キハダ (ミカン科キハダ属:落葉性高木:樹高 〜25メートル:花期 〜6月)
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薬効 |
下痢 |
打撲傷(うちみ) |
健胃 |
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分布生育場所 |
科名:ミカン科属名:キハダ属
和名:黄膚/学名:Phellodendron amurense
日本全土の山地の落葉広葉樹林帯に多く自生。
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見分け方・特徴
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キハダは、幹の直径が1メートルをこすものもあり、落葉性の高木です。樹皮の最外層には、厚い淡黄色のコルク質が発達していて寒い地方ほど厚くなっています。コルクの内側には皮部があり、これも厚く鮮黄色をしています。
葉は対生する奇数羽状複葉で、小葉は6〜7枚、長さ10センチ程の長楕円形をしています。
キハダの木は、雌雄異株で初夏に黄緑色の小花を多数つけた円錐花序を枝先につけますが、あまり目立ちません。
果実は球形で始めは、緑色で熟すると黒色に変化します。精油を多く含み。特異臭があります。
キハダの種類には、日本産のオオバノキハダ、ヒロハキハダ、ミヤマキハダがありますが、中国にはシナキハダ、タイワンキハダがあります。 |
採集と調整 |
最も地上部の生育が盛んな梅雨期に樹皮をはぎます。根から水分を吸い、枝から葉部に多量に水が送られる時期は、コルクと内皮もはがれやすいので、この時期が採取には最適です。
コルク層を取り除いた内皮は日干しにして乾燥させます。
これを生薬で黄柏(おうはく)といいます。
この時期を逸して、秋から初春にかけての活動の停止時期は、コルクと内皮がはがれなくなり、コルク層を取り除くことが非常に難しくなります。
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薬効・用い方 |
キハダの内皮を乾燥した黄柏(おうはく)の、黄色は含有されるアルカロイドの一種ベルベリンによるものです。
数十年まえに、キノホルムの薬害によるスモン病が問題になりましたが、その後、腸内の殺菌作用があり、下痢止めの効果のあるベルベリンがスモン病の患者に用いられるようになりました。
キハダのベルベリンの含有量は、寒い地方のキハダより、暖かい地方のキハダの方が多く、最もベルベリンの含有量の多いキハダは、タイワンキハダになります。
黄柏(おうはく)は、すぐれた苦味健胃整腸剤として唾液、胃液、すい臓、胆汁の分泌を促進して、食欲を高め、消化を助けて腸内殺菌効果を表します。また、外用消炎薬としても用いられています。
健胃、下痢止めには煎液は苦味が強いので、一般に粉末にして用います。黄柏(おうぱく)の粉末を1回1グラム、1日3回食後に服用します。
打撲傷には、黄柏の粉末に食酢を加えて、パスタ状によく練り、患部に直接塗ってガーゼを当てて乾いたら新しく取り替えるようにします。
キハダの主成分は、イソキノリンアルカロイド(ベルベリンを含む)、セスキテルペンラクトン、ステロールを含み、アルカロイドの作用により抗菌、抗生作用を有します。
栽培:播種(はしゅ)するにあたり、果皮を取り十分水洗いして表面の精油分を洗い去る必要があります。種子を砂の中に混ぜて、よくかき混ぜ、種子に傷をつけてから播くとよく発芽します。
秋に播種して翌春に発芽しますが、1年遅れて翌々年に発芽する場合もあります。土質は、排水がよく肥沃な土地がよく、さし木での栽培もできます。
キハダは、萌芽(ほうが)の性質が強く、キハダをきる場合は、やや土面より上で切り倒すようにすると、萌芽するので、適当な幹を残しても20年程度の育林が必要です。
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その他 |
内皮を乾燥させて、生薬の黄柏(おうはく)にしますが、今日でも重要な医薬品のひとつで日本薬局方にも入っています。
この水製エキスで、市販されている「陀羅尼助(だらにすけ)」、「お百草(ひゃくそう)」、「練熊(ねりぐま)」などの健胃整腸剤が作られて、胃腸や腹痛の妙薬として、または、打ち身、神経痛、リューマチなどの外用薬として古くから用いられていました。
このなかでも、陀羅尼助(だらにすけ)は奈良県吉野郡洞川(どうがわ)のものが有名です。
江戸時代の狂歌作者大田蜀山人(おおたしょくさんじん)は「一話一言・1820」で、陀羅尼助(だらにすけ)をとりあげています。「ここに陀羅尼輔(だらにすけ)と言へる薬あり。それを調じぬる所にいたりて見るに、黄檗(おうばく)のなまなましき皮を煮つめたものなり、大峯にて焚ける香のけぶりのたまれる百草をまじへて加持したるものなりなどいへるはよしもなきことなり」と書いています。
陀羅尼助(だらにすけ)、信州木曾のお百草(ひゃくそう)、山陰地方の練熊(ねりぐま)もこれらは、すべて黄柏エキスから作られたもので、古くから胃腸薬や腹痛の妙薬として用いられています。
なお、樹皮は黄色の染色剤としても古くから用いられます。
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