悪液質性壊疽性膿瘡

アクエキシツセイエソセイノウソウ

【英】ecthymagangrenosumcachecticorum

 

→壊疽性膿瘡

悪液質性壊疽性膿瘡

アクエキシツセイエソセイノウソウ

【英】ecthymagangrenosumcachecticorum

 

壊疽性膿瘡

エソセイノウソウ

【英】ecthyma gangrenosum

【独】Ekthyma gangrenosum

【仏】ecthyma gangre´neux

【ラ】ecthyma gangrenosum

同義語:壊疽性深膿痂疹

 

定型的なものは緑膿菌*Pseudomonas aeruginosa

緑膿菌

リョクノウキン

【ラ】Pseudomonas aeruginosa

同義語:シュードモナス・エルジノーサ

 

グラム陰性好気性桿菌で芽胞を形成しない.シュードモナス属の代表菌種で,大きさ0.50.8×1.53.0μm,一端に1本まれに23本の鞭毛をもつ.単染色でよく染まる.わずかの有機物と水分が存在すれば増殖でき,土中,水中,ヒトの皮膚,腸管内に存在する.水溶性色素であるフルオレセインfluorescein(蛍光性黄緑色)とピオシアニンpyocyanine(青緑色)を産生する.ブドウ糖を酸化的に分解して酸を産生するが発酵は行わない.緑膿菌のビルレンスは弱く,健康人に対しては感染を起こすことは比較的少ない.しかし,消毒剤や抗生物質に抵抗性が強いため,感染防御機能の低下した患者や抗生物質長期使用中の患者に対しては緑膿菌感染症Pseudomonas aeruginosa infectionを引き起こす.その場合,敗血症,骨髄,気道,尿路,皮膚,軟部組織,耳,眼などの多彩な感染症を起こす.したがって,本菌は代表的な日和見病原体として注目され,病院〔内〕感染*(院内感染)の原因菌の一つとしても重視されている.→日和見感染

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の菌血症

菌血症

キンケツショウ

【英】bacteremia

【独】Bakteria¨mie

【仏】bacte´rie´mie

 

細菌が血液中より検出された場合は菌血症と呼ぶ.細菌の増殖が活発な場合を敗血症

敗血症

ハイケツショウ

【英】sepsis

【独】Sepsis, Septika¨mie

【仏】septice´mie

 

皮膚や粘膜の傷とか,種々の臓器にある感染巣から,細菌がリンパ流から血中に入り,全身に播種されて,新たに転移性の感染巣をつくる重篤な細菌感染症である.起炎菌には,ブドウ球菌,レンサ球菌などのグラム陽性球菌のほかにも,大腸菌,緑膿菌,肺炎桿菌,プロテウス*プロテウス

プロテウス

【英】proteus

【仏】prote´us

【ラ】Proteus

 

腸内細菌科に属する桿菌で,プロテウス属にはProteus vulgaris, P mirabilis, P myxofaciens, P penneri4菌種が含まれる.土壌,下水,汚物,ヒトや動物の腸管など,自然界に広く分布している.周毛性の鞭毛に覆われ活発な運動を行い,P vulgarisP mirabilisは普通寒天培地上では限局した集落を作らない傾向がある.一般には非病原性細菌と考えられているが,ときに尿路感染や創傷感染を起こすことがある.P vulgarisのある株はリケッチアと共通抗原をもっているので,リケッチア症の患者の血清と特異的な凝集反応を起こす.それを血清診断として応用したのがワイル・フェリックス反応*WeilFelix reactionであり,OX K株はツツガムシ病(→ツツガムシ病リケッチア)の,OX 19株は発疹熱や発疹チフスの患者の血清診断に利用される.しかし,この反応はリケッチアそのものに対する反応でないので信頼性に欠け,補助診断的な価値しかない.

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などのグラム陰性桿菌がある.抗生物質が多用される近年では,多剤に耐性のグラム陰性桿菌の占める率が多くなってきている.悪寒戦慄などを伴って,間欠性あるいは弛張性の高熱が出る.その他の罹患臓器の症状を伴う.敗血症では,細菌が産生するエンドトキシンの作用によって,血行動態*に異常をきたし,ショック状態となることが,しばしばみられる.この時には,早期に発見して,大量の副腎皮質ステロイドの投与,補液などの全身管理を行わないと,予後がきわめて不良となる.また,敗血症では,播種性血管内凝固が起こる.凝固機序が進行するために,フィブリノーゲン,血小板などの凝固因子が消費されて減少してくる.産生された血栓が,プラスミノーゲンの作用によって分解され,血中にフィブリン分解産物(FDP)が増加してくる.臨床的には,出血傾向がでて,皮下出血,歯齦(肉)出血,顕微鏡的血尿などがみられる(出血性敗血症haemorrhagic sepsis).この時には,ヘパリン*などを投与して,血管内の凝固機転を抑える.敗血症の診断には,血液培養にて起因菌を検出する必要がある.検出された起因菌に有効な抗生物質を十分に投与するのが基本である.一剤では不十分な場合には,ペニシリン系抗生物質,あるいはセフェム系抗生物質に加えて,アミノグリコシド系抗生物質などをそれに併用したりする.しかし,多剤に耐性の細菌が起炎菌の場合には,予後は不良である.

sepsisと呼んでいるが,その鑑別は明確ではない.顆粒球減少を誘因として腸内,口腔内などの常在菌や肺炎などの感染巣より病原菌が血中に侵入する.細菌毒素により敗血症ショックseptic shockや播種性血管内凝固症候群*(DIC)を起こす.血液培養により診断が確定するが,検出率がやや低いため最近はより感染の高い,細菌DNA bacterial DNAを増幅検出する方法も開発されてきた.

*の皮膚病変である.抗生物質,抗腫瘍薬,副腎皮質ステロイド,留置カテーテルなどの治療歴のあることが多い.何ら前駆症状なく突然生じて,菌血症の初発病変のこともあるし,菌血症の他の症状が出た後に出現するものもある.硬結,紅斑,出血斑,水疱性病変として始まり,やがて中央に黒色壊疽性組織を付した潰瘍となる.完成した病変は辺縁に紅斑性硬結を伴い,辺縁より鋭利に切れ込んだ打ち抜き状の深い潰瘍で,中央に黒色壊疽性組織をのせている.爪甲大から手掌大に及ぶこともある.単発ないし多発する.時間が経つと壊死組織は脱落し,潰瘍表面は膿性苔におおわれる.組織学的特徴は,フィブリン血栓,血管壁の破壊,血管周囲を取りまく菌の増殖であり,それにもかかわらず炎症性細胞浸潤がほとんどないことである.病変局所から緑膿菌が容易に培養される.血液,尿,糞便の培養も必要である.強力な抗緑膿菌療法が必須であるが予後は不良である.以上の急性型(Kreibich型)のほかに,亜急性・慢性に経過する慢性型(KortingAdam型)と呼ばれる壊疽性膿瘡があるが,これは緑膿菌の局所的感染病巣である.悪液質性壊疽性膿瘡ecthymagangrenosumcachecticorumという語は壊疽性膿瘡と同義であるが現在はほとんど使われない.