シオン          (キク科シオン属:多年草:草丈 〜200センチ:花期 〜10月)

薬効
気管支炎(気管支カタル) せき・たん がん一般 小便不利
分布生育場所

科名:キク科/属名:シオン属
和名:紫苑(しおん)/学名:Aster tataricus
観賞花として一般に植栽、九州、中国地方では一部が野生化

キク科シオン属シラヤマギク(白山菊)
キク科シオン属のノコンギクタマバシロヨメナゴマナ


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見分け方・特徴

シオンは、庭や空き地などに植えられる多年草草本(そうほん)で、根茎(こんけい)は短く肥厚し、主根があって多くの支根と細根があります。
春先に数本の茎が直立して伸び、高さが2メートルにもなります。
葉は、大型で皮針形(ひしんけい)、柄がなく互生(ごせい)し、縁には大きなぎざぎざがあり、全草には粗い毛があってざらざらした感じがします。
花は、夏から秋にかけて茎の先端部が数枚に分かれ、散房状に淡紫色で直径2〜3センチくらいの頭状花(とうじょうか)を多数つけます。
頭状花(とうじょうか)の周りには舌状花(ぜっじょうか)がつき、中央には黄色の管状花(かんじょうか)があります。


採集と調整
シオンは、秋の10〜11月に掘り取り、根と根茎(こんけい)を良く水洗いしてから天日で乾燥します。
これを生薬(しょうやく)で、紫苑(しおん)といいます。

紫苑(しおん)は、特異なにおいがし、なめると少し甘い味がして、だんだん苦味が出てきます。


薬効・用い方
有効成分は、サポニン(シオンサポニン)を含み、去痰(きょたん)作用があるという

紫苑(しおん)は、せき止め、去痰(きょたん)、利尿(りにょう)に用います。

慢性のせき、特に痰が多くて、つまり、喀出(かつしゅつ)してもすっきりしない場合や、痰に血が混じるような慢性気管支炎、肺結核などやかぜで長く、咳が止まらない場合に用います。

紫苑(しおん)の、含有成分サポニンが気道粘膜の分泌促進をして、痰が出やすくなります。
漢方での方剤には、止嗽散(紫苑(しおん)、百部(ひゃくぶ)、桔梗(ききょう)、荊芥(けいがい)を配合したもの)を用います。
紫苑(しおん)は、乾咳や口乾などの症状がある場合には用いません。

また、薬理実験では、紫苑(しおん)に含有される成分が、エールリッヒ腹水がんに対する、抗がん作用があることが証明されています。
エールリッヒ腹水がんには、紫苑(しおん)1日量3〜10グラムを水0.4リットルで煎じ、約2分の1量まで煎じて、1日3回食間に服用します。


その他
シオンは、中国北部と東北部、モンゴル、シベリア、朝鮮半島に分布。
日本には、古い時代に中国から朝鮮半島を経て薬草として渡来しましたが、花が美しいので薬草より観賞用として栽培が盛んになりました。
日本の古書「源氏物語」にも、シオンの名前が出ているので、平安時代には、すでに栽培されていたことがわかります。

シオンの名前の由来は、本草和名(ほんぞうわみょう/918)、和名抄(わみょうしょう/932)には、漢名紫苑(しおん)という記述があり、和名ノシとした
万葉集(まんようしゅう)ではオニノシコグサ、古今和歌集(こきんわかしゅう)ではシオニ、枕草子(まくらのそうし)や源氏物語(げんじものがたり)になってやっと和名シオンの名が出る
中国名紫苑は、ジワンと発音することから、転嫁してシオン、また、そのまま音読みにして、シオンという和名が生まれた

また、古名和名乃之(のし)という記述もあります。
別名では、秋の名月をシオンの花の間から眺めたとも思える、十五夜草(じゅうごやそう)という呼び名もあります。

日本には、九州や中国地方には野生化したシオンの自生状態があります。

シオンは、中国名・漢名の紫苑(しおん)で和名もそのままシオンですが、中国名でシソ科の別の植物をシオンともいい、キク科のシオンとは別のものです。