甲状腺機能低下症
コウジョウセンキノウテイカショウ
【英】hypothyroidism
【独】Hypothyreoidismus
【仏】hypothyroi¨die
甲状腺ホルモン*の合成,分泌が低下し,血中甲状腺ホルモン濃度が減少してホルモンが組織に作用しなくなった結果生ずる病態をいう.甲状腺組織自体に原因がある場合,原発性甲状腺機能低下症*という.成人では自己免疫異常による萎縮性甲状腺炎(慢性甲状腺炎*の一部)によるものがもっとも多い.甲状腺機能亢進症*治療後(手術,131I,抗甲状腺剤),ヨード欠乏,癌,アミロイドの浸潤などが原因となる.一時的には,慢性甲状腺炎の経過中,silent thyroiditisの一時期に,また慢性甲状腺炎で分娩後(分娩後一過性甲状腺機能低下症)に生ずることがある.TSH分泌に障害がある場合,下垂体性甲状腺機能低下症といい,汎下垂体機能低下症の一部として,またTSH単独欠損症として発生する.視床下部でのTSH*(TSH刺激ホルモン)の欠損による視床下部性甲状腺機能低下症もある.臨床症状は種々な程度があるが,もっとも典型的なものを粘液水腫*という.甲状腺ホルモンによる熱産生が低下するため患者は寒がりで,皮膚は白く冷たく皮下組織に酸性ムコ多糖類が貯留して浮腫状だが圧痕を残さない.アキレス腱反射時間は遅延する.軽度な甲状腺機能低下症では臨床症状を呈さず,サイロキシン*(T4)の軽度な低下,TSH上昇を示すのみである(潜在性甲状腺機能低下症).新生児期に甲状腺機能低下症が発現するとクレチン病*として区別する.甲状腺ホルモンの合成分泌は正常でも,体組織に先天的異常があってホルモンに反応せず,甲状腺機能低下症と同じ症状を示す場合,甲状腺ホルモン不応症thyroid hormone refractorinessという.