ST7.下関(げかん)
取穴部位:頬骨弓中央の下際陥凹部 禁灸穴 運動神経:下顎神経 知覚神経:下顎神経 血管:顔面横動脈 |
※裏頄(li2qiu2)(りきゅう)
【取穴】 下顎切痕直上。下関のさらに深部。翼突筋を目標に。 ※取穴の際には、患者に軽い口の開閉を数回してもらい、正確に下顎切痕を把握した方が良い。 ・筋肉:咬筋/外側翼突筋/内側翼突筋 ・運動神経:《Ⅴ₃》下顎神経 ・知覚神経:《Ⅴ₃》下顎神経 ・血管:顔面横動脈 【名の由来】 本穴が頄(頬骨)の奥にある事から。 【要穴】 『根結:足陽明之結(顙大、鉗耳/顎関節)』 『標本:手陽明之標(顔下合鉗上/顎関節)』 【交会】 ・経絡(?):陰蹻脈(頄) ・経筋(4):足三陽経筋-手陽明経筋の結する処(頄) 【弁証主治】 ◆陰蹻脈病/足三陽経筋病「陽緩み陰急す」 半身不随・錐体外路系障害・部位がはっきりしない疼痛・線維筋痛症など全身の運動機能障害・皮膚の強いしびれやこわばり・てんかん・寒熱症状、自律神経失調 ・視力低下、眼裏痛・※昌陽脈腰痛・疝痛・下肢内側のこわばり、O脚など
・下顎神経には、下顎切痕直上から、鍼尖を後方に向ける。翼状板に当たったら鍼を更に後方に進め、翼状板を通り越すと、此処で下顎神経に当たる。 ・奇経八脈考に、陰蹻脈が「頄の内側に入り上に行きて内目尻に属す」とある。陰蹻脈は「一身左右の陰を主」り、その病は「陽緩み陰急す」。これを姿勢からみると、前傾前屈姿勢となることに加え、「蹻=足を高くあげて歩く・力強く歩く様・敏捷」を病むと考えた時、パーキンソン病をはじめとするような錐体外路系の変性疾患に対して、陰蹻脈は適応かと考える。 ・陰蹻脈の病証では、表に異常がなく裏が病み(表面上に異常がないが症状が強いなど)、夜に症状がでる事が多い。 ・陰蹻脈は臨床では、巨刺・繆刺を多用する。顎関節症の治療では、顎の偏移側の反側に刺入すると効果が高い様子。 ・陰を病むと熱を生ず。 ・検証:得気は、正確に入るとあまり感じない。手技を加えるとじんわりと副鼻腔へと響く感じ。 |
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【取穴】
顔面部、頬骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部。 ※口を閉じ、頬骨弓下方の陥凹部、GB3)上関の直下にある。 ・筋肉:咬筋/外側翼突筋/内側翼突筋 ・運動神経:《Ⅴ₃》下顎神経 ・知覚神経:《Ⅴ₃》下顎神経 ・血管:顔面横動脈 【名の由来】 「関=戸ぼそ」。本穴が頬骨弓下際にあり、顎関節開閉時に恰も戸ぼその様に働く事から。 【交会】 ・経絡(2):足陽明経-足少陽経 【作用】 〔補〕壮筋補虚・関節強健 〔瀉〕疏風活絡・開竅益智・風寒温散・鬱熱消散 【弁証主治】 ◆足陽明経病 躁鬱、不安障害・注意欠陥多動性障害、統合失調症など ◆足少陽経病 口苦・溜息・脇肋痛・足首痛・皮膚の乾燥など 【主症主治】 歯根膜炎・顎関節の脱臼、こわばり ※線維筋痛症(Fibromyalgia-Syndrome:FMS)…全身の強い恒常的疼痛(電撃様・ガラスの破片が流れる様な)を主症状とし、様々な随伴症状を伴う原因不明(明確な診断基準なし)の疾患。 多様な「痛み(事故や手術、出産など)」が起点となる事が多い。男:女=1:7、中高年に多く、しばしば膠原病などの自己免疫疾患と併発する。 随伴症状としては微熱・躁鬱、不安障害・不眠・理解力、思考力、集中力の低下・全身の重だるさ、こわばり・頻尿・下痢・眼や喉の乾燥・筋力低下・四肢の冷え(レイノー現象)など。 しばしば膠原病などの免疫疾患を併発する。 ※昌陽之脈腰痛…腰痛が脇肋までひきつれ、視界がぼやけ、甚だしい時には背中が反り返り、舌が巻き上がって話せない。 ※素問刺腰痛篇第四十一に記載の「昌陽之脈」を、陰蹻脈とする説もある。「昌陽」は復溜の別名でもあるが(「内筋」は交信の別名)、復溜も陰蹻脈に係わるという事か?【症例/検証/個人的見解】 ・線維筋痛症、および群発頭痛の治療に関して、外側翼突筋へのアプローチが有効とのデータがある。陽明経(筋)病に該当する主訴も多いので、鍼による本穴からのアプローチは試す価値があるように思う。 ・翼突筋が蝶形骨に起始することから、本穴(下関も)への刺鍼は、下垂体に関わる脳内分泌異常による疾患(精神疾患、パーキンソンなどの神経伝達障害)にも応用可能かと考える。 |