亜急性硬化性全脳炎
アキュウセイコウカセイゼンノウエン
【英】subacute
sclerosing panencephalitis(SSPE)
【独】subakute
sklerosierende Panencephalitis
【ラ】panencephalitis
scleroficans subacuta
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は麻疹ウイルスによるスローウイルス感染症*
ミオクローヌス(ミオクロニー)
ミオクローヌス
【英】myoclonus,
myoclonia
【独】Myoklonus,
Myoklonie
【仏】myoclonie
同義語:筋クローヌス,筋間代,間代性筋痙攣
ミオクローヌスは,舞踏病様運動よりも急速かつjerkyで,規則性のない不随意運動である.表面筋電図で記録すると,共働筋,拮抗筋に持続のきわめて短い筋放電が同時に出現していることが多い.この責任病巣は大脳皮質から脊髄まで広範囲で,病因も多様である.最近ミオクローヌスの発症機序の解明が進展し,種々の立場から分類が試みられている.ミオクローヌスは,てんかん性と非てんかん性に二大別され,てんかん性ミオクローヌスは,脳波上のてんかん性発射に一致して出現するものをいう.非てんかん性ミオクローヌスの多くのものは,自発的にも存在するが,光,音,触,筋伸展などの感覚刺激および随意運動の際により誘発ないし増強される傾向がある.とくに随意運動により誘発される傾向の強いものは動作性ミオクローヌスaction myoclonusという.ミオクローヌスに対しては抗痙攣薬を中心とした薬物療法が行われる.
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で,小児(6~14歳)に多くみられる.〔臨床症状〕知能障害*
知能障害
チノウショウガイ
【英】intelligence
impairment
知能が何らかの原因で障害され,低下した状態にあること.知能障害があると判定する場合,意識が清明で疎通性が保たれ,精神病状態がないことが前提になる. 1)精神遅滞*mental retardation, 2)痴呆*dementiaの2つのタイプがある.
精神遅滞
セイシンチタイ
【英】mental retardation
【独】Oligophrenie
【仏】arrie´ration mentale
【ラ】oligophrenia
同義語:精神薄弱Schwachsinn
一般的な知的機能が明らかに平均よりも低く,同時に適応行動の障害を伴う状態で,それが発達期に現れるものを精神遅滞という.知的機能は知能指数IQとして測定され,IQにより程度別の分類がなされている.すなわち,IQが50‐55~おおむね70を軽度(軽愚moron,魯鈍debility, Debilita¨t),IQが35‐40~50‐55が中等度(痴愚imbecility),IQが20‐25~35‐40を重度(白痴 idiot),IQが20‐25以下を最重度としている.アメリカの精神薄弱学会では精神遅滞の診断に当たっては慎重であるべきだとして,次の注意を与えている.すなわち, 1)知的機能の発達の程度にのみとらわれず,適応行動上の障害を十分に勘案すること, 2)医学的,心理学的,社会学的な臨床所見のすべてを基礎にすること, 3)テストによる指数は,あくまでも判定のための一資料として,これを絶対視しないこと,などである.精神遅滞には原因疾患が明らかな場合があったり,合併症を有する場合があり,これらの場合は,それぞれの対策が必要である.例えば原因疾患が先天異常であれば遺伝相談が必要であろうし,先天性代謝異常であればその治療法が必要になることがある.また,てんかん*を合併していれば,抗てんかん薬*による治療が必要である.→知能検査法
知能検査法
チノウケンサホウ
【英】intelligence test
【独】Intelligenzpru¨fung
【仏】test d'intelligence
知能検査は,個別法と集団法とに分けられる.個別法には乳幼児発達検査,ビネー式知能検査,ウェクスラー式検査などがある.乳幼児発達検査は障害児の発見や教育のための評価,健常児の発達評価などを目的とする.遠城寺式乳幼児分析的発達検査は発達年齢0歳~7歳6ヵ月を対象とし,被検者に課題を与え,移動運動,手の運動,言語運動,情意の発達,知的発達,社会的発達の6項目について発達指数を算出する.これに対して津守・稲毛,津守・磯部による乳幼児精神発達診断検査は,同じく0歳~7歳までの乳幼児を対象とする検査であるが,母親など養育者から情報を得ることによって行われる.そのため,検査施行が比較的簡単であるが,反面,養育者の主観に左右されやすい.検査結果は,年齢発達,発達指数(0歳~3歳のみ),下位項目のプロフィールによって示される.ビネー式検査はA. BinetとT. Simonが1905年に開発したものが最初で,L.A. Termanらによって,1916年,1937年にスタンフォード・ビネー知能検査として改訂された.わが国では1916年版をもとに鈴木・ビネー式が,1937年版をもとに田中・ビネー式が標準化され,後者は田研‐田中・ビネー式として改訂されている(→田中・ビネー検査).これらの検査は1,2歳から成人までを対象として,知能の一般的水準を総合的に評価することを目的としており,その内容に関する詳細な分析には向いていない.これに対してウェクスラー式検査(小児用WISC‐R,成人用WAIS‐R)は,知能をいくつかの下位検査からなる言語性知能,動作性知能に分けて評価するもので,知能指数のほか,下位検査のプロフィールを分析することができる.WISC‐Rは5歳~15歳,WAIS‐Rはそれ以上の年齢を対象とするが,IQが60を下回る精神発達遅滞(→精神遅滞)などの評価には適していない(→ウェクスラー・ベルビュー知能検査法).集団法では,小児について幼児用田中B式,新制田中A式,同B式,脳研式標準知能検査などがある.
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精神遅滞とは,先天性または出生後の早い時期に何らかの原因で知的発達が障害され,知能が低い状態に止まっているもの.痴呆とはいったん正常に発達した知能が,後天的な脳の器質障害のために持続的に低下した状態である.
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などの精神症状で発病し,ミオクローヌス*,筋硬直,さらに痙性麻痺*
痙性麻痺
ケイセイマヒ
【英】spastic
paralysis
【独】spastische
La¨hmung
【仏】paralysie
spastique
上位運動ニューロン障害でみられ,筋緊張(トーヌス)亢進,腱反射亢進,病的反射(バビンスキー反射*など)
バビンスキー反射
バビンスキーハンシャ
【英】Babinski's reflex
【独】Babinski‐Reflex
【仏】re´flexe de Babinski
同義語:バビンスキー徴候,バビンスキー現象,伸展性足底反射
1896年バビンスキーにより報告された反射で,足底の外側部を針やハンマーの柄などで踵から足趾の方へこすり上げると,母趾が背屈し,しばしば他の足趾が扇を広げた時のように開く(開扇現象funning sign)ものをいう.病的反射の中でもっとも重要かつ基本的な反射であり,その出現は同側の錐体路障害を意味する.この反射のもっとも基本的な反応は母趾の背屈であり,正常者にみられる底屈(flexor plantar response)に対しextensor
plantar responseと呼ばれる.この反射は神経発育の未熟な乳児期には正常にみられるが,成長と共に通常1歳ぐらいでみられなくなる.この反射をひき出す手技には種々の変法があり,チャドック反射*Chaddock
reflex,ゴードン反射Gordon r.(ゴードン現象*)
シェーファー反射
シェーファーハンシャ
【英】Schaeffer reflex
【独】Schaeffer‐Zehenzeichen
【仏】signe de Schaeffer
1899年にSchaefferにより拮抗反射antagonistischer
Reflexの名で記載されたもの.アキレス腱部を強くつまむと第1足趾が緩徐に背屈する現象をさすが,今日ではオッペンハイム反射Oppenheim reflex(1902),ゴードン反射Gordon reflex(1904),ゴンダ反射Gonda reflex(1942)などと共にBabinski徴候と同義,またはその手技の変法,反射誘発帯の拡大などと考えられている.したがって英仏系はもちろん,ドイツ語圏でもこの反射については成書にもほとんど記載されなくなった(Max Schaefferはドイツの神経科医,1852‐1923).→ゴードン現象,バビンスキー反射
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,ゴンダ反射Gonda r.,オッペンハイム反射Oppenheim r.,シェーファー反射*Schaeffer r.などと呼ばれている(Joseph
Francois Fe´lix Babinskiはフランスの神経学者,1857‐1932).
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の出現,巧緻運動の障害と筋力低下を特徴とする.上位運動ニューロンは錐体路と錐体外路に大別される.錐体路は大脳皮質のBrodmannの第4野から発し,脊髄前角細胞に終わる.錐体外路は第6野から発し,脊髄前角細胞に終わり,錐体路に対し促進性あるいは抑制性に作用し,巧緻動作を可能とする.錐体路が障害される時,ほとんどの場合は抑制性錐体外路の障害も伴うため,筋紡錘*の興奮性がたかまり,筋緊張亢進,腱反射亢進を示し,また巧緻運動が障害される.病的反射が出現する機序は十分にはわかっていない.筋肉は,後には非活動性萎縮をきたすこともある.上位運動ニューロン障害でも,錐体路および錐体外路障害の発症直後や,錐体路のみが単独で障害された場合(例えば第4野に局在する障害や,延髄錐体部における障害)は,弛緩性麻痺*が出現する.
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も加わり,やがて無動無言の状態となる.臨床検査では血清および髄液の麻疹ウイルス抗体価の上昇,髄液γグロブリンの増加,oligoclonal IgG,脳波上周期性同期性放電(PSD)を認めるのが特徴である.〔予後〕
不良で1~1.5年で死亡する.
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