イチジク             (クワ科イチジク属:落葉性小高木:樹高 〜4メートル:花期 〜 月)

薬効
便秘 下痢 かぜ のどの炎症
       
分布生育場所

科名:クワ科/属名:イチジク属
和名:無花果/生薬名:無花果(むかか),無花果葉(むかかよう)/学名:Ficus carica
シリア、ギリシャなどでは、紀元前から栽培されていて原産地と考えられている
日本には17世紀前半の江戸時代寛永年間(1624-1644)に中国から長崎に渡来
本州、四国、九州に分布。暖地の水辺を好んで栽培。

見分け方・特徴

雌雄異株の落葉性の小高木で枝は開いており、茎葉(けいよう)ともに傷をつけると白色の乳液がでます。葉は互生して、掌状(しょうじょう)に3〜5裂しています。葉裏には粗い毛が密生しています。
5〜6月ころ、花は花托(かたく)が発達してできた倒卵球形のいわゆるイチジク型の隠頭花序(いんとうかじょ)をつけます。普通は上の方に雄花、下の方に雌花がありますが、栽培される品種には雄花がありません。
隠頭花序(いんとうかじょ)である花の袋は熟すると暗紅紫色となり食用にします。
採集と調整
秋に熟した果実を天日で乾燥させます。これを生薬(しょうやく)で無花果(むかか)といいます。
また、真夏に葉を採取して水洗いしてから天日で乾燥させます。これを、無花果葉(むかかよう)といいます。
薬効・用い方
有効成分:クマリン類・ベルガプテン、プソラレエン他(プソラレエンは血圧降下作用が確認されている)

果実は生食できますが、無花果(むかか)を煎じたものは弱い緩下(かんげ)作用があるので、健胃整腸薬として下痢、便秘に、また、のどの炎症を和らげる作用があるので、かぜや咽の痛みにも用います。
無花果(むかか)を1日量30〜50グラムに0.5リットルの水で煎じて約2分の1量に煮詰めたものを食後に1日3回服用します。

また、無花果葉(むかかよう)20グラムを水0.4リットルを加えて煎じ約2分の1量にまで煮詰めて、1日3回空腹時に内服すると血圧降下に効き目があるとされます。

葉や茎を傷つけて出る白い乳液には蛋白分解酵素が多く含まれていて、いぼとりに使用されます。
またこの乳液は、正常な胃腸には関係ありませんが、潰瘍などを起こしている場合には有害になりますので注意が必要です。
葉は、浴剤として風呂に入れると体が温まり、神経痛や痔によく、皮膚をつややかにします。

中国では、未熟果実の乳液中にはラットの移植した肉腫、マウスの自発性乳がんなどを抑制する成分があるとされ、無花果(むかか)の水抽出物中には、抗エールリッヒ肉腫の作用のあることが知られています。

一般に咽喉がん、口腔がん、肺がんの治療に用いられていて、無花果(むかか)60グラムと蜜棗(ナツメ)2個に水0.5リットルを加えて煎じ、服用します。または、その煎じ液でうがいをするとされます。
その他
小アジア原産といわれ、紀元前200年にはすでに栽培されていました。中国には古く唐代に入っています。
日本の場合には、江戸時代の寛永(かんえい・1624〜1643)年間に、中国から長崎に入ったのが始まりと伝えられています。
葉の切れ込みが浅い品種は古くに渡来したもので、明治以降に入った葉の切れ込みの深いものを洋種として区別しています。

イチジクの名前の由来は、一説には果実が1ヶ月で熟す(一熟・いちじゅく)からという説と、1日1果実ずつ熟すからという説がありますが、両方とも熟すというところからきているようです。

イチジクは、13世紀ころ、インド、イランから中国へ伝わり、ペルシャ語のアンジールからインジェークォ(映日果)と音訳されました。

日本では、唐音読みして映日果(えいじつか)と呼ばれていて、それから転訛(てんか)して和名が生まれたということです。
また、中国では、イチジクは花が咲かないのに果実ができるとして、無花果(むかか)という漢名があります。映日果という呼び名は今では古名となっています。

普通に私たちが食べている、イチジクの実というのは、果実のように見えますが、花の集まりの袋のことで、雌花の花のうで花のうの内面は肥厚して甘く美味になります。
イチジクの実を割ると小さな粒々がぎっしりとつまっています。この粒々が花のかたまりです。
生の果実は、栄養が豊富で、酵素に含んでいて消化を助けます。