カンアオイ      (ウマノスズクサ科カンアオイ属:常緑多年草:花期 10〜4月)

薬効
せき・たん          
           
分布生育場所

科名:ウマノスズクサ科/属名:カンアオイ属
和名:寒葵/生薬名:土細辛(どさいしん)/学名:Asarum kooyanum var. nipponicum
本州の関東と中部地方の山地の樹下。
日本、中国中部以東に分布。
東北、北陸地方の日本海側のコシノカンアオイ、新潟県東部〜福島県西部のユキグニカンアオイミチノクサイシンギフチョウとコシノカンアオイ

見分け方・特徴

カンアオイは、根茎から長柄の葉が出て、厚く表面に不規則な白斑があり、長さ6〜10センチ、幅5〜7センチの心臓形です。
秋から冬にかけてこれが花かと思うような3裂した花被の、がく片が筒になって、先端部が分かれている暗紫色で鐘形の花をつけます。
花は葉の出ている基部に半ば地に、うずもれて開花するので、よく見ないと解りません。
また、この花は結実してもずっと遅くまで花の形のまま残っています。
がく筒が完全に癒合(ゆごう)して、がく筒の口には明らかな、つぼがあって内側には格子目の隆起があります。

カンアオイの仲間は、花が半ば地にうずもれているために結実しても、種子の散布範囲が狭く、したがって分布速度も極めて遅いので、地域ごとに種が異なって古い起源を持つ島などは、島ごとに種類が違っています。

カンアオイの種類は、スズカカンアオイ、コウヤカンアオイ、アツミカンアオイなどがあります。
スズカカンアオイは、近畿、北陸西部に分布して、つぼ状の花筒部よりも花被片(かひへん)がへこんでいます。
コウヤカンアオイは、和歌山県などに分布して、花被片(かひへん)は短く、花筒部の2分の1くらいの大きさです。
アツミカンアオイは、近畿地方各地に見られ、葉がとくに厚くて葉脈の表面が著しくへこんでいます。
このほか、日本には50〜60種類ものカンアオイ類があるといわれています。
採集と調整
秋から冬の開花期に、地下の根茎と根を掘り取って水洗いして、陰干しにします。
これを、生薬名の土細辛(どさいしん)といいます。
薬効・用い方
土細辛(どさいしん)は、咳止めに1回5〜10グラムの土細辛に、水0.3グラムを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして服用します。
これは、根茎(こんけい)および根に含まれる、精油(せいゆ)とアミノ酸のピペコール酸によって鎮咳(ちんがい)作用があることが証明されています。
その他
カンアオイの名前の由来は、カンアオイの葉の質が厚いために冬の寒中でも葉は枯れません。3月の終わり頃には紫褐色の新葉が出始めますが、寒中にも葉が枯れないであるので、カンアオイという名があります。

また、ウスバサイシンやカンアオイは、蝶が好んで食べる食草です。カンアオイがギフチョウの食草なら、ウスバサイシンはヒメギフチョウの食草です。

江戸時代の元禄から享保(きょうほ)のころには、サイシンアオイ(細辛葵)、トキワグサ(常磐草)と呼ばれていました。
江戸時代には、カンアオイの葉に出る斑紋(はんもん)を観賞するために盛んに栽培が行われました。それで、栽培法の手引きや、名品宝観などが出版されるような人気がありました。

日本の古書で、小野蘭山(おのらんざん)の「本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう・1803)」の中では、カンアオイのことを「葉みな厚く、冬を経て枯れず、一株に葉が叢生(そうせい)す。茎は紫黒色、葉は白斑文あり。其斑、数品あり。葉の中左右相対して白きものあり。中央一線白きものもあり。満葉細白条網(まんようさいはくじょうあみ)の如きものもあり。また全く斑なきものもあり」という記述があります。