ステロイドホルモン
【英】steroid hormone
【独】Steroidhormon
【仏】hormone ste´roi¨dienne
ステロイドとはシクロペンタノフェナトレン環を共通の母核として有する天然物の総称であるが,副腎皮質,性腺から分泌されるホルモンはこのような化学構造を有し,一括してステロイドホルモンと称される.その基本的分類としてプレグナンpregnane,アンドロスタンandrostane,エストランestraneの3種があり,副腎皮質から分泌されるグルココルチコイド,ミネラルコルチコイド*,および主として黄体,胎盤から分泌されるプロゲステロン*はプレグナンに,精巣(睾丸),副腎皮質から分泌されるアンドロゲンandrogenはアンドロスタンに,卵巣から分泌されるエストロゲン*はエストランに属する.これらステロイドホルモンの生合成は,臓器は異なっても,すべてがコレステロールに始まり,特定の酵素が順序立って作用する共通の過程を経て産生される.その調節は,下垂体からの刺激ホルモンがコレステロールからプレグネノロンへの最初の過程を律速することにより行われる.ステロイドホルモンは,血中では大部分が血漿タンパクと結合し,一部が遊離して存在するが,結合型にはホルモン作用がなく,遊離型のみがホルモン作用を有する.作用機序は,標的器官の細胞内に取り込まれ,場合により変換,活性化され,核内に存在する特異的なレセプターと結合し,これにより新規の(de novo)タンパク生合成を刺激することによると考えられている.代謝は,主として肝により行われ,グルクロン酸ないし硫酸抱合型として尿中に排泄される.また,脂肪組織などの末梢組織ではアンドロゲンの一部がエストロゲンに変換される.