赤いおむつ症候群
アカイオムツショウコウグン
【英】red diaper syndrome
赤いおむつ症候群は,青いおむつ症候群*(インジカン尿:インジカンが空気に接しインジゴブルーに変化しおむつに青いしみができる)に対して名づけられたものであるが,一つの病気ではなく,夏場や暑熱時の尿酸塩が尿より析出して赤褐色のしみがおむつにできたりすることや,ポルフィリン尿症,ミオグロビン尿症あるいは血色素尿症(ヘモグロビン尿症*),さらには血尿*などにより,おむつに赤い系統の色調のしみがつくことをさす.レッシュ・ナイハン症候群*Lesch‐Nyhan syndromeは,尿酸尿uricosuriaによる赤いおむつ症候群を呈する代表的疾患の一つである.
高カルシウム血症
コウカルシウムケッショウ
【英】hypercalcemia
【独】Hyperkalza¨mie
【仏】hypercalce´mie
血清カルシウムが正常上限を超える血清カルシウム値をみる場合をいう.正常上限は10.1mg/dLであり,常に10.3mg/dL以上であれば高カルシウム血症を疑い,10.5mg/dL以上であれば確実である.イオン化カルシウムは血清総カルシウムの約47%を占めるが,臨床的にはイオン化カルシウムの変動が問題で,5.0mg/dL以上が高カルシウム血症に相当する.血清タンパクのうち,グロブリン*もカルシウムを結合するのでグロブリンが増加する骨髄腫で,総カルシウム上昇の一因となる.悪性腫瘍に伴うものがもっとも多く,原発性副甲状腺機能亢進症*がこれにつぐ.その他,副腎不全,甲状腺機能亢進症*,サルコイドーシス*,不動性骨粗鬆症,ビタミンD中毒などが原因となる.悪性腫瘍に伴うものを悪性高カルシウム血症という.腎濃縮障害により口渇,多飲,多尿,尿中カルシウム増加,腎結石,消化器症状として悪心,嘔吐,神経症状として不安神経症状より昏睡にいたる種々段階の症状,心電図QT短縮,不整脈,ショックなどをみる.
グロブリン
グロブリン
【英】globulin
【独】Globulin
【仏】globuline
アルブミン*とともに動植物界に広く分布している単純タンパク質一群の総称.分子量は15万あるいはそれ以上.各アミノ酸をほぼ一様に含み弱酸性を示す.アルカリ性または中性の希薄な塩類溶液に溶け,熱で凝固する.元来は50%飽和の硫酸アンモニウムで塩析される血清タンパク質の総称で,このうち蒸留水に不溶で33%飽和の硫酸アンモニウムで塩析されるものを真性グロブリンeuglobulin(オイグロブリン*),蒸留水にも可溶なものを偽性グロブリンpseudoglobulinと呼んでいたが,電気泳動の発達とそれぞれの分画の機能が明らかになるにつれてこれらの定義は本質的な意味を失っている.動物性グロブリンとしては血漿中の血清グロブリンやフィブリノーゲン,牛乳中のラクトグロブリン,卵白中のオボグロブリン,水晶体中のクリスタリンなどがよく知られている.血清グロブリンは電気泳動でα1,α2,β,およびγの4分画に分離され病態解析にも利用されている.γ分画とβ分画の一部は免疫機構に関係する抗体を含む.植物性グロブリンとしては大麻のエデスチン,大豆のグリシニン,インゲンマメのフォセオリン,エンドウマメのビシリン,落花生のアラキンなどがよく知られている.
青いおむつ症候群
アオイオムツショウコウグン
【英】blue diaper syndrome
同義語:トリプトファン吸収不全症tryptophan malabsorption syndrome
おむつの青い着色によって発見されたトリプトファン吸収障害による疾患.発育障害,くり返す感染,原因不明の発熱,不機嫌,便秘などの症状,高カルシウム血症*,腎機能障害が認められている.尿中にはインジカンと多量のインドール化合物の排泄が見出される.これは腸管でのトリプトファン吸収障害があり,腸内細菌によりインドール化合物に転化し,吸収されたものであり,おむつの青色はインジゴブルー(インジカン尿indicanuria)によるものと考えられる.
副甲状腺ホルモン
フクコウジョウセンホルモン
【英】parathyroid hormone(PTH)
【独】Parathyreoidhormon
【仏】hormone parathyroi¨dienne
同義語:上皮小体ホルモン,パラソルモンparathormone
副甲状腺ホルモン(PTH)は副甲状腺*によって合成され,血中に分泌されるペプチドホルモンpeptide hormoneである.84個のアミノ酸が単一鎖を形成する.前駆体のプロ‐PTHはN末端に6個のアミノ酸を有し,その前駆体であるプレプロ‐PTHはN末端にさらに25個のアミノ酸を有している.プレプロ‐PTHの遺伝子は2ヵ所にイントロンを有している.粗面小胞体*においてプロ‐PTHが合成され,ゴルジ装置(内網装置*)において分泌顆粒*を形成する.分泌顆粒中に副甲状腺分泌タンパク(PSP,分子量15万)を含む.PTHの一部は活性を有し,35個のアミノ酸からなるn‐PTHとそれ以外のc‐PTHに分離される.血中にはプロ‐PTH, m‐PTH, n‐PTH, c‐PTHなどが存在する.低カルシウム血症*,低マグネシウム血症*,ヒスタミン*などが分泌刺激であり,高マグネシウム血症*,シメチジンは分泌抑制作用を有する.PTHは標的器官においてアデニルシクラーゼ系を介して作用を発現する.骨においては破骨細胞*を増加させて骨吸収を促進する.骨に対してはリン再吸収抑制,カルシウム再吸収促進,25位水酸化ビタミンD‐1α水酸化酵素の活性化促進などの作用がある.
ヘモグロビン尿症
ヘモグロビンニョウショウ
【英】hemoglobinuria
【独】Ha¨moglobinurie
同義語:血色素尿症
赤色あるいは赤褐色調の尿が認められ,その成分がヘモグロビン*由来である場合をいう.病因は,赤血球の血管内破壊による溶血に起因する.赤血球自体の異常による場合の代表としては,グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素欠乏症(先天性病因)や発作性夜間ヘモグロビン尿症*(後天性病因)などがよく知られており,一方,血漿側に主因がある実例としては,冷式抗赤血球抗体による自己免疫性溶血性貧血*がある.本症では腎不全*を生じやすく,腎庇護療法が大切であるが,原病因の治療も重要である.
血尿
ケツニョウ
【英】hematuria
【独】Ha¨maturie
【仏】he´maturie
血尿は,重要な臨床症状の一つであり,症状の一つに血尿をみる疾患は多岐にわたっている.また血尿は,肉眼的血尿gross hematuriaと顕微鏡的血尿microscopic h.に大別され,さらに症状を伴った血尿symptomatic h.と,無症候性血尿*asymptomatic h.とに分けられる.とくに近年,尿スクリーニングとして潜血反応試験紙が汎用されるようになり,無症候性顕微鏡的血尿asymptomatic microscopic h. がしばしば発見されている.しかし血尿であることの確定診断は,実際に鏡検することが必要である.血尿は尿路のどこかからの出血を意味するわけで,出血部位により腎性血尿renal h.とか膀胱性血尿*vesical h.(膀胱出血)などと呼ばれる.腎からの出血は,急性糸球体腎炎*,IgA腎症*,特発性腎出血,腎腫瘍*,腎盂腫瘍*,腎結石*などが主なものであり,尿管からの出血は尿管結石や尿管腫瘍*が,膀胱からの出血は,膀胱腫瘍*,出血性膀胱炎,膀胱結石*,急性膀胱炎*などがあげられ,尿道からの出血は,尿道損傷や尿道腫瘍*,尿道結石などがあり,さらに前立腺由来の血尿には,前立腺肥大症*や前立腺癌*などがある.尿管と下部尿路よりの血尿は,主として泌尿器科領域の疾患である.このほか,スポーツやDICや薬剤に起因した血尿などもある.〔治療〕 いずれも原疾患に対する治療を行うが,原因不明の場合は,血管強化薬,抗アレルギー薬,抗プラスミン薬,止血薬,消炎薬などを用いる.
レッシュ・ナイハン症候群
レッシュナイハンショウコウグン
【英】Lesch‐Nyhan syndrome
【独】Lesch‐Nyhan Syndrom
ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼhypoxanthine guanine phosphoribosyl transferase(HGPRT)の先天的障害で起きる伴性劣性遺伝疾患である.乳児期後半より始まる錐体外路性の不随意運動,高尿酸血症*,高尿酸尿症*,幼児期以後に始まる自傷*行為が出現する.精神発達はしだいに遅れるが周囲への関心は保たれる.尿路結石,腎機能障害も生じる.血球や培養線維芽細胞によりHGPRTの欠損を証明することができる.