BL16.(とくゆ)

取穴部位:第6・第7胸椎棘突起間(霊台穴)の外15

筋肉:僧帽筋菱形筋

運動神経:副神経頚神経叢筋枝、肩甲背神経

知覚神経:胸神経後枝

血管:肋間動脈背枝

BL16.督兪(とくゆ)

『督兪』とく奇穴( BL16

第6・第7胸椎棘突起間の外1寸5分に取る。

解剖学的データ

筋肉

僧帽筋 (そうぼうきん)

外後頭隆起・項靱帯・上項線・第7~第12胸椎から起こり、鎖骨の外側1/3・肩甲骨の肩峰と肩甲棘に停止する筋肉。主に肩甲骨を上方・下方・内側に引っ張る働きと回転させる働きがある。

菱形筋 (りょうけいきん)

第6頸椎~第4胸椎棘突起から起こり、肩甲骨内側縁に停止する筋肉。主に肩甲骨を後ろに引く働きがある。

運動神経

副神経 (ふくしんけい)

第11脳神経とも呼ばれており、大後頭孔から頭蓋を出て、同側の胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する神経。

頸神経叢筋枝 (けいしんけいそうきんし)

第1~4頸神経前枝が集まったものを頸神経叢といい、そのうち頸部の筋肉を支配するために出ている神経の枝を筋枝と呼ぶ。

肩甲背神経 (けんこうはいしんけい)

腕神経叢から背中側へ出て走行する神経で、肩甲挙筋や大菱形筋・小菱形筋などを支配する。

知覚神経

胸神経 (きょうしんけい)

胸椎の高さから出る12対の脊髄神経のこと。胸神経の前枝は肋間神経ともいい、胸部や腹部の筋肉の支配や皮膚の知覚を司る。また、後枝は背部の筋肉や皮膚を分節的に支配する。

血管

肋間動脈 (ろっかんどうみゃく)最上肋間動脈・胸大動脈から起こり、肋骨の下縁(肋間)に沿って走る動脈のこと。肋間動脈の起始部近くからは背枝が出ており、さらに背筋を栄養する筋枝、脊髄を栄養する脊髄枝、背部の皮膚を栄養する皮枝に分かれる。また肋間動脈が内肋間膜を貫通すると側副枝が出ており、下位の肋骨の上縁に沿って走る。胸郭の外側部では外側枝が出ており、さらに前枝と後枝に分かれ胸郭外側壁の皮膚に栄養するが、前枝からは乳腺枝が出て乳腺も栄養する。

主治・対象疾患

胸痛

心胸痛

心臓弁膜症

心内膜炎

心筋炎

心不全

動悸

不整脈

狭心症

気管支炎

肺尖カタル

肺結核

喘息

鼻カタル

胸膜炎

咽喉炎(のどの腫れ・痛み)

呼吸困難

嗄声(声のかれ)

咳嗽

肺炎

感冒(かぜ)

肩こり

胃炎

胃潰瘍

胃下垂

胃けいれん

胃酸過多

胃痛

十二指腸潰瘍

腸炎

腸出血

腸疝痛

腹鳴

吐き気

嘔吐

血便

下痢

消化不良

食道炎

食道けいれん

食欲不振

吐血

便秘

肋間神経痛

 

 

第7・第8胸椎棘突起間の外1寸5分に取る。

解剖学的データ

 

むち打ち、寝違え、五十肩などに用いる。

督兪が使われた症状

症状

割合

症例数

五十肩(四十肩)

13.3%

11

肩痛(スポーツ障害・怪我)

12%

10

動悸

10.8%

9

肩こり・首こり

8.4%

7

パニック障害

7.2%

6

寝違え(首の痛み)

4.8%

4


督兪(とくゆ)の『督』は「 督脈(とくみゃく) 」のこと、『兪』は「輸送する」ことを表しています。

このツボは督脈の気を輸送するところであることから督兪と名付けられました。

督脈(とくみゃく)奇経八脈の一つ。体の後面中心部に分布し、背部から項(うなじ)、頭部にかけて運行している。奇経八脈に属する経脈は、督脈のほかに、任脈(にんみゃく)、衝脈(しょうみゃく)、帯脈(たいみゃく)、陽蹻脈(ようきょうみゃく)、陰蹻脈(いんきょうみゃく)、陽維脈(よういみゃく)、陰維脈(いんいみゃく)がある。

 位置

上背部、第6胸椎(T6)棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1.5寸。

6胸椎の棘突起下縁から外方に1.5寸(1寸=手の親指の横幅の長さ)いったところに督兪はあります。

6胸椎棘突起下縁の高さにはいくつかのツボが横に並んでいて、後正中線上に霊台(れいだい)、外方1.5寸に督兪、外方3寸に譩譆(いき)が位置しています。

 主治・効能

循環器系の症状

胸の痛み・つかえ、動悸

督兪は心臓の近くにあるため、心疾患の治療に用いられます。

消化器系の症状

腹痛、お腹の張り

督兪は胃の近くにあるため、消化器疾患にも効果があります。

 局所解剖

皮膚皮下組織僧帽筋広背筋脊柱起立筋

関係する筋肉

僧帽筋

広背筋

脊柱起立筋

関係する動脈・静脈

肋間動脈

関係する神経

副神経

頸神経叢筋枝

肩甲背神経

胸神経後枝

 参考文献

著者: 長濱善夫 / 東洋医学概説 / 創元社 (1961)
編著者: 南京中医学院 / 訳編者: 中医学概論邦訳委員会 / 中国漢方医学概論 / 中国漢方医学書刊行会 (1965)
編集: 天津中医学院, 学校法人後藤学園 / 監訳: 兵藤明 / 翻訳: 学校法人後藤学園中医学研究室 / 針灸学[経穴篇] / 東洋学術出版社 (1997)
著者: 劉燕池, 宋天彬, 張瑞馥, 董連栄 / 監訳: 浅川要 / [詳解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社(1997
著者: James H. Clay, David M. Pounds / 監訳者: 大谷素明 / クリニカルマッサージ ひと目でわかる筋解剖学と触診・治療の基本テクニック / 医道の日本社 (2004)
著者: 滝沢健司 / [図表解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社(2009
監修: 形井秀一, 髙橋研一 / 著者: 坂元大海, 原島広至 / ツボ単 / エヌ・ティー・エス (2011)
著者: Andrew Biel / 監訳: 阪本桂造 / ボディ・ナビゲーション ~触ってわかる身体解剖~ / 医道の日本社 (2012)