血小板機能異常症
ケッショウバンキノウイジョウショウ
【英】platelet dysfunction
【独】Thrombozytenfunktionsdefekt
【仏】thrombopathie
血小板の主要な機能を,粘着能,凝集能,放出能と大別すれば,これらのいずれかに障害を認め,出血症状の発現に直接の原因となっているものをいう.粘着能異常の代表例として,ベルナール・スリエ症候群*Bernard‐Soulier syndromeがある.BernardとSoulierにより1964年報告された.常染色体性劣性遺伝を示す出血傾向で,出血時間の延長,巨大血小板*の存在が特徴的で時に血小板減少を呈する.機能上,コラーゲンなどとの粘着能が低下しており,膜糖タンパクGPIbが減少,欠損していることとの関連が示唆されている.すなわち粘着には,血小板と他の細胞や,異物表面(界面)との接着に際し,介在する接着タンパクが必要で,フィブリノーゲン*,フィブロネクチン*とともにフォン ウィレブランド因子が重要視されている.これら接着タンパクの特異部分を認識するレセプター機能が,GPI上にあるものと推測されるに至った.凝集機能異常としては血小板無力症*thrombasthenia(Glanzmann, 1918)があり,出血時間の延長,血餅退縮の欠落などの特徴的な異常を呈すが,その原因は,血小板膜糖タンパク(GPIIb/IIIa)の欠損のためとされている.血小板に刺激が加わるとGPIIb/IIIa複合体が形成され,Ca2+の存在下でフィブリノーゲン(フィブロネクチン)などの接着タンパクを結合して,血小板血栓を形成する(凝集反応).本症はフィブリノーゲンレセプターと考えられているGPIIb/IIIaの欠損に基づく血小板機能異常症として理解されている.放出反応異常としてはいろいろな生化学的背景をもつものが報告されつつある.大別して放出顆粒の欠損しているもの(ヘルマンスキー・パドラック症候群Hermansky‐Pudlak syndrome),顆粒の分泌機能そのものに障害のあるもの(PG代謝異常,Ca動員障害など)がある.これらの病気はまれではあるがその病態の解明は,正常の血小板機能そのものの理解に貢献し,臨床的にも血栓症の予防法の確立と薬物の治療効果判定の指標として役立っている.