イブキトラノオ             (タデ科タデ属:多年草:草丈 〜80センチ:花期 〜8月)

薬効
解毒 消腫(しょうしゅ) 収斂(しゅうれん せき・たん 口内炎 抗菌
       
分布生育場所

科名:タデ科/属名:タデ属
和名:伊吹虎の尾/学名:Polygonum bistorta
山地で常に霧がかかるような湿地などに多く自生。北半球の湿地帯に広く分布。

新潟県などの一部の海岸地域に自生するエチゴトラノオ
トラノオの名がつく植物オカトラノオヌマトラノオ

タデ科タデ属タデ(ヤナギタデ)(柳蓼)
タデ科タデ属サクラタデ(桜蓼)
タデ科タデ属イタドリ(虎杖)

見分け方・特徴

茎は単一で直立して、高さ50〜80センチくらいになり夏、頂に太い円柱状の花穂をつけます。
花は小さく淡紅色で、花被は3〜4ミリで5深裂します。
雄しべ8個、雌しべ1個で葉は根生葉(こんせいよう)と茎生葉(けいせいよう)とあり、根生葉(こんせいよう)は長い柄があって皮針形(ひしんけい)で基部はやや芯型となり、ついで葉柄は狭い翼状になっています。

また、茎生葉(けいせいよう)は短柄で上部のものは一層短くなっています。
イブキトラノオの花穂に似たものに、ムカゴトラノオ、ナンブトラノオ、ハルトラノオなどがあります。
採集と調整
秋に根茎を掘り取って、ひげ根を除き水洗いしてから天日で乾燥させます。乾燥しにくい場合には輪切りにします。これを生薬の拳参(けんじん)といいます。
根茎は太くて堅く横向きに屈折していて、拳参のままの名前です。
薬効・用い方
拳参(けんじん)はタンニンおよびアントラキノン類を成分として、解毒、消腫(しょうしゅ)、収斂(しゅうれん)薬として下痢止めに用います。
また、鎮咳(ちんがい)、抗菌、抗腫瘍などの薬理報告が見られます。
拳参(けんじん)6〜10グラムを1日量として水0.4リットルを加えて煎じて約2分の1量に煮詰めて1日3回食前か食後に服用します。
また、口内炎には同様に煎じて冷ましてから、煎じ液でうがいをします。
中国の方剤には「七葉一枝花湯(しちよういっしかとう)」があります。この方剤とは七葉一枝花9グラム、金銀花9グラム、麦門冬(ばくもんどう)6グラム、青木香(せいもっこう)3グラムを煎じ服用するもので日射病、マラリア、流行性耳下腺炎(じかせんえん)などに消毒解熱薬とともに用いられます。
肺がんには、「七夏豆根湯(しちかずこんとう)」が試験的に用いられています。
これは、七葉一枝花根(しちよういっしかこん)30グラム、夏枯草(かごそう)30グラム、山豆根(さんずこん)30グラムを煎じ服用します。
その他
伊吹山1377メートルは岐阜県と滋賀県の境にあり、この地域では独立した山でしかも全山石灰岩から成ります。そのために好石灰植物が豊富です。また山麓には織田信長がポルトガル宣教師に命じて薬草園を開かせたことでも有名であり、昔から全山薬草の宝庫といわれてきました。
全山は草原と低木林からなり、特有の植物と多くの植物学者らによって早くから研究されたこともあって、伊吹山の名を冠した植物名が多くイブキトラノオもその一種です。
中国では、七葉一枝花(しちよういっしか)といい、毒蛇の咬傷に用いています。

毒蛇薬には多くの種類がありますが、このうちでは七葉一枝花(しちよういっしか)が主薬となっています。