あおそこひ

アオソコヒ

緑内障の俗称.→緑内障

緑内障

リョクナイショウ

【英】glaucoma

【独】Glaukom, gru¨ner Star

【仏】glaucome

【ラ】glaucoma

緑内障というのはその眼が耐え得る以上の眼内圧亢進によって視機能が障害を受ける疾患である.先天異常によるもの,種々の眼疾や外傷や手術などに続発するもの,遺伝的素因や構造上から隅角~房水流出路に異常が起こる原発緑内障*が区別される.新生児から高齢者までいずれの年代にも発症するが,とくに中年以降に頻度が高くなるので失明につながる成人病の一つとして,早期診断や予防を含めた早期治療の必要性が叫ばれている.緑内障の診断には眼圧検査だけでなく,隅角鏡検査*や細隙灯顕微鏡検査*,眼底検査や視野検査などが重要であって,総合的に病型や病期を含めて臨床診断が下される.眼圧が高いだけで他に異常のない開放隅角眼の場合は高眼圧症*ocular hypertensionと呼ばれて緑内障と区別される.また,正常眼圧を示すものの視野や視神経乳頭に緑内障性変化を認める場合は低眼圧緑内障*low tension glaucomaと呼ばれる.緑内障の治療には薬物と手術が使い分けられるが,薬物治療はピロカルピン,エピネフリン,β遮断薬,ある種のプロスタグランジンなどの点眼薬と炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラミドなど)や高浸透圧剤の全身投与を組み合わせて,眼圧下降効果と副作用の状況を判断して最も有用な治療薬を個々に決める.手術は薬物では無理と判断されたときに術式が選定されるが,顕微鏡手術の応用で合併症を少なく安全で効果的な術式が採り入れられている.さらにレーザー療法も緑内障治療に加えられるようになった.

隅角鏡検査法

グウカクキョウケンサホウ

【英】gonioscopy

【独】Gonioskopie

【仏】goniosopie

【ラ】gonioscopa

同義語:前房隅角視診法

 

隅角を観察するためには隅角鏡を用いるが,直視型(Koeppe型)と反射型(Goldmann型)の2種類があり,それぞれの特徴を生かして使い分けられる.一般に,直視型は隅角を展望し,広範囲の写真を撮影したり,直視下で隅角切開を加える手術に最適である.一方,反射型は細隙灯顕微鏡下で詳細な観察を行ったり,レーザー照射を隅角線維柱帯を的に行ったりするのに最適である.隅角鏡検査によって,シュワルベ線や線維柱帯や毛様体帯や強膜岬を観察できるが,その観察の難易性から隅角の広・狭や開放・閉塞の程度と範囲を知ることができる.また,虹彩突起や色素沈着や隅角解離や異物,出血,滲出,腫瘍といった種々の前眼部異常を見出すことによって,緑内障*の病型分類に必須であるばかりでなく,種々の疾患の診断や散瞳薬の使用の可否など幅広い有用性をもつ検査法である.

→図

細隙灯顕微鏡検査

サイゲキトウケンビキョウケンサ

【英】slitlamp microscopy

【独】Spaltlampenmikroskopie

【仏】slitlampe microscopie

【ラ】microscopium ad lampadam

 

細隙灯顕微鏡を用いて行う検査をいう.1911Gullstrandが細隙灯を作製し,以後Vogtが照明系の改良を行い均一な細隙光が得られる細隙灯が作られた.基本的には照明系と観察系から構成されている.使用するレンズによって1040倍に拡大して観察することができる.観察法としては,散光照射法,直接照射法,間接照射法,反帰光線法,鏡面反射法,振動法などがある.観察対象としては,睫毛の状態,結膜では血管の状態,結膜濾胞と乳頭増殖の形,球結膜の房水静脈など,角膜では角膜上皮欠損の範囲と形,潰瘍の深さと細胞浸潤の程度,実質の混濁の広がり,新生血管の深さ,デスメ膜の皺襞,角膜裏面への沈着物とその性状など,鏡面反射法を用いると角膜内皮細胞の形,大きさ,配列の状態なども観察できる.前房では,前房の深度,細胞,炎症性細胞,赤血球,色素細胞,タンパクの有無とその程度,線維素析出の状態など,虹彩では新生血管の様子,虹彩面上の結節形成の有無,角膜あるいは水晶体との癒着の状態などを知ることができる.水晶体では位置の異常の有無,大きさ,形の変化,混濁の範囲と程度,硝子体では混濁の有無と程度が観察できる.さらに隅角鏡gonio lensを用いると隅角部の変化,すなわち新生血管,隅角癒着の有無を詳細にみることができ,三面鏡,ルービーレンズHruby lensなどを用いると眼底の後極部,周辺部の拡大観察,立体的観察などができる.goniocycloscopeを用いると毛様体突起の拡大観察を行うことができる.付属した器械として圧平眼圧計applanation tonometerを接続して眼圧,角膜厚計を接続して角膜の厚さ,前房深度計を接続して前房深度などの定量的な測定が可能である.

高眼圧症

コウガンアツショウ

【英】ocular hypertension

 

眼圧*intraocular pressure21mmHgを超えているのに,原発開放隅角緑内障*に伴うような,乳頭陥凹,視野異常を伴わない病態をいう.しかし,長期観察によって,開放隅角緑内障openangle glaucomaへ移行する頻度が低くないので,降圧点眼薬の使用を行ったほうがよいという見解が強い.

眼圧

ガンアツ

【英】intraocular pressure(IOP),ocular tension

【独】Augendruck, intraokula¨rer Druck, Augenbinnendruck

【仏】tension oculaire

【ラ】tensio intraocularis

同義語:眼内圧

 

眼球は強靱な膜(角・強膜)に包まれて,そのなかに房水,水晶体,硝子体,網膜,ぶどう膜を内蔵している.そのなかで房水と血液の容量の変化がもっとも眼内圧の維持・変動に関与し,とくに房水の循環(産生,流動,流出)が一番重要な役割を果たしているし,眼内動脈圧と眼外の上強膜静脈圧が影響を与える.正常眼圧は1021mmHgの範囲で,座位では15.6±2.5mm Hg,仰臥位では16.5±2.6mmHg(平均値±標準偏差)である.したがって,21mmHgを超える場合には臨床的に高眼圧と考えられて緑内障の疑いがもたれる.また,10mmHg以下の眼圧は低眼圧とみなされる.眼圧に影響する因子として,動脈圧は正の相関があるが,眼圧調整機構が正常では働いているので高血圧の人の眼圧が高いわけではない.静脈圧はもっと直接に正の相関があり,眼窩内の静脈うっ滞や頚静脈圧迫は眼圧を高める.血液浸透圧は負の相関で眼圧に影響するので,高張浸透圧剤は減圧剤として治療に,飲水試験は緑内障負荷試験として診断に用いられる.血液・房水柵が炎症や外傷で障害されると眼圧は一般に亢進し,次いで低下する.炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラミドなど),副交感神経刺激薬(ピロカルピンなど),交感神経薬(エピネフリン,β遮断薬など)の薬物は眼圧を下降させ,ステロイドや散瞳薬は時に眼圧を上昇させる.眼圧測定は緑内障*のみならず,多くの眼疾の診断上重要である.

低眼圧緑内障

テイガンアツリョクナイショウ

【英】low tension glaucoma

 

眼圧*が正常範囲にありながら,視神経乳頭陥凹(→緑内障性視神経乳頭陥凹),視野異常など,原発開放隅角緑内障*と同じような機能障害が進行する.正常眼圧緑内障normotensive glaucomaとも呼ばれるようになった.最近の疫学調査によると,頻度は決して低いものではない.治療法としては,眼圧下降薬の点眼,視神経の血流を増加させる目的で,Ca拮抗薬などを用い,眼圧を10mmHg以下にしておく必要があるといわれている.→緑内障

緑内障性視神経乳頭陥凹

リョクナイショウセイシシンケイニュウトウカンオウ

【英】glaucomatous cupping of the optic disc

【独】glaukomato¨se Exkavation der Papille

【仏】excavation glaucomateuse de la papille du nerf optique

【ラ】excavatio glaucomatosa

 

緑内障*はとくに視神経を障害するが,その変化は視神経乳頭*に特有な辺縁性乳頭陥凹としてみられる.陥凹は緑内障の進行とともに上・下耳側に伸展し,次第に全方向に拡大し,篩板が露出するようになる.辺縁幅は狭細化し,血管は鼻側におしやられ,陥凹部は蒼白化してくる.こうした乳頭変化は当然視野変化と相関するので,検眼鏡*や立体眼底カメラを駆使して変化を把握し,網膜神経線維層の欠損やC/D比(cup/disc ratio;陥凹/乳頭径比)などとともに緑内障診断に欠かせない所見である.

視神経乳頭

シシンケイニュウトウ

【英】optic disk, optic disc

【独】Papille

【仏】papille

【ラ】papilla nervi optici

同義語:乳頭papilla

 

網膜神経線維が集束して眼球外へ出る部位を視神経乳頭,または単に乳頭と呼ぶ.その部位はほぼ円形でやや盛り上がってみえるのでその名がある.視神経乳頭の中央部は軽度に陥凹している.これは生理的陥凹と呼ばれ,乳頭の表面に存在していたグリア細胞の集団が硝子体動脈の消退に伴って,萎縮消失した部分である.進行した緑内障では神経線維が変性して視神経乳頭陥凹cupping of the optic diskが大きくなる.これを緑内障性視神経乳頭陥凹*と呼ぶ.

検眼鏡

ケンガンキョウ

【英】ophthalmoscope

【独】Ophthalmoskop, Augenspiegel

【仏】ophthalmoscope

【ラ】ophthalmoscopium

 

直像検眼鏡direct ophthalmoscopeと倒像検眼鏡indirect ophthalmoscopeとに二大別される.直像検眼鏡は被検者の屈折系を凸レンズとして拡大鏡のように使用し,拡大された正立の虚像として眼底像を観察する方法である.この場合は拡大率は被検眼の屈折状態によって異なるが,約15倍である.原理からみて被検者の眼底に瞳孔を通して光を送るための光源と光学系,被検眼と検眼の両方を正視,無調節の状態とする補正レンズとが必要となる.倒像検眼鏡は被検眼の眼前に集光レンズをおき,そのレンズの焦点距離の付近に倒立の実像を結ばせて観察する方法である.この時の拡大率は+20 Dの集光レンズを使用したときに約3倍である.直像検眼鏡では高倍率の検査が比較的容易に行えるが,観察範囲が狭い.これに対し倒像検眼鏡では低倍率であるが観察範囲が広く,眼底の周辺部の観察にも適している.また,双眼倒像検眼鏡binocular indirect ophthalmoscopeを用いれば,立体観察も可能である.