頭痛
ズツウ
【英】headache
【独】Kopfschmerz
【仏】ce´phale´e
【ラ】dolor capitis
頭痛とは,頭部に感ずる疼痛の総称であり,日常の診療で最も多い訴えの一つである.頭部では,痛覚神経終末は,血管系(頭蓋外の動静脈,静脈洞,硬膜動脈,脳底部大動静脈),膜組織(腱膜,筋膜〔筋〕,骨膜,硬膜),皮膚,脳神経系(第V,IX,X脳神経)に分布しており,これらが刺激されることにより頭痛が生ずる.頭痛の種類はさまざまで,表のように1988年の国際頭痛学会の分類がよく用いられる.1~4が一次性頭痛であり,5~11が明らかな原因による二次性頭痛,12がいわゆる神経痛である.頻度としては片(偏)頭痛*
片(偏)頭痛 ヘンズツウ 【英】migraine 【独】Migra¨ne 【ラ】hemicrania 同義語:片頭痛型血管性頭痛vascular headache of migraine type
反復性の片側性,拍動性頭痛throbbing headacheで眼症状,運動感覚異常,情緒不安定,うつ状態,空腹などの前兆あるいは前駆症状,嘔気・嘔吐などの随伴症状を特徴とする.NIHのThe Ad Hoc Committeeによる分類(1962)では,片頭痛を, 1)典型的片頭痛, 2)普通型片頭痛, 3)群発頭痛*,
4)片麻痺性頭痛および眼筋麻痺性頭痛, 5)下半分頭痛lower half headacheの5型に分けている.国際頭痛学会の新分類(1988)では, 1)前兆のない頭痛, 2)前兆のある頭痛, 3)眼筋麻痺性片頭痛, 4)網膜動脈片頭痛, 5)小児周期性片頭痛, 6)片頭痛の合併症, 7)上記分類に属さない片頭痛,に分けている.新分類では,群発頭痛が片頭痛から独立した疾患として扱われている.新分類の“前兆のない片頭痛”,“前兆のある片頭痛”は,それぞれNIH分類の普通型片頭痛,典型的片頭痛に主として相当する.NIH分類では血管性頭痛*と筋収縮性頭痛tension headacheが合併した場合に対して,混合型頭痛という項目はない.片頭痛の発症機序については,血管説と神経説がある.血管説では,脳血管の収縮によって閃輝暗点*などの前兆が生じ,その後血管が拡張するときに頭痛が起こるとする.しかし,頭痛期から,かなり遅れて脳血流が増加することもある.神経説(spreading depression theory)では,前兆期に後頭葉から前方に脳機能の低下が進行し,二次的に脳血流〔量〕*が低下するとするものであるが,頭痛期における脳血流の増加を説明しえない.治療には,従来からエルゴタミン製剤が用いられている.最近,片頭痛発作後,血小板のセロトニン(5‐HT)濃度が低下し,セロトニンの代謝産物である5‐HIAAの尿中濃度が増加し,セロトニンの静注により,頭痛が改善することが知られてきた.脳血管の収縮に関与する5‐HT1受容体に選択的に作用するスマトリプタンが開発されつつある.NIHはNational Institute of Health(アメリカ国立衛生研究所)の略.→頭痛 |
など一次性の機能的なものが多いが,脳腫瘍,脳血管障害など重篤な病態を含む多数の器質的疾患が原因となりうる.なお,眼,耳,鼻,歯,頚椎などの顔面頭蓋や頚部の疾患でも,関連痛*referred pain
関連痛 カンレンツウ 【英】referred pain
広義には,実際に原因のある部位から離れたところに感ずる痛みをいう.例えば,狭心症のとき,左肩から左上肢に痛みが放散する(放散痛radiating pain)こと.狭義には,内臓とくに腹部内臓病変のあるときに内臓痛visceral painが同一脊髄分節の皮膚(デルマトーム;皮膚分節)にも痛みをきたすことで,Headの知覚過敏帯hyperesthetic zoneや腹壁緊張を伴う.連関痛ともいわれる.→痛み,頭痛,腹痛
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としての頭痛を生じうる.
→表