亜急性小脳萎縮症

アキュウセイショウノウイシュクショウ

【英】subacute cerebellar atrophy

【独】subakute Kleinhirnatrophie

【仏】atrophie ce´re´belleuse subaigue¨

同義語:carcinogenic and sporadic cerebellar atrophy

 

変性性小脳萎縮症には各種の病型があるが,一般に家族遺伝性の経過の長いものが多い.神経症状,小脳症状が比較的急速に現れ数週ないし数ヵ月で明らかとなり,進行増悪し死亡するものに悪性腫瘍(肺癌が多い)に伴う急性~亜急性小脳萎縮症がある.小脳虫部,半球が侵され,顆粒空胞変性,グリオーシス,および白質の脱髄をみる.腫瘍が明らかとなる以前に小脳症状が出現すると,診断困難である.また甲状腺機能低下症やクロイツフェルト・ヤコブ病CreutzfeldtJakob diseaseでも病理学的に小脳・橋核にかなり急進展する萎縮性変化をみることがある.〈1997

亜急性腎炎

アキュウセイジンエン

【独】subakute Nephritis

 

=急速進行性糸球体腎炎

急速進行性糸球体腎炎

キュウソクシンコウセイシキュウタイジンエン

【英】rapidly progressive glomerulonephritisRPGN

同義語:亜急性腎炎subakute Nephritis

 

かつての亜急性腎炎に相当し,臨床的には月数をもって数える経過で不可逆性に腎不全に進行し,病理学的には糸球体周の50%以上の大きさの半月体*が50%以上の頻度で出現するものをいう.この意味で近年は半月体性糸球体腎炎crescentic glomerulonephritisとも呼ばれる.原因疾患は, 1)一次性(特発性), 2)溶連菌感染後性腎炎,細菌性心内膜炎,内臓腫瘍などの感染性疾患に伴うもの, 3)全身性疾患に伴うもの,の3種に大別される.全身性疾患としては,グッドパスチャー症候群*Goodpasture's syndrome,ループス腎炎*,多発性動脈炎*,紫斑病性腎炎*,ウェゲナー肉芽腫*Wegener granulomatosis,混合性クリオグロブリン血症などがある.予後は感染性疾患に伴う場合が最もよく,一方,特発性RPGNの予後は不良で,全身性疾患に伴うものは原疾患の予後に規定される.〔治療〕半月体形成が糸球体内血液凝固に由来することより抗凝固療法を含むcombined therapyが試みられ,かなりの効果をおさめており,また必要に応じてパルス療法*,血漿交換法(プラスマフェレーシス*)も適用される.

半月体

ハンゲツタイ

【英】crescent

 

主として糸球体疾患の結果,増殖したボーマン嚢上皮細胞がボーマン腔の一部または全部を満たしているもの.多くはボーマン腔の一部を覆って三日月様の形態をとるため.半月体と呼ばれる.細胞が2層以上である必要がある.ときにフィブリンを含む.細胞を主体としたものを細胞性半月体cellular crescentと呼び,この細胞成分に基底膜様物質やコラーゲンなど,線(繊)維性物質を含んでいるものをfibrocellular crescentと呼ぶ.さらにボーマン腔が主として結合織で埋まったものを線(繊)維性半月体fibrous crescentと呼ぶ.これは,cellular crescentあるいはfibrocellular crescentが瘢痕化したものである.糸球体の炎症性病変において最も高度な病変である.半月体が半数以上の糸球体にみられる場合,半月体形成性糸球体腎炎crescentic glomerulonephritisと呼ばれる.臨床的には,多くの場合,急速に進行して1年以内に腎不全*renal failureに陥る可能性の強い,急速進行性糸球体腎炎*である.

腎不全

ジンフゼン

【英】renal failure

【独】Niereninsuffizienz

【仏】insuffisance re´nale

 

腎の血流障害,機能ネフロンの減少,尿路の閉塞により,窒素代謝物や水,電解質の排泄が十分にできなくなり,体液*の量的,質的恒常性が維持できなくなった状態をいう.臨床的には血中の尿素窒素やクレアチニンが持続的に上昇する状態と定義される.発症の経過により急性腎不全*と慢性腎不全*とに分けられるが,前者は短期・可逆性の障害であるのに対し,後者は非可逆性のネフロン*の喪失を起こし,数ヵ月から数十年かけて形成される.また急性腎不全は原因により腎前性,腎性,腎後性に分けられるが詳細は急性腎不全の項を参照されたい.腎不全の初期には血清尿素窒素やクレアチニンが上昇するだけであるが,腎機能が30%以下になると水・電解質代謝,酸塩基平衡の調節にも障害を生じ,溢水状態,高カリウム血症*,代謝性アシドーシス*などをきたす.さらに腎から分泌されるホルモン(エリスロポエチン*,レニン)の異常や活性ビタミンD*の減少や種々の毒性物質の蓄積をきたし,腎機能が10%以下の高度の腎不全では多彩な全身症状を呈する尿毒症*となる.→萎縮腎