ST9.人迎(じんげい)

取穴部位:喉頭隆起(扶突穴)の外方15分、総頚動脈拍動部

禁灸穴

筋肉:広頚筋

運動神経:顔面神経

知覚神経:頚横神経

血管:総頚動脈

ST9)人迎ren2ying2)(じんげい)・天五会・五会

【取穴】

前頚部、甲状軟骨上縁と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁、総頚動脈上。

胸鎖乳突筋は、抵抗に抗して頭を反対側に向けるとより明瞭に現れる。

※LI18)扶突、SI16)天窓、および甲状軟骨上縁と同じ高さにある。

胸鎖乳突筋の前縁がST9)人迎、後縁がSI16)天窓、前縁と後縁の中央にLI18)扶突がある。

【名の由来】

本穴が嚥下の際、食物を送迎するように動く事から、「人を迎えるが如し」との意味で。

【要穴】

『根結:足陽明之入』

『標本:足陽明之標』

【交会】

・経絡(4):足陽明経-足少陽経-陽蹻脈-陰蹻脈

一説には陽蹻-陰蹻之会とも。

【作用】

〔瀉〕『気海(胸街)之兪/寛胸定喘・散結清熱』

蹻脈病

てんかん・半身不随・睡眠障害自律神経失調、冷えのぼせ・眼裏痛、視力低下・腰背部痛・皮膚の強いしびれやこわばり・部位がはっきりしない疼痛など

 

【主症主治

気海(胸街)之兪/呼吸困難 ・発声障害、しわがれ声

味覚異常・甲状腺腫・リンパ節腫大

【症例/個人的見解】

・鍼灸甲乙経に「刺過深殺人」とある。要注意。

・鍼灸甲乙経、和漢三才図会に「禁灸穴」とある。要注意。

・武術的な「致命三十六穴」の一つ。頸動脈からの出血。

足の陽明胃経とは胃経に属する足を流れる陽経の経絡である。胃と脾は共に中国の五行(木、火、土、金、水)でいうと土に属するため密接な関係を持つ。また、流注によると胃はもとより、大腸や小腸のまわりを取り囲んでいるため腹痛にこの胃経の経穴を使うこともある。胃経の募穴は中脘穴(任脈)。

【弁証主治】

足陽明経(筋)病

躁鬱、不安障害・注意欠陥多動性障害、統合失調症・耳疾患・顔面神経マヒ・頬~鎖骨窩の痙攣・腹筋の緊張・疝痛、股関節の炎症・下肢痛、こわばり、マヒなど 

足少陽経病

口苦・溜息・脇肋痛・足首痛・皮膚の乾燥など 

・陽経における根結において、『入』は絡穴と、胸鎖乳突筋周囲の2点がある。この頚の6点は、各経(筋)の病態を判断する診断点として使用できるように感じる。

 

・個人的には、上述の『入』と、頚前筋の分布になにかしらの関連を感じる。胸鎖乳突筋のすぐ裏には頸動脈鞘があり、脳の主要動静脈に加え、迷走神経も、この鞘に包まれている。このことから、胸鎖乳突筋上に分布する各『入』は、経筋のみならず、自律神経系や脳の代謝異常にも運用できるのではないだろうか?

・陰陽蹻脈の交会であることから、体軸の調整に応用できるかと。また熱症状のある時は陰蹻脈へ、寒症状のある時は陽蹻脈として選穴すること。

・インド医学にも「マルマ(marman)」と呼ばれるツボに該当する概念がある。本穴はインド医学的には「nila(青/脈管のマルマ)」と呼ばれ、発声障害、しわがれ声・味覚異常に治効があるとされる。