自己免疫疾患
ジコメンエキシッカン
【英】autoimmune disease
【独】Autoimmunkrankheit
【仏】maladie par auto‐immunisation
免疫系は本来外界からの有害な異物の侵入に対する生体の防御機構として存在するものである.しかし時にはこの免疫系の働きが,結果的に生体に有害であることがある.これをアレルギー*と呼んでいる.生体は,外界からの異物に対するのみならず,自己の成分に対してもアレルギー反応を起こす.これを自己アレルギーautoallergyと呼ぶが,これをもとにある病態が生じた時には,自己免疫疾患と呼ぶ.自己免疫疾患は,全身性の疾患であるが,臓器特異性のない疾患と,特異性のある疾患の2つに大別される.臓器特異的自己免疫疾患には,橋本甲状腺炎(→慢性甲状腺炎),原発性粘液水腫,甲状腺中毒症(→甲状腺剤中毒症),悪性貧血*,グッドパスチャー症候群*,急性進行性糸球体腎炎,重症筋無力症*,尋常性天疱瘡*,水疱性類天疱瘡*,インスリン抵抗性糖尿病*,若年性糖尿病,アジソン病*,萎縮性胃炎*(→自己免疫性萎縮性胃炎),男性不妊症*,早発性更年期,水晶体原性ぶどう膜炎,交感性脈炎,多発性硬化症*,潰瘍性大腸炎*,原発性胆汁性肝硬変*,慢性活動性肝炎,自己免疫性溶血性貧血*,発作性血色素尿症(発作性ヘモグロビン尿症*),特発性血小板減少性紫斑病*,シェーグレン症候群*がある.臓器非特異的自己免疫疾患には,慢性関節リウマチ*,全身性エリテマトーデス*,円板状エリテマトーデス*,多発性筋炎*,強(鞏)皮症*,混合結合組織病*がある.このような自己免疫疾患には,多彩な自己抗体*や自己抗原感作リンパ球が存在する.それらが実際に組織障害とどのように関連しているかは重要な問題である.しかし,自己抗体単独,補体依存性,食細胞抗体性,K細胞依存性に,組織障害を起こしていることが実験的にも証明されている.また,免疫複合体*を形成した自己抗体と対応抗原が,組織障害性に作用することは,全身性エリテマトーデスの腎病変発現の場合よく知られている.