立体異性体
リッタイイセイタイ
【英】stereoisomer
【独】Stereoisomer
【仏】ste´re´o‐isome`re
分子内の原子,原子団の結合順序は同一であるが,その空間的配置の異なる異性体*. 1)幾何異性体geometric isomer:炭素間二重結合もしくは脂環式化合物であるため炭素原子の自由回転が妨げられて生ずるcis‐,trans‐異性体,これを炭素‐窒素原子間二重結合に応用したsyn‐, anti‐異性体,π結合をもつ一般化合物に拡張したE‐,Z‐異性体などがある. 2)光学異性体*:化学的・物理的性質が同じで旋光性のみが異なるd‐,l‐体,鏡像関係にある鏡像異性体(エナンチオマー*;対掌体),複数の不斉炭素asymmetric carbonが存在することによって生じた光学異性体で,鏡像関係でないものをさすジアステレオマー*,また1つの不斉炭素の立体配置のみが異なる場合のエピマー*などがある.アミノ酸などで慣用的に用いられるD‐,L‐体はグリセルアルデヒドの旋光性と原子団の立体配置を基準として拡張したものであるが,実際の旋光性とD‐, L‐体との対応がなく,トレオニンなどではグリセルアルデヒドを基準とした場合とセリンを基準とした場合でD, Lが逆転するなど実用上の問題点も多い.そこで現在では不斉中心の絶対配置を表す方法として,R‐,S‐表記法も用いられている. 3)配座異性体(コンホーマー;回転異性体):単結合のまわりの回転によってその結合の両端の原子や置換基の相対的位置に2通り以上の安定な配座が存在するとき,各配座に相当する異性体を想定することができる.シクロヘキサン環のいす形と舟形や,いす形間での反転によるaxial‐equatorial形などがその例である.