悪性化増殖因子
アクセイカゾウショクインシ
【英】transforming growth factor(TGF)
→増殖抑制因子
増殖抑制因子
ゾウショクヨクセイインシ
【英】growth‐inhibiting factor
同義語:成長抑制因子
神経および表皮増殖因子(インスリン様増殖(成長)因子
インスリンヨウゾウショクインシ
【英】insulin like growth factor(IGF)
インスリン様成長因子(IGF)にはIGF‐I,およびIGF‐IIの2種類が存在する.いずれも分子量約7,500のペプチド*(ペプチドペプチド
【英】peptide
【独】Peptid
【仏】peptide
2またはそれ以上のアミノ酸*(アミノ酸
アミノサン
【英】amino acid
【独】Aminosa¨ure
【仏】aminoacide, acide amine´
タンパク〔質〕*(光学異性体
コウガクイセイタイ
【英】optical isomer
【独】optisches Isomer
【仏】isome`re optique
立体異性体*の一つで,旋光性以外の物理的化学的性質は同じであるような異性体をいう.光学異性体は,その分子またはイオンが不斉の立体構造をもつとき(すなわち第2種の対称要素である対称心・鏡映面・回反軸を欠くとき)存在し,有機化合物や金属錯体に広く認められる.光学異性体をその化学構造から分類すると, 1)分子内に不斉原子をもつもの, 2)分子不斉となっているもの,の2つに分けられる. 1)の不斉原子としては,不斉炭素原子*がよく知られているが,ほかの4価の原子(N, S, Se, Sn, Si, Pなど)や6個の配位子をもつ金属原子も不斉原子となりうる.これらの原子は互いに相異なる4個(金属錯体では6個)の原子または原子団(配位子)を結合するとき不斉原子となる.しかし,図(III‐3)のような化合物では,その構造が対称形であるため旋光性を失う. 2)の分子不斉とは,分子全体としての構造上旋光性の原因となる非対称性を生じるような分子をいう.→エナンチオマー(エナンチオマー
エナンチオマー
【英】enantiomer
【独】Enantiomer
同義語:鏡像異性体,対掌体antipode
光学異性体*のうち, 互いに鏡像関係となっている化合物の1対をさす.このような化合物のどちらか一方のみが存在する溶液は,光の偏光面を回転させる性質(旋光性optical rotatory power)を示し,偏光面を右に回転させる性質をもつ化合物を右旋性化合物あるいはd体,左に回転させるものを左旋性化合物あるいはl体という.d体とl体では,旋光性以外の物理的,化学的性質は同じであるが,生理的作用は両者で異なる場合が多い.→ジアステレオマー)(ジアステレオマー
ジアステレオマー
【英】diastereomer
【独】Diastereomer, Diastereoisomer
【仏】diaste´re´o‐isome`re
立体異性体*の一つ.1つの分子中に2個以上の不斉中心が存在する場合,光学異性体であるが互いにエナンチオマー*(鏡像異性体,対掌体)となっていないような化合物をジアステレオマーと呼ぶ.エナンチオマーとは異なり,ジアステレオマーでは旋光度以外の物理的,化学的性質も異なる場合があり,この性質の差を利用して異性体を分離することができる.図のような2個の不斉炭素原子*をもつCabc‐Cdef化合物では(1)~(4)のような光学異性体*が存在し,(1)と(2),(3)と(4)は互いに鏡像関係にあるエナンチオマーであるが,(1)と(3),(1)と(4),(2)と(3),(2)と(4)はジアステレオマーである.→エピマー
→図)
→図
)を構成しているのがアミノ酸であり,20種類存在する.これら20種類のアミノ酸がいろいろな配列をするため,多種多様なタンパク質が形成される.各アミノ酸に共通する構造は,1個の炭素原子にアミノ基とカルボキシル基が1つずつと,さらに水素1個と側鎖が結合していることである.このためその炭素(α位)は不斉炭素となって光学的にL‐体,D‐体の2種類の異性体を生じるが(→光学異性体),高等生物に存在するのはすべてL‐体である.タンパク質では構成単位の各L‐アミノ酸のαアミノ基とαカルボキシル基がアミド結合(ペプチド結合peptide linkage)をして重合している.各アミノ酸は少なくとも1個ずつのアミノ基とカルボキシル基をもつため,両性電解質*である.さらに側鎖がもつ電荷により,中性,酸性,塩基性に分類される.中性アミノ酸としてグリシン,アラニン,セリン,トレオニン☆,バリン☆,ロイシン☆,イソロイシン☆,システイン,メチオニン☆,フェニルアラニン☆,チロシン,プロリン,トリプトファン☆,アスパラギン,グルタミンがあり,酸性アミノ酸にはアスパラギン酸とグルタミン酸があり,塩基性アミノ酸にはアルギニン☆,リジン☆およびヒスチジン☆がある.各アミノ酸は生体内においてアミノ酸プールamino acid poolを形成して,タンパク質合成や生理活性物質合成に利用される.アミノ酸のうち8種(小児では10種)は生体内で合成されず食物から摂取する必要があるため,必須アミノ酸*essential amino acids(☆印)と呼ばれる.またアミノ酸は種々の生理活性物質の前駆体*でもあり,例えばチロシンから甲状腺ホルモンやカテコールアミンが,トリプトファンからNAD+やセロトニンが,グリシンからヘムおよびプリン塩基が,アスパラギン酸からピリミジン塩基が,さらにアルギニンからポリアミンなどが合成されている.
→図)がペプチド結合(アミノ酸のカルボキシル基と別なアミノ酸のアミノ基間の共有結合)で結合したもの.アミノ酸数10以下のものをオリゴペプチドoligopeptide,10以上100以下のアミノ酸で構成されるものをポリペプチド*polypeptideと呼ぶ.直鎖状のものと環状ペプチドがある.アミノ酸と同様ニンヒドリンで青紫色を呈するが,アミノ酸とは異なりビウレット反応*は陽性である.またタンパク質とは異なり透析性である.生物界に広く存在し生物活性をもったもの,例えばホルモン(オキシトシン,バソプレシン,アンギオテンシンなど),微生物が産生する抗生物質(ペニシリン,グラミシジン,ポリミキシンなど.これらは環状ペプチドが多い),有毒なメリチンmelittin,解毒などに利用されるグルタチオンなど数多く見出されている.名称は構成アミノ酸のうちカルボキシル基がペプチド結合に関与するものの語尾に‐ylをつけ,例えばglycyl‐histidyl‐alanineのように呼ぶ.略記する場合はGly‐His‐Alaとする.)で,構造はプロインスリン*proinsulinに類似し,弱いインスリン作用を示す.IGF‐IはソマトメジンC somatomedin Cと同一の物質である.両者は種々の組織で産生されるが主要な産生部位は肝である.血中では大部分がIGF結合タンパク(IGFBP),とくにIGFBP‐3と結合して存在する.IGF‐Iの産生は主に成長ホルモン*(GH)による制御を受け,GH分泌低下症では血中濃度が低下,逆にGH分泌過剰症では高値を示す.また低栄養状態でも産生が低下する.血中濃度は乳幼児期には低値であるが,年齢とともに増加し,思春期には最大となる.以後低下して,成人では100~200 ng/mLの血中濃度を示すが,高齢者では低下する.IGF‐Iは各種細胞の増殖を促進し,GHのもつ骨成長作用の大部分はIGF‐Iを介する.実際にIGF‐Iの投与は成長を促進する.また,IGF‐Iは各種細胞の分化機能発現にも促進的に作用し,GH分泌に対しては抑制的に作用する.IGF‐Iの作用はIGF‐I受容体(タイプI受容体)との結合によって発現する.受容体はインスリン受容体と類似しておりチロシンキナーゼ活性を有する.一方,IGF‐IIの産生におけるGHの役割は少なく,GH欠損症でも血中濃度は軽度の低下にとどまり,GH過剰症の値は健常人と差はない.低血糖を示す膵外性腫瘍の患者の多くでは,血中濃度が高くかつ正常のIGF‐IIよりも分子量が大きい(10~16 kDa).低血糖の発症にはこのIGF‐IIのもつインスリン様作用が関与すると考えられる.IGF‐IIの生理的意義は不明な点が多いが,胎児期の成長に必要と考えられる.in vitroの作用はIGF‐Iとほぼ同様である.IGF‐II受容体はmannose 6‐phosphate(Man‐6‐P)受容体と同一である.しかし,IGF‐IIの細胞増殖作用の大部分はIGF‐I受容体との結合を介して発現すると考えられる.→ソマトメジン)の発見以来,生体内細胞の増殖,分化に働くポリペプチド性の多数の成長促進growth promotingおよび抑制inhibiting因子が分離され,両者の正,負の調整機序に強い関心が寄せられてきた.前者の促進因子としては悪性化増殖因子transforming growth factor(TGF),インスリン様増殖因子*(線維芽細胞増殖因子
センイガサイボウゾウショクインシ
【英】fibroblast growth factor(FGF)
線維芽細胞*fibroblastの増殖を促進する因子として脳から抽出されたためFGFと名づけられた.その後,類似の構造と作用を有する因子が,次々に発見され,現在では9種類が知られている.最もよく知られているものはbasic FGF(FGF‐2)である.FGFはいずれも分子量19,000前後のペプチド*で,ヘパリンに親和性を有するのが特徴である.線維芽細胞のみならず,多数の細胞,とくに血管内皮細胞に対する強力な増殖因子である.中枢神経系では神経細胞の機能調節にも関与しているらしい.その他,各種組織に広く存在しているが,生理的意義には不明な点が多い.健常人血中には検出できないが,下垂体腫瘍(下垂体部腫瘍*pituitary tumor)患者ではbasic FGF血中濃度が増加する.腫瘍患者では尿中排泄量も増加する.),線維芽細胞増殖因子*(線維芽細胞増殖因子
センイガサイボウゾウショクインシ
【英】fibroblast growth factor(FGF)
線維芽細胞*fibroblastの増殖を促進する因子として脳から抽出されたためFGFと名づけられた.その後,類似の構造と作用を有する因子が,次々に発見され,現在では9種類が知られている.最もよく知られているものはbasic FGF(FGF‐2)である.FGFはいずれも分子量19,000前後のペプチド*で,ヘパリンに親和性を有するのが特徴である.線維芽細胞のみならず,多数の細胞,とくに血管内皮細胞に対する強力な増殖因子である.中枢神経系では神経細胞の機能調節にも関与しているらしい.その他,各種組織に広く存在しているが,生理的意義には不明な点が多い.健常人血中には検出できないが,下垂体腫瘍(下垂体部腫瘍*pituitary tumor)患者ではbasic FGF血中濃度が増加する.腫瘍患者では尿中排泄量も増加する.)などがあげられ,後者の抑制因子としては癌壊死因子tumor necrosis factor(TNF*), cachectin,インターフェロン*interferon,(下垂体部腫瘍
カスイタイブシュヨウ
【英】pituitary tumor
【独】Hypophysentumor
【仏】tumeur hypophysaire
同義語:トルコ鞍部腫瘍sellar tumor
下垂体およびその近傍に発生する腫瘍の総称.全頭蓋内腫瘍の約20%をしめる.大部分は,下垂体前葉から発生する良性な下垂体腺腫である.まれに腺腫が遠隔転移を起こす悪性像を呈する下垂体癌が存在する.下垂体前葉以外のトルコ鞍内組織から発生するものに,後葉から発生する神経膠腫*,顆粒膜細胞腫瘍*granular cell tumorがある.このほかに下垂体柄部に存在する扁平上皮から発生する頭蓋咽頭腫*は,下垂体腺腫に次いで,この部に多い腫瘍である.これらの腫瘍の他に下垂体近傍に発生する腫瘍としては,鞍結節部および蝶形骨縁内側より発生する髄膜腫*,視神経膠腫,鞍上部胚芽腫,奇形腫*,類皮腫,類上皮腫,脊索腫*などがあり,また蝶形骨洞や鼻咽頭癌の浸潤,他臓器からの転移がみられる.下垂体部腫瘍は,剖検時に偶然発見されることもあるが,臨床症状を呈する場合は,視神経,視交叉の圧迫,浸潤による視力・視野障害および下垂体・下垂体柄・視床下部の圧迫・浸潤による内分泌機能障害がみられる.このほかに頭蓋内圧亢進症状,脳神経障害もみられる.下垂体近傍には,新生物以外に巨大動脈瘤,粘液嚢腫,クモ膜嚢胞,ラトケ嚢胞が発生し臨床症状を呈することがある.〔治療〕 それぞれの腫瘍の病理組織により異なるが,腫瘍の摘除が原則となる.この部の腫瘍では,手術後に視床下部・下垂体系の内分泌障害が残ることが多く,内分泌補充療法が重要である.→下垂体腺腫)オンコスタチンM oncostatin Mなどが,とくに腫瘍の増殖抑制を期待して研究努力が払われている.しかし,その本質的機序,効果に関しては依然未確認の点が多い.これらの抑制因子はリンパ球*,マクロファージ*(マクロファージ
マクロファージ
【英】macrophage
【独】Makrophagen
【仏】macrophage
同義語:大食細胞,大食球,貪食球
貪食能(食作用*)を有する大型細胞で,全身臓器組織に広く分布する.通常は炎症局所などに遊走してくる球状のfree macrophageをさす場合が多い.正常ではリンパ節*や胸腺*に多く,また肝のクッパー細胞や脾,リンパ節,骨髄などの細網細胞と近縁にある(mononuclear phagocyte system).肺胞に出たものを肺胞マクロファージalveolar macrophage,腹腔内に出たものを腹腔マクロファージperitoneal macrophageと呼ぶ.炎症局所などでは分裂により数を増すが,骨髄から出て血中に入った単球*が血管外に出てマクロファージになると信じられている.形態はその機能相により異なるが,一般的にやや小型円形核と豊富な細胞質を有し,電顕的には広い細胞質内にリソソーム*と,多様な貪食空胞の存在や発達した細胞膜微絨毛などを特徴とする.機能的には細菌などの外来性の異物,生体内の老廃物を貪食,消化する.また抗原物質を取り込んで,抗原情報をリンパ球*(リンパ節(腺)
リンパセツ
【英】lymph node, lymph gland
【独】Lymphknoten, Lymphdru¨se
【仏】ganglion lymphatique
【ラ】lymphonodus
リンパ管の走行中に介在する直径1~3cmのソラマメ形のリンパ性器官で成人で,300~600個存在する.リンパ節の陥凹部を門hilusと呼び,血管や数本の輸出リンパ管の通路となり,対側の凸部から数十本の輸入リンパ管が進入する.リンパ節は結合〔組〕織性の被膜で包まれ,被膜は実質内へ梁柱として侵入する.リンパ節の実質(リンパ髄)は辺縁部の皮質と中心部の髄質とに分けられ,いずれも細網組織の網目に自由細胞であるリンパ球が埋まったものである.皮質の表層(外皮質)ではリンパ球が密集してリンパ小節*を作り,その中央部には明るい胚中心*(明中心)がみられる.この胚中心で抗体およびリンパ球の産生が行われている.皮質の内層(内皮質)は結節性リンパ組織を形成せず,すべて拡散性リンパ組織である.内皮質は皮質傍帯paracortical areaともいわれ,胸腺由来のTリンパ球の定着する場所である.髄質はすべて拡散性リンパ組織の索,すなわち髄索medullary cordで構成される.輸入リンパ管は被膜直下の辺縁洞に入り,そこから梁柱周囲の中間洞,そして中心付近の髄洞を経て輸出リンパ管となってリンパ節の門を出る.これらリンパ洞はリンパの流路であり,その内皮は扁平な細網細胞*(沿岸細胞)からなり,洞内に存在する大食細胞によってリンパの異物,細菌,老朽リンパ球などが貪食,除去される.)に伝える抗原提供細胞として働くほか,リンパ球の出すリンホカイン*によって活性化し,標的細胞破壊など細胞性免疫の効果細胞(奏効細胞*)として働く.→組織球)などの正常細胞の産生物質として分離されたものであるが,最近ではヒト悪性化細胞系自体の産生する抑制因子が培養滲出液中から分離され,新しい展開がはかられている.