アカラシア

アカラシア

【英】achalasia

【独】Achalasie

同義語:食道無弛緩症esophageal achalasia

 食道下端14cm辺りの狭窄(機能的開大欠如)とその口側食道の異常拡大をきたす食道運動障害疾患である.原因は不明.固有筋層内のアウエルバッハ神経叢

アウエルバッハ神経叢

アウエルバッハシンケイソウ

【英】Auerbach's plexus

【独】AuerbachPlexus

【仏】plexus d'Auerbach

【ラ】plexus Auerbachi

同義語:筋層間神経叢plexus myentericus

 

上・下腸間膜動脈神経叢および胃神経叢から出る枝は,胃腸壁に入り腸筋神経叢をつくる.外層の縦走筋層と内層の輪走筋層との間に存在する多数の小さな神経節を有する神経叢をアウエルバッハ神経叢または筋層間神経叢という.粘膜下層には粘膜下神経叢が,漿膜下には漿膜下神経叢が認められ,前記3者を総称して腸筋神経叢plexus entericusenteric plexus)という.アウエルバッハが1862年にこの神経叢を神経節と共に発見し,アウエルバッハ神経叢と名付けた(Leopold Auerbachはドイツの解剖学者,18281897).

の神経節細胞の減少,または消失がみられるので,これらの異常のために蠕動の伝達とそれに続く食道下端部開大が連動しないものと考えられる.主症状は嚥下障害であり,食道内に食物の停滞・逆流がみられたり,胸骨後部痛もみられる.発症は環境の変化や精神的ストレスを契機に比較的急激にみられる.経過は慢性に経過することが多く,症状は軽快,増悪をくり返す.特に感情の乱れのつよい時に増悪しやすい.検査はX線造影,内視鏡検査,食道内圧検査,メコリール試験などが行われる.X線造影では,食道下端がスムーズな対称性の狭窄を呈し,その口側の食道が拡大している.食道の拡大幅は34cmくらいのものが多いが,著しい場合には610cmに達する場合もある.食道下端が開かないために造影剤は食道内に停留し,健常者では数秒間で胃内へ流れ込むはずの造影剤が,食道から胃へすべて流入するのに1時間くらいかかることもある.内視鏡では食道炎がみられ,癌との鑑別を要する.食道下端は閉じたままのことが多い.食道内圧検査では下部食道内圧は継続的に高値を示し,口側食道は拡張しているにもかかわらず陽圧を呈する.治療は,心身医学的治療.ニトログリセリン,硝酸イソソルビド,ニフェジピンの投与.生活指導.バルーンによる下部食道拡張術.重症例には手術適応も考える.