中性子
チュウセイシ
【英】neutron
【独】Neutron
【仏】neutron
原子核を構成する素粒子の一つで,1932年Chadwickによりその存在が明らかにされた.質量は1.00866520 uで,陽子*よりわずかに大きく,電子*の1,838倍である.中性子の質量は陽子と電子の質量の和より大きく,単独に存在する中性子は不安定で,10.8分の半減期でβ崩壊(β壊変*)を起こして陽子になる.中性子は電荷をもたないので,物質に照射されたとき,核外電子との相互作用はほとんどなく,直接電離や励起によりエネルギーを失うことは少ない.したがって荷電粒子のようにエネルギーに応じた飛程*をもたない.中性子は原子核との直接的な相互作用(弾性散乱,非弾性散乱,捕獲吸収,核変換など)によって,二次的に荷電粒子やγ線を放出する.中性子はそのエネルギーにより分類され,媒質の絶対温度に等しいエネルギー約0.0025 eVをもつ熱中性子と数MeV以上の速中性子を用いて放射線治療が行われている.→中性子治療