角膜移植術

カクマクイショクジュツ

【英】keratoplasty, corneal grafting

【独】Keratoplastik, Hornhauttransplantation

【仏】ke´ratoplastie

 

角膜が混濁したために失明した眼に対して混濁した部分を切除して透明な角膜,あるいは人工角膜と置き換える手術をいう.角膜移植は臓器移植の中でも長い歴史を有し18世紀にすでにガラスを用いて移植が行われている.その後,人工角膜,異種角膜などを用いて移植が行われたが成功していない.1929Filatovが死体より摘出した角膜を用いて移植を行った後,同種移植が盛んに行われるようになった.長期間の透明治癒には同種移植が必要である.わが国では,1958(昭33)年角膜移植に関する法律が制定されて以来角膜移植のために死体から眼球摘出することが可能となった.角膜移植は移植に用いる角膜の状態,移植方法,目的などにより,次のように分類される. 1) 種類による分類として同種移植,異種移植,人工移植などがある. 2) 移植方法による分類として全層角膜移植,表層角膜移植,部分角膜移植,自己回転角膜移植などがある. 3) 目的による分類として光学的,治療的,美容的角膜移植などがある.一般に角膜移植というと全層角膜移植penetrating keratoplastyのことをいう.全層角膜移植には新鮮な角膜が用いられるが,そのために眼球保存液が開発され眼球摘出後手術までの間保存されている.表層角膜移植lamellar keratoplastyには必ずしも新鮮角膜は必要でなく,冷凍して保存した角膜,グリセリン内に保存した角膜を使用することができる.角膜移植では0.5mmの薄い角膜を縫合するために手術用顕微鏡下にて専用の繊細な手術器具,100ナイロン糸などを用いる.手術時に角膜内皮細胞を機械的傷害から保護するために,粘弾性物質としてヒアルロン酸塩が開発され使用されている.