悪液質肝斑
アクエキシツカンハン
【ラ】chloasma cachexia
→肝斑
肝斑 カンハン 【英】moth patches, melasma 【独】Leberfleck 【仏】tache he´patique 【ラ】chloasma
主として思春期以後の女子の顔面,とくに額部,眉毛直上,頬,頬骨部に左右対称性に好発.限局性の境界明らかな褐色斑.組織学的には表皮細胞のメラニン*含量が増加.妊娠時の卵胞ホルモン,MSH*(メラニン細胞刺激ホルモン)
の増加など,内分泌変調が基礎にあるといわれ,日光により増強する.妊娠で生じるもの(妊娠性肝斑*),子宮,卵巣疾患があって発症するもの(子宮肝斑chloasma uterinum),癌の末期に生ずるもの(悪液質肝斑chloasma cachexia)などもあり,また経口避妊薬連用によっても生ずる. |
メラニン
メラニン
【英】melanin
【独】Melanin
【仏】me´lanine
同義語:メラニン色素melanin pigment
ヒト生体内のメラニンには黒色メラニンと黄色メラニンがあり,混在している.皮膚,毛,眼,脳軟膜などに存在する色素,メラニンは,アミノ酸チロシンtyrosineからチロシナーゼ*tyrosinase
チロシナーゼ チロシナーゼ 【英】tyrosinase 【独】Tyrosinase 【仏】tyrosinase
カテコールオキシダーゼcatechol oxidaseともいう.1, 2‐benzenediol:oxygen oxidoreductase 1 とmonophenoldihydroxy phenylalanine:oxygen oxidoreductase 2 の両者をさす.後者はCu2+を必要とする.メラニン合成細胞においては,前駆体L‐DOPAはチロシン水酸化酵素によってでなく,チロシナーゼによって合成され,さらに酸化されてDOPAキノンを経て,メラニンに至る.本酵素の欠損症が白子albinismである(チロシナーゼ陽性の白児症*
もある).β‐チロシナーゼとは,大腸菌などに存在し,チロシン+H2O→フェノール+ピルビン酸+NH3を触媒するピリドキサル酵素,L‐tyrosine phenol‐lyaseをさす. →図 |
の酸化作用により生じるド〔ー〕パ*DOPA,次いでドーパキノンdopaquinoneを経て生成されるが,アルカリ難溶性の黒色メラニン(ユーメラニンeu‐melanin)は,5,6‐ジヒドロキシインドール5,6‐dihydroxyindoleが主となった重合体である.メラニンの生成はメラノサイト*melanocyte内でメラノソームと呼称されるチロシナーゼを含有する細胞内小器官中で行われる.メラノソームはその成熟過程でメラニン生成を行い,これを自己の内部構造に沈着させる.したがって生体内では黒色メラニンはメラノソームという細胞内小器官の構成成分として存在している.黒色メラニンは光線に対する防御作用を有している.黄色メラニンはドーパキノンよりシステイン,グルタチオン*,γ‐glutamyltranspeptidase(γ‐GTP)の関与のもとに別の代謝路を経てシステイニールドーパcysteinyl dopaを主中間代謝物として生成され,アルカリ易溶性のフェオメラニンpheo‐melaninである.黒人は黒色メラニンが多く,北欧の白人ほど黄色メラニンの割合が多い.