原子核
ゲンシカク
【英】atomic nucleus
【独】Atomkern
【仏】noyau atomique
物質の物理化学的な単位は原子で,原子は原子核とその周囲をとりまく電子*electronとから構成される.原子核は正の電荷をもち,原子全体の大きさからいうと小さい粒子で直径10-13cm,電子は負の電荷をもち,電子自体の直径もおよそ10-13cm,電子の軌道運動の広がりは約10-8cm,これが原子の大きさでもある.原子核は原子の中心にあって原子の質量の大部分を占めている.原子核は陽子*protonと中性子*neutronからなっており,これらの粒子を核子nucleonと呼ぶことがある.陽子は電子の電荷と絶対値が等しく符号が反対の正の電荷をもっている.つまり,核外の軌道電子の数,すなわち原子番号atomic numberに等しい数の陽子が原子核中に存在する.軌道電子の数が化学的性質を決める.したがって,原子は全体としては一般に電気的に中性である.原子核の中の陽子と中性子の数の和を質量数mass numberと呼ぶ.質量数をA,陽子数をZ,中性子数をNで表せば,A=Z+Nとなる.核内の陽子と中性子数によって分類された原子を核種*と呼ぶ.元素は同じ(すなわちZは同じ)でも,質量Aの異なる核種を同位体(同位元素,アイソトープ*isotope),Nが等しい核種を同中性子体isotone,Aが等しい核種を同重体isobarと呼ぶ.陽子と中性子が等しい数である場合が比較的安定で,一方の数が多くなると不安定となり,放射線を出して安定な原子核となる.一般に重い元素は不安定で,鉛より重い原子核はいずれも放射能を有する.人工的に不安定とした原子核が人工放射性元素artificial radioactive isotopeである.