり冬季に根元を刺激するなどの処置をすると大型のナツメの果実が採取できます。
薬効・用い方
漢方でよく使われる生薬のひとつで、緩和、強壮、利尿、鎮痙、鎮静などに応用されます。
とくに、緊張による痛みや急迫症状、知覚過敏などの症状を緩和して、他の薬物の作用を穏かにするために他の生薬と配合した漢方薬が多くあります。

滋養・強壮には大棗酒(たいそうしゅ)が効きます。ホワイトリカー1.8リットルに大棗(たいそう)300グラム、グラニュー糖150グラムを漬けます。大棗(たいそう)は細かく切って、3ヶ月以上冷暗所において布でこしてから、1日30ミリリットルを限度に就寝前に飲用します。

胃痙攣・子宮痙攣などの鎮痛には、大棗(たいそう)の配合された甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)があります。これは、神経の興奮をしずめ、不眠、小児の夜泣きにも少量を用います。
大棗(たいそう)を煎じる場合は、利尿・咳止め・精神安定・不眠症・健胃・鎮痛などに果実20個程度を水約1リットルで半量に煎じて食前に3回に服用します。
ナツメの種子は、神経衰弱、不眠症、鎮痛、強壮などに30グラムを水0.5リットルで半量まで煎じて就寝前に服用します。
また、生の果実をそのまま食べても、湯通ししてから乾燥したものを食べても薬効は同様とされています。

一般に咽喉がん、口腔がん、肺がんの治療に用いられていて、無花果(むかか・イチジク)60グラムと蜜棗(ナツメ)2個に水0.5リットルを加えて煎じ、服用します。または、その煎じ液でうがいをするとされます。
その他
ナツメは「桃、栗3年、杏は4年、梨は5年、棗(なつめ)は、その年(とし)金になる」といわれて有利な果物として珍重されて、多くの品種改良があります。
南ヨーロッパかアジア西南部原産で、日本には古くに渡来していて「延喜式(えんぎしき)・927年」にも乾棗(ほしなつめ)、大棗(たいそう)の名が出ていて、その昔から薬用に供していたことがわかります。
ナツメの名前の由来は、夏に新芽がでるから夏芽(ナツメ)だというという説と、お茶に使う抹茶入れのナツメに果実が似ているからという説があります。

漢名は、中国の古書には「大なるを棗(そう)といい、小なるを棘(きょく・サネブトナツメ酸棗(さんそう))」という記述があります。
このことからナツメは、果実が大きいから大棗(たいそう)という漢名があります。

ナツメは、「あのこはだあれ」という童謡でも謡われています。
「あのこはだあれ だれでしょね なんなんナツメの花の下 ・・・ 」この唄からも、ナツメは日本人には親しまれている果物のひとつで、童謡にも謡われている数すくない薬草です。