[足の太陽膀胱経]
■ 概念~「筋による疾病を主る」経絡
『陽気なるもの、精則ち神を養い、柔則ち筋を養う』という。陽気が化生した精微は内には神を養い、外には筋を柔らかくする。膀胱経は水に属し水が虧けると筋は潤いを失い病変が発生する。さらに膀胱経は陽経の中でも巨陽とされ人体の陽気が正常・旺盛であることに深く関わっている。
膀胱経が「筋による疾病を主る」『霊枢』とはこのことをあらわしている。
■ 循行(経絡の流れの道筋)
目の内眺に起こり、額を 上り頭頂に至る。支脈の一つが頭頂から耳の上 角のこめかみの部に行き到る。その直行の脈は、 頭頂より入り脳を絡し、項に出で肩を循り、背
を挟み、腰にいたり、体内に進入し、腎を絡し膀 胱に属す。その後、腰中より脊を挟んで下行し 殿部を貫き、膝窩に進入する。別の縦に行く分 支は肩甲骨より脊を挟み、殿部の外側を経て下
腿を行く。膝窩中に至って前の縦行する分支と 相交わる。交会後下に向かい下腿後側の内部を 通過し、外踝の後ろに出て後、足の外側に沿い 小趾外側端に行き至り、足の少陰腎経に交わる。
【原文】『霊枢・経脈篇』
①目の内眦に起こり、②額を上って頭 頂に交わる。③その支なる者は、頭頂より耳の上 角に至る。④その直なる者は、頭頂より入りて脳を 絡し⑤還りて出で別れて項を下り、⑥肩 甲骨の内を循り、脊を挾み腰中に抵り、⑦入り て椎骨両側の背筋を循り、腎を絡し膀胱に属 す。⑧その支なる者は、腰中より下って脊を挟み、 殿部を貫き、膝窩に入る. ⑨その 支なる者は肘内より左右に別れ下って肩甲部 を貫き、⑩脊の内を挟み、大腿大転子の部 位を過り、⑪大腿外を循り、後廉より下 ってかく中に合し、⑫以って下ってふくらは ぎを貫き、⑬外課の後に出で、⑭京 骨を循り、⑮小趾の外側に至る。
■ 経絡症候および主治症
(1)経脈通過部位の疾病:頭痛、眼痛、項背痛、 腰痛、下肢麻庫、半身不随、坐骨神経痛、風湿
性(リウマチなど)関節炎、小児麻庫後遺症など
(2)背部兪穴それぞれの相応する臓器の疾病:
①呼吸器系疾患:感冒、気管支炎、気管支喘息、 肺結核、肺炎など
②心血管系疾患:頻脈、不整脈、狭心症など
③消化器系疾患:胃炎、腸炎、細菌性下痢、消 化不良、消化管潰瘍、胃下垂、肝炎、胆嚢炎、 胆嚢結石など
④泌尿生殖器系疾患:インポテンツ、遺精、遺 尿、月経不順、生理痛、閉経、帯下、骨盤炎、 腎炎、腎泌尿器結石、胎位異常、難産など
(3)その他:痔疾、脱肛、神経衰弱、癩狂(精 神病)、ヒステリーなど
■ 経穴概要
①経穴数:67
②気 血:多血少気
③走 行:頭から足に走る
④時 刻:午後3~5時(申時)
⑤起始穴:BL01.睛明
⑥終止穴:BL67.至陰
⑦絡 穴:BL58.飛陽
⑧郄 穴:BL63.金門
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⑨五兪穴:(a)井穴:BL67.至陰
(b)榮穴:BL66.足の通谷
(c)兪穴:BL65.束骨
(d)原穴:BL64.京骨
(e)経穴:BL60.崑崙
(f)合穴:BL40.委中
⑩肺兪穴:BL28.膀胱兪
⑪募 穴:CV03.中極
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■ 主な経穴とその主治症
BL01.睛明とBL02.攅竹
睛明の主治症は
(1)急性結膜炎、流行吐結膜炎、 麦粒腫など、目の発赤腫痛、迎風流涙(風にあ たると涙が出る)
(2)視神経萎縮、網膜炎、緑内 障、近視、斜視、乱視、色盲、夜盲症など。
晴明への刺針は直刺で行い、施術者は押し手 の拇指または示指で眼球を軽く外方へ押し出す ようにしながら右手で針をゆっくり刺入する。 深さは0.2~1寸までの間にとどめる。抜針後は
脱脂綿で圧迫して出血を防ぐ。禁灸穴である。
臨床上は攅竹、睛明ともに各種眼疾患に使われる。た だし、攅竹は目の発赤腫痛、迎風流涙、眼瞼せつ 腫、麦粒腫などの外眼疾患の治療に用いられ、ま た眼窩痛、前頭痛、顔面神経麻蝉による目の歪
斜、閉目不全、眼瞼痙攣、額紋消失および三叉 神経痛の第一枝痛、鼻炎、副鼻腔炎などの治療に 用いられる。睛明の方は外眼疾患のみでなく視 神経萎縮、近視、遠視、斜視、夜盲症、色盲、
中心性網膜炎などの内眼疾患の治療にも用いられ ている。
BL10.天柱
主に頭痛、項背痛、寝違い、鼻づまり、目の 発赤腫痛及び咽喉腫痛の治療に用いられる。
BL11.大抒、 BL12.風門、 BL13.肺兪
これら三穴の位 置は接近しており、背部にあって肺に近いこと から、臨床上この三穴はともに肩背痛と咳嗽・ 喘息などの治療に用いられている。そのう ち肩背部痛の治療には大抒が最も優れており、
風門、肺兪がこれに次ぐ。咳嗽、喘息への療効 は肺兪が最もよく、風門、大抒がこれに次ぐ。 しかし発熱悪寒があれば、風門が最もよく、肺 兪がこれに次ぎ、続いて大抒となる。
そのほか、大抒穴は八会穴の一つ、骨会とな っている。骨折癒着遅延、骨痛等の骨に関係す る疾病の治療に用いられる。肺兪は肺の背兪穴 なので肺と関係する疾患に使われる。例えば、
肺結核、肺炎、喀血等に対し比較的良好な療効 がある。また風門は風邪の出入する門戸とされ、 肺は皮毛をよるということから、肺兪と風門の 二穴は蕁麻疹、湿疹、神経性皮膚炎などの皮膚病
にも一定の効果がある。
BL14.厥陰兪とBL15.心兪
厥陰兪と心兪はそれぞれ心包と心の背兪穴で あり、臨床上この二つの穴はともに心血管およ び精神神経疾患の治療に用いられる。例えば各 種の心臓病による心悸、心煩、心痛それに癩狂、
癲癇、ヒステリー症、痴呆などである。 心兪は厥陰兪より多く使われるが、両者は 組み合わせたり交替して用いられるのが常であ る。
BL17.膈兪
横隔膜に相当する部位にあり、八会 穴の一つ、血会である。その主治症には次のも のがある。
(1)横隔膜痙攣、横隔膜神経過敏によるしゃっ くり、悪心、嘔吐。
(2)血液と関連する疾患、例えば貧血、瘀血性 疾患、出血性疾患また血熱、血燥による皮膚病 たとえば蕁麻疹、神経性皮膚炎、乾癬などである。
(3)その他祛風作用のある経穴と組み合わせて、 風湿痹痛を治療する。これは「風を治するに先 ず血を治す、血行けば風自ずと滅す」の効によ
るものである。
BL18.肝兪と BL19.胆兪
肝兪と胆兪の位置は接近しており、また胆腑 は肝臓の内に蔵され肝臓と表裏の関係にあるの で、臨床上、この両穴はいずれも肝胆の疾患を 治療することができる。例えば、急・慢性肝炎、
胆嚢炎、胆道炎、胆道回虫症などである。更に肝 胆と関連のある疾患に対しても有効である。例 えば高血圧症、眩暈、肋間神経痛、眼疾患等で ある。
両穴には異なったところもあり、肝兪は肝疾 患の治療、特に慢性肝疾患に適当であり、胆兪 は胆の疾病特に慢性の胆疾患の治療に優れてい る。眼疾患に対しては、肝兪は夜盲症、白内障、
網膜症、視神経萎縮、近視、遠視など内眼疾患の 治療が主となり、胆兪は目の発赤腫痛・迎風流 涙など外眼疾患の治療に適している。このほか、 肝兪は高血圧による眩暈および癩狂、癲癇、ヒ
ステリー症などの精神疾患に対し、胆兪より治療 効果がよく、胆兪は胆道回虫症や結核性の潮熱 の治療には肝兪に較べ治効が優れている。
BL20.脾兪と BL21.胃兪
この両穴は互いに接近しており、内に脾胃に 応じ、表裏の関係にあることから、いずれも消 化器系の疾病、例えば胃・十二指腸潰瘍、急・ 慢性胃炎、胃痛、嘔吐、胃下垂、腹痛、腸鳴、
下痢、消化不良などに用いられる。また急・慢性 肝炎、胆嚢炎などの肝胆の疾患にも使うことが できる。
しかし両穴には異なったところもある。脾兪 は多く慢性の消化器系疾患に用いられ、胃兪は 多く急性消化器系疾患に用いられる。
BL23.腎兪、 BL24.氣海兪、 BL25.大腸兪
臨床上はこれら三つの穴はみな腰痛の治療に 使われる。腰痛の部位にもいろいろあり、これ らの穴位に圧痛があれば、そこで治療効果は高 まる。このうち、腎兪と氣海兪は遺精・インポテ
ンツ等の生殖器系疾患の治療に応用できる。腎 兪は一切の腎虚症状を治療することができる。
例えば遺尿、耳鳴り、難聴、水腫、下痢、生理 不順、帯下、生理痛、崩漏、不妊症、習慣性流 産などである。大腸兪は坐骨神経痛の治療に効果 があり、急・慢性腸炎、便秘、脱肛、痔疾、細
菌性下痢等にも用いられる。
BL22.三焦兪と BL28.膀胱兪
臨床上はこれら二穴はともに小便不利、水腫、 遺尿等の症状の治療に用いられる。三焦兪は腹 脹、腸鳴、泄瀉、細菌性下痢、腎炎などの治療に も使われ、膀胱兪は便秘、腰仙痛、坐骨神経痛、
月経不順などにも用いられる。
八髎穴
BL31.上髎、BL32.次髎、BL33.中髎、BL34.下髎の四
つの穴を指し左右あわせて八穴となる。
臨床上は、これら八髎穴は主に腰仙痛、坐骨 神経痛、下肢麻庫、月経不順、生理痛、帯下、 不妊症、排尿困難、遺尿、下血、痔疾、疝痛、 外陰部掻痒症、遺精、子宮下垂等の病症に用い
られ、なかでも次髎が最もよく用いられる。
BL43.膏肓
主治症は次の通りである。
(1)呼吸器系疾患、例えば肺結核、肺炎、気管支炎、 咳嗽、喘息、胸痛、喀血など
(2)神経衰弱、不眠、健忘、遺精、盗汗など
(3)消化器系疾患、例えば脾胃虚弱、消化不良・胃痛など
(4)瘧疾、特に悪性の瘧疾にもっともよい、また肺腫瘍の治 療にも用いられ、扶正祛邪の効果がある。
(5)肺や胃などの五臓六肺の機能を強めて保健予防 に益する。
BL54.秩辺
主治症は
(1)坐骨神経痛、腰仙痛、下肢麻痺
(2)排尿困難、痔疾、前立腺炎などである。
BL36.承扶、 BL40.委中、 BL57.承山
臨床上はこの三穴はすべて坐骨神経痛の治療 の常用穴となり、また各種の原因による下肢麻 庫と腰痛および便秘・痔疾などにも用いられる。
そのうち、委中は膝関節腫痛、熱痛、日射病に よる高熱、ひきつけ痙攣および嘔吐下痢、痙攣、 丹毒、蕁麻疹を治療することができ、承山は下 腿痙攣、脚気にも用いられる。
BL62.申脈と BL63.金門
二穴はともに足関節、大腿部の痛み、ある いは癩狂、癲癇、ヒステリー症などの治療に用い られる。このうち申脈穴のほうは頭痛、眩暈に も使われ、癲癇の治療には金門よりも優れてい
る。特に昼間発作の癲癇に常用され、また内反 足、外感発熱、目がかすむ、鼻出血、耳鳴、心 悸などにも用いられる。金門穴は小児驚風、疝痛、 ひきつけ痙攣なども治療できる。
BL62.申脈と小腸経の後谿穴
BL62.申脈 は八脈交会穴(八総穴)の一つで、陽蹻脈と足の太陽膀胱経の交会穴となっている。 後谿穴も八脈交会穴の一つで、督脈と手の太陽 小腸経の交会穴である。申脈は陽蹻脈に通じ、
後駱は督脈に通じており、二脈は目の内蔽・頚 項と耳肩等の所でつながっている。このため、 臨床上、常にこの二穴はセットで目の内眦・頚 項と耳・肩などの疾病の治療に用いられている。
このような配穴法は八脈交会穴配穴法と呼ばれ、 霊亀八法では夫妻穴といわれている。
BL60.崑崙とBL67.至陰
BL60.崑崙の主治症は坐骨神経痛、踊の痛み、下 肢麻庫、腰背部、項部4頭頂部等のこわばりと 痛みである。そのほか、難産、胎盤残留、癩痴 等の病症の治療にも用いられている。
BL67.至陰の主治症は胎位異常、 難産、胎盤残留、頭頂痛、鼻詰まり、鼻出血、 目の充血腫痛などである。
英語
Acupuncture points for panic disorder
パニック障害の経穴(ツボ)
百会,
膻中, 天柱, 風池, 手の三里, 足の三里, 肝兪, 腎兪穴などに針治療をし, 足の三里, 百会穴などに灸治療をする。
診察のヒント
不安で不安でたまらない
気が狂いそうで,いまにも何かおこりそう。
患者は突如として, ときには何かのきっかけによって恐怖感を伴った極度の不安におそわれる。
同時に呼吸困難, 動悸, 冷や汗, 心臓の痛み, ふるえなどの発作があり, ときにはめまいを感じて倒れる。
常に自分は気狂いになるのではないか, このまま死んでしまうのではないか不安で不安でたまらない。
医師に診察してもらってもこれといって悪いところは無いといわれ,それでも安心できないのでつぎつぎに医師をかえてみるが,どの医師もいうことが同じで,自分の納得のゆくような説明をしてくれない
このような訴えは不安神経症である。
病気が心配になる
ガン,高血圧など死と直接結びつく病気はかなり多い。
たまたま医師にかか。たとき,「あなたは高血圧ですから,気をつけないと卒中になります」と一言いわれると,それから気になっておちおち寝られない。
ついには動けなくなってしまって仕事が手につかない。
高血圧だけでなく, 心臓病, ガン, 肝臓病などいろいろな病気に対して異常な関心を示し, 医師を転々として何度も検査を受けて, 病気がないといわれても安心できない。
いっも病気でなければいけない。
これは心気症である。
P34-35 針灸のための診断と治療 森秀太郎 著より
針灸治療の方針
神経症
神経症は精神療法が第一義的であるが, 専門的なことは別として患者の話を充分に聞いて, 精神的な悩みの根源をさぐり、問題解決に対して助言し, または説得することが大切で
ある。
「病める脳をなおすには,末梢からくる悪い反射効果を消さなくてはならない。」ポール・ショシャーレの言葉ではないが,身体的苦痛を針灸治療でとりのそくことによって精神的負担を軽減し,精神→肉体の悪循環をたちきることができる。
次に他覚的には, 首こり, 肩こり, 肩背部のこりなどに対して適宜治療をする。
また神経症共通の症状である頭重, 頭痛, 不眠, 心悸亢進, のぽせ, のどのつまりの感じ, めまい、などに対してその都度対症的に治療をして, それらを軽減することによって精神状態に好影響を及ぼす。
深谷伊三郎氏は,神経症の灸療法の研究において,神経症は暗示,説得,精神分析だけに頼らなくても,灸療法だけで充分効果を認めることができるとし,施灸穴として脊椎上の第
3胸椎~第7胸稚に至る棘突起間に著明な圧痛,硬結の反応が現われ,それに施灸して, 50 例中,治癒20例,略治18例を得たと報告している。
躁うつ病については, 軽症のばあいは, 針灸治療で案外軽快することもある。
とくにうつ病の時期においては, 針灸治療をするのに患者があまり抵抗を示さないので, 試みてみるとよい。
治療穴としては, 百会, 膻中, 天柱, 風池, 手の三里, 足の三里, 肝兪, 腎兪穴などに針治療をし, 足の三里, 百会穴などに灸治療をする。
二次的精神病は, 原因をとり除くことが第一であって, アルコール中毒には禁酒を, 麻薬中毒に禁薬をしなければならないが, 専門医に回すべきである。
針灸治療の適否
〇適応
△やや適応
×不適応
神 経 症 ○
軽度の精神病 △
強度の精神病 ×
アルコール中毒 ×
麻薬中毒 ×
脳気質的疾患 ×
P39 - P41 針灸のための診断と治療 森秀太郎 著より
経絡・経穴(ツボ)
百会 (ひやくえ)
GV20
取穴部位:前髪際を入ること5寸、正中線上。
筋肉:帽状腱膜
知覚神経:大後頭神経、眼窩上神経、耳介側頭神経
血管:眼窩上動脈、浅側頭動脈、後頭動脈
膻中(だんちゅう)
CV17
取穴部位:両乳頭を結ぶ線が、胸骨体正中線上と交わるところ。
(乳頭は第4肋間の高さに当たる)
要穴:心包経の募穴、気会
知覚神経:肋間神経前皮枝
血管:内胸動脈の枝
天柱(てんちゅう)
BL10
取穴部位:瘂門穴の外、1寸3分
頭半棘筋の膨隆部の外縁にあたる
筋肉:僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋
運動神経:副神経、頚神経叢筋枝、脊髄神経後枝
知覚神経:大後頭神経
血管:後頭動脈
風池(ふうち)
GB20
取穴部位:乳様突起下端と瘂門穴との中間で、後髪際陥凹部。
(僧帽筋と胸鎖乳突筋の筋間の陥凹部髪際)
筋肉:頭板状筋、頭半棘筋
運動神経:脊髄神経後枝
知覚神経:頚神経後枝
血管:後頭動脈(深部に椎骨動脈が通る)
手三里(てさんり)
LI10
取穴部位:前腕後橈側にあり、曲池穴の下2寸、長・短橈側手根伸筋の間
筋肉:長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋
運動神経:橈骨神経
知覚神経:外側前腕皮神経
血管:橈骨動脈
足三里(あしのさんり)
ST36
取穴部位:膝を立て、外膝眼穴の下3寸
要穴:合土穴、四総穴、足の陽明胃経の下合穴
筋肉:前脛骨筋
運動神経:深腓骨神経
知覚神経:外側腓腹皮神経
血管:前脛骨動脈
肝兪(かんゆ)
BL18
取穴部位:第9・第10胸椎棘突起間の外1寸5分
要穴:肝経の兪穴
筋肉:僧帽筋、広背筋
運動神経:副神経、頚神経叢筋枝、胸背神経
知覚神経:胸神経後枝
血管:肋間動脈
腎兪(じんゆ)
BL23
取穴部位:第2・第3腰椎棘突起間の外1寸5分
要穴:腎経の兪穴
筋肉:腰背腱膜
知覚神経:腰神経後枝
血管:腰動脈
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パニック障害
英語
Diagnostic criteria for panic disorder
パニック障害とは
パニック障害とは、
不安障害とうよばれる心の病気の一つで、
突然、不安感や恐怖感に襲われて、動悸、過呼吸、冷や汗、めまいなどのパニック発作という自律神経症状が現れます。
パニック発作とは
パニック発作はある限定した時間内に、激しい恐怖心や不安感とともに、動悸、過呼吸、めまいなどの症状が出現し、数分以内にピークに達します。
パニック発作の症状
症状には以下のものがあります
動悸、過呼吸、めまい、発汗、死の恐怖、発狂の恐怖、震え、窒息感、悪心、腹部不快感、口の渇き、胸痛、離人症、しびれ、脱力、ホットフラッシュ、冷え性、かすみ目、頭痛、耳鳴り、頻尿、便意、胃の圧迫感、鼻炎症状
予期不安
予期不安とは、パニック発作の再来を恐れ、恐怖状況を予測し、不安が増幅し、それが引き金となり、パニック発作を起こしてしまう症状です。
広場恐怖
広場恐怖とは、パニック発作が起きたときに、逃げ出すことができない状況や場所を恐れ回避する状態です。
電車、地下鉄、バス、飛行機、美容院、歯科治療、1人で家にいる、家から遠く離れる、列に並ぶ、高速道路を運転する、トンネル、橋を渡る、エレベーター内、閉塞空間といった、
物理的、心理的に、拘束された状態で起こります。
パニック障害の統計
①有病率は約4%
②女性に多いとされるが、男性も多いです
③20代から30代に発症することが多い
④血縁者にパニック障害の人がいると発病のリスクが高まる
有病率約4%とは100人中4人がパニック障害という意味です。
300人いる会社で約12人がパニック障害を発症している計算です。
大阪と奈良の人口を合わせると約1000万人なので、その4%は、40万人と計算できます。
潜在的な患者さんを含めるとさらに多いことが予想されます。
ストレス社会と呼ばれる近年、増加傾向にあります。
パニック障害の季節性
パニック障害は、季節性感情障害と併発しやすいと言う報告があります。
ヨーロッパでパニック障害患者が救急車で搬送されるのは、雨の日や、熱波の日に多く、季節は秋に多かったと言う報告があります。
睡眠時パニック発作
パニック発作は睡眠中でも起こることが確認されています。
睡眠時パニック発作は深い睡眠中に突然生じるものです。
睡眠時パニック発作は、恐ろしい夢を見て起きるものではありません。
睡眠時のミニパニック発作を起こす方もおられます。
睡眠時パニック発作はノンレム期という、深い眠りの脳波の時に確認されるものですが、夢を見ているときに生じるものもあるようです。
パニック障害の診断指標
予期しないパニック発作を、1ヵ月に数回繰り返している
パニック発作の後、少なくとも1ヵ月以上、以下の症状が1つ以上ある
また発作が起きるのではと言う心配(病気不安)
次の発作で、死んでしまうのではないか、気が狂ってしまう、コントロール不能となってしまうなどの恐怖心がある
家にこもって寝ている、仕事を止める、運動を避けるなど、パニック発作を避けるような行動をとる
パニック発作は、他の不安障害、精神疾患、体の病気、薬などの物質の影響によるものではない
パニック障害の診断基準
強い恐怖、もしくは不快を感じるはっきり区別ができる期間で、以下の症状のうち4つ以上が突然に発現し、10分以内にその頂点に達する。
①動悸、心悸亢進(心拍数の増加)
②発汗
③身震い、震え
④息切れ感、息苦しさ
⑤窒息感
⑥胸痛、胸部の不快感
⑦嘔気(吐き気)、腹部の不快感
⑧めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
⑨現実感消失(現実でない感じ)、離人症状(自分自身から離れている)
⑩コントロールを失うことに対する恐怖、気が狂うことに対する恐怖
⑪死ぬことに対する恐怖
⑫異常感覚(感覚麻痺、うずき)
⑬冷感、または熱感(ほてり)
引用:DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル新訂版2003年
パニック障害と鑑別すべき他の状態
アルコールからの離脱
アンフエタミン乱用
喘息
カフェイン症
不整脈
心筋症
コカイン乱用
冠動脈疾患
クッシング症候群
使用薬物からの離脱
電解質異常
副甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症
低血糖
甲状腺機能低下症
マリファナ乱用
閉経期症状
僧帽弁逸脱
褐色細胞腫
肺塞栓症
側頭葉てんかん
真性めまい
ウェーン・ケートン(著) , 道場信孝,竹内龍雄(訳) :パニック障害
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