浅頚筋
浅頚筋(群) |
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分類 |
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部位 |
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ラテン名 |
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musculi colli superficiales |
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英名 |
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superficial muscles of the neck |
浅頚筋(せんけいきん)は頚部の筋肉のうち、表層にある筋肉の総称。筋肉の一方が皮膚で停止している皮筋である。
浅頚筋は、一般には広頚筋、胸鎖乳突筋が分類される。しかし、広義の浅頚筋と呼ぶ場合、舌骨筋群を総じて指す場合がある。
広頚筋
広頚筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
platysma |
英名 |
platysma |
広頚筋(こうけいきん)は頸部にある筋肉の一つ。下顎骨の下縁から、上胸部にわたる頚部の広い範囲の皮筋であることから名づけられた。首の表面に皺を関連する筋膜を緊張させ、口角を下方に引く働きを持つ。
広頚筋は、胸筋筋膜を起始とし、下顎骨下縁、咬筋筋膜、笑筋、口角下制筋、下唇下制筋に停止する。支配する運動神経は顔面神経頚枝である。
広頚筋
頚筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
platysma |
英名 |
platysma |
広頚筋(こうけいきん)は頸部にある筋肉の一つ。下顎骨の下縁から、上胸部にわたる頚部の広い範囲の皮筋であることから名づけられた。首の表面に皺を関連する筋膜を緊張させ、口角を下方に引く働きを持つ。
広頚筋は、胸筋筋膜を起始とし、下顎骨下縁、咬筋筋膜、笑筋、口角下制筋、下唇下制筋に停止する。支配する運動神経は顔面神経頚枝である。
胸鎖乳突筋 |
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頸部の筋肉。濃い赤色が胸鎖乳突筋 |
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頚背部の筋肉。濃い赤色が胸鎖乳突筋 |
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musculus sternocleidomastoideus[1] |
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Sternocleidomastoid |
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この筋の左右両方が収縮すると顎を軽く上方に上げつつ後頭を前方に引く。 |
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胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)は頸部にある筋肉の一つ。首を曲げ、回転させる働きを持つ。
胸鎖乳突筋という名前は、胸骨と鎖骨を起始とし、側頭骨の乳様突起(及び後頭骨)に停止するところからつけられた。支配する運動神経は副神経であり、知覚は頚神経叢が司る。血液は後頭動脈と上甲状腺動脈の枝である胸鎖乳突筋枝から供給される。
頸部を保護するという目的から競技能力の向上よりも怪我の防止という観点で鍛えられることが多い。頭にパンチを浴びるボクシング、首を抱え込む体勢が多いレスリングなど格闘技系の種目で特に重要視されるが、その他の競技(特にラグビー、アメフト)でも事故を防ぐために鍛えておいたほうがよいとされる。トレーニング種目としてはリバース・レスラー・ブリッジやネック・フレクションなどが存在する。
この筋が両側性にはたらくときには顎を軽く上方に上げつつ後頭を前方に引く。一側性に働く時には頭を反対側に回し、かつ傾ける。頭を固定してる時には、呼気筋として作用する。
胸鎖乳突筋の位置 アニメーション |
前面からの画像。 |
横からの画像。 |
背側からの画像。 |
頭部を側方に向けたヒト。胸鎖乳突筋が浮き出ている。 |
頭部を側方に向けたヒト。胸鎖乳突筋が浮き出ている |
頭部を側方に向けたヒト。胸鎖乳突筋が浮き出ている |
深頸筋
深頸筋(群) |
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分類 |
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部位 |
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ラテン名 |
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musculi colli profundi |
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英名 |
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deep muscles of the neck |
深頸筋(しんけいきん)は頸部の筋肉のうち、浅頸筋の下層にある筋肉の総称。
深頸筋は後頸筋とも呼ばれ、頸椎の前面と側面を縦走しながら後頭骨から上位肋骨にかけて構成している筋群である。
深頸筋に属する筋は、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、最小斜角筋、椎前筋(頭長筋、頸長筋、前頭直筋)である。
後頭骨
頭蓋骨をやや上方から眺めた動画。後頭骨は赤、それ以外の骨は透明にして示してある。大後頭孔と呼ばれる大きな穴が見える。(Anatomography) 後頭骨(こうとうこつ、英名 Occipital bone)は、頭蓋骨の後下部を構成する骨の一つであり、哺乳類における、脳頭蓋後部を形成する骨である。 形状は皿状台形で歪曲しており、大後頭孔と呼ばれる大きな楕円形の開口部が特徴的に見られる。発生学的には膜性骨とされる。 目次構造ヒトの後頭骨は、頭蓋の後下部に位置する骨[1]で、台形で曲がっている。大後頭孔と呼ばれる大きな楕円型の穴が開いており[1]、頭蓋腔と脊柱管とを結んでいる[2]。 主に後頭鱗・底部・外側部の三つの部位に分けられ、大後頭孔の後方にある曲がった広い板部を後頭鱗と言い、正面にあるやや四角形の部分は底部、両側を外側部という[1]。
後頭鱗大後頭孔の上方、および後方に位置している後頭鱗は、上下から前後に曲がっている。 外見外表面は凸面で、骨の上端と大後頭孔の中間に顕著な外後頭隆起がある。外後頭隆起から両側に二つの曲線がある。一つはもう一つより小さい。たいていは薄い上側の線を最上項線といい、帽状腱膜がついている。下側は上項線と名付けられている。最上項線の上部は、後頭平面といい、後頭筋がつく。また、上項線より下方は項平面といい、いくつかの筋肉が粗く不均一についている。外後頭隆起からたいていの場合弱い外後頭稜が大後頭孔まで下に伸び、項靱帯をもつ。外後頭稜の中間付近で下項線が横切る。いくつかの筋肉が後頭鱗の外部の表面に付く。上項線は後頭筋や僧帽筋の起始であり、胸鎖乳突筋や頭板状筋の停止である。上項線と下項線の間に頭半棘筋や上頭斜筋が停止する。下項線の下で大後頭直筋と小後頭直筋が停止する。後環椎後頭膜は大後頭孔の後部から側面の部分についている。 内部表面は深く凹面で、十字隆起により四つに分けられる[3]。上部の二つは、三角形で、大脳の後頭葉が入る場所である。下部の二つは四角形で、小脳半球が入る[4]。十字隆起の交点は内後頭隆起という[3]。十字隆起のうち、内後頭隆起から上方に伸びるものは、骨の優角に向けて伸びる。そして片方(一般的には右側)に上矢状洞溝後部にある矢状溝がある。十字隆起の下側は著明で、内後頭稜と言う。大後頭孔の近くで二叉に分かれて、小脳鎌に付く。内後頭稜の上部では、小さなくぼみが時々見られる。;小脳虫部の一部によって占められるので、vermian fossaと言う。横側の溝は、両側とも内後頭隆起から骨の側面まで伸びる。これを横洞溝と言い、その顕著な縁が小脳テントにつく。右側の溝は、左側のそれより通常大きく、上矢状洞溝から連続している。しかしながら例外も珍しくなく、左が大きい事もあればほとんど同じサイズの事もある。上矢状洞溝と横洞溝の結合する角は静脈洞交会といい、その位置はある側かその反対側にある、沈下状態にある内後頭隆起によって示される。大後頭孔
解剖学において大後頭孔(だいこうとうこう、ラテン語:Foramen magnum)とは、頭蓋骨の後頭骨 に位置する大きな開口部のこと[1]。頭蓋骨の底部に位置しており、脊髄の延長である延髄が通っている。大孔(だいこう)とも呼ばれる。ラテン語の Foramen magnum は「大きい(magnum)」「穴(foramen)」という意味。 延髄以外では脊髄副神経、椎骨動脈、前部と後部の脊髄動脈、蓋膜及び翼状靱帯が大後頭孔を通っている。 目次解剖ヒト穴の形状には個体差がある。ヒトにおいて観察される形状は、二重半円形(two-semicircular)、長円形(oval)、卵円形(egg-form)、菱形(rhomboidal)、円形(circular)の5つに分類される[2][3]。このうち生起頻度が最も高い(約半数)形状は、後方部に比べて前方部が少し狭まっている二重半円形である[2][3]。 穴の大きさは前後方向にやや長く、左右方向にやや狭い。大きさには個体差があるが、ヒト成人男子において観察される大きさの平均は、前後方向がおよそ35mm、左右方向がおよそ30mmである[2][3]。 比較解剖ニシゴリラの頭蓋底。大後頭孔はかなり後方に位置している。 ヒトでは大型類人猿 と比較して大後頭孔がより頭の下方・頭蓋底の中央寄りに位置している。したがって、ヒトでは頭部を直立させるために後頭前頭筋を含む首の筋肉がそれほど頑丈である必要はない。初期人類の大後頭孔の位置の比較は、その種が四足歩行ではなく、いかに快適に二足歩行していたかを判断するのに大変有用である。
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椎骨動脈
椎骨動脈(ついこつどうみゃく、英: vertebral artery)とは、首付近に左右に2本存在する、脳を栄養する重要な動脈の1つである。 目次走行左の椎骨動脈は左鎖骨下動脈に、右の椎骨動脈は右鎖骨下動脈に由来し、第六頚椎から第一頚椎にかけて存在する左右の横突孔内を下から上に貫通する。このような場所を走行しているため、首を後ろに大きく曲げる姿勢を取ると、この動脈が圧迫される。結果、この動脈での血流が悪くなり脳への血流が不足したりすることもある。また、首を後屈させる姿勢を長時間取り続けると、場合によっては動脈内に血栓を生ずることもあり、その後、首を動かすなどして血流が回復した時に、脳へと血栓が飛んで、最悪の場合、脳梗塞を発生させることもある。第一頚椎の横突孔を出ると内側に蛇行し、硬膜を突き破って脊髄腔内に入り、そのまま脊髄に沿って大後頭孔から脳内(後頭蓋窩)に入る。脳幹部に入ると左右それぞれ延髄の前外側を上行し、延髄と橋の境界の高さで左右が合流して一本の動脈“脳底動脈”となる。 分岐頚髄の高さ(脳に入る前)での椎骨動脈からは、脊髄動脈(根動脈)や筋枝を分岐している。また脳内に入ってからは、前脊髄動脈、左右の後脊髄動脈、左右の後下小脳動脈、左右の後硬膜動脈を分岐する。脳底動脈となってからはそれぞれ左右の前下小脳動脈、上小脳動脈を分岐した後、左右に分かれて後大脳動脈となり、後交通動脈につながってウィリス動脈輪を形成する。 栄養椎骨動脈が栄養する器官には、脳底動脈以降を含めて以下のものがある。 · 頚髄 · 延髄 · 橋 · 小脳 · 中脳 · 間脳の後部 病変椎骨動脈およびその分枝の狭窄や閉塞、解離により、脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血を起こすことがある。上記のようにこの血管が栄養している器官は生命維持に関わる部分であるだけに、椎骨動脈や脳底動脈本管の完全閉塞などの重大な病変では、致命的となることがある。ただし椎骨動脈そのものは左右に2本あるため、どちらか一方が完全閉塞してもまったく症状が現れないことが多い。正常でももともと左右のどちらか一方だけが発達しているのが普通である。 頭蓋骨カバの頭蓋骨 頭蓋骨(ずがいこつ、とうがいこつ)は、頭の全体的な枠組みとしてはたらく、有頭動物の骨様構造である。頭蓋骨は、顔の構造を支持し、脳を外傷から保護する。なお、一般的な読みとしては「ずがいこつ」「とうがいこつ」双方が用いられ、解剖学では「とうがいこつ」とのみ呼称、形質人類学では頭骨と表記して「とうこつ」と称し、「ずがいこつ」という読み方は学問的には用いられない。なお医療の場では他に橈骨が存在するため、「とうこつ」と呼ぶ事は稀である。英語ではskullまたはcranium、複数形craniaである。 白骨化した頭蓋骨は髑髏(どくろ、されこうべ、しゃれこうべ)と呼ばれる。頭蓋骨に関する文化的な側面はそちらを参照のこと。 目次ヒトの頭蓋骨
ヒトの場合では、成人の頭蓋骨は通常28個の骨から構成される。下顎を除いて、頭蓋の骨格はすべて縫合(移動をほとんど許さない厳密な接合)によって互いに連結されている。 8個の骨格が神経頭蓋すなわち脳と延髄を囲む骨の保護円蓋を形成する。14個の骨格が内臓頭蓋(顔を支持する骨格)を形成する。中耳の6個の耳小骨は側頭骨の内側に包まれる。喉頭を支持する舌骨は頭蓋骨の一部と通常見なさない。舌骨は他の骨と連結していないからである。 頭蓋骨の発生頭蓋は複雑な構造である。その骨格は膜性骨発生と軟骨性骨発生の両方によって形成される。内臓頭蓋の骨格、および神経頭蓋の側面および屋根は、膜性骨発生(あるいは真皮の骨化)によって形成される一方、脳を支持する骨格(後頭骨、蝶形骨、側頭骨、及び篩骨)は、おおむね梁軟骨や旁索軟骨などに起因する軟骨性骨発生によって形成されている。 誕生の時、ヒトの頭蓋骨は45個に分かれている骨的要素から構成される。成長とともに、これらの骨的要素の多くは、徐々に癒合して硬骨(例えば前頭骨)になる。頭蓋の天井をなす頭蓋冠は、前頭縫合、矢状(しじょう)縫合、ラムダ縫合、冠状縫合、鱗状縫合と呼ばれる5つの縫合という緻密性結合組織によって分けられる。新生児は産道を通過するときや成長のため、これらの部位は繊維状で移動可能になっている。 縫合の交点にある比較的広い結合組織の部分は泉門とよばれる。成長および骨化が進行するにつれ、泉門の結合組織に骨が入り込み、置き換わる。後部の泉門(小泉門)は、通常8週までに閉じる。しかし、前部の泉門(大泉門)は18か月まで残っていることがある。前部の泉門は、前頭骨と頭頂骨の交点に位置し、赤ん坊の額にある「ひよめき」と呼ばれるものである。注意深く観察すれば、前部の泉門を通して赤ん坊が柔らかに脈打つのを観察することにより、赤ん坊の心拍数を数えることができることがわかるだろう。 病理脳が外力をうけたり損傷した場合、重症になることがある。通常は、頭蓋骨はその硬い性質により損傷から脳を保護するが、髄膜血管の出血や、脳自体の損傷によって、頭蓋内圧が高くなることがありえる。脳が膨張するための空間がないので、過大な頭蓋内圧が進行すると、大孔(大後頭孔)から延髄~脳幹部が脱出し、最終的にはヘルニアとなる(大後頭孔ヘルニア)。この段階に達すれば死は不可避であり、緊急手術により予防的な内圧低下措置が必要である。このため、脳に損傷を受けた患者は注意深く観察しなければならない。受傷直後は症状、頭蓋内圧上昇が軽微であっても、脳浮腫が時間とともに進行し、急激な転帰を見せることは珍しくない。 古来より、穿頭と呼ばれる頭蓋骨の手術が、単に人命救助の技術としての試みというだけではなく、しばしば神秘的な理由で実行されている。 頭蓋骨はさらに鼻腔穴を含んでいる。髄膜は頭蓋骨と脳を分ける薄膜である。 目や髪、肌の色といった骨に残らない特徴とともに頭蓋も系統関係を示すことは考古学者や法医学者に知られている。 ヒトの頭蓋骨を構成する骨
耳小骨ウォーム骨 (インカ骨を含む)通常の骨化の中心のほかに、他のものが生じることがあり、そうした過程では、縫合骨あるいはウォーム骨(Wormian bones)と名づけられた不規則な孤立した骨が生じる。それらは、ラムダ縫合に最も頻繁に生じる。泉門、特に後部泉門で時々見られが、ここに生じた大きなサイズの骨をインカ骨と呼ぶこともある。別の部位に生じるこの種の骨、プテリオン小骨は、頭頂骨の蝶形の隅と蝶形骨の大翼の間にできることがあって、多かれ少なかれ頭蓋骨の両横に左右対称に位置するがサイズが異なる傾向を持っている。それらの数は、一般に2または3個までに限られるが、成人の水頭症患者の頭蓋骨で100個以上が見つかったことがある。 頭蓋骨のその他の特徴頭蓋骨の孔以下は頭蓋骨に開いている孔と、その孔を通っているものの一覧である。 腹側から背側の順で並んでいる。
顕著な縫合線ほとんどの縫合線は、そこで接合する骨によって呼称する。 しかし、いくつかのものは特別の名前を持っている。
脊椎動物の頭蓋骨概要頭蓋骨の構成と発生 |
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脊髄図1 頸髄の断面模式図。 脊髄(せきずい、英: spinal cord)は、脊椎動物のもつ神経幹。脊椎の脊髄腔の中を通り、全身に枝を出す。脳と脊髄を合わせて中枢神経系と称する。 目次構造ヒトの脊髄は、延髄の尾側に始まり、第一腰椎と第二腰椎の間の高位で脊髄円錐となって終わり、終糸と呼ばれるひも状の繊維につながっている。 脊髄から直接出ている神経は神経根と呼ばれ、神経根が脊髄腔から出る高位によって、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられる。ただし人間では、尾髄は退化的である。脊髄は脊椎より短いため、脊髄の高位と脊椎のそれとは一致しておらず、脊髄の末端より下位の脊髄腔には神経根のみが伸びており、馬尾と呼ばれる。 脊髄の断面図3 脊髄断面 図4 左:灰白質のレクセドの層分類。右:他の呼び方。 脊髄の断面は、縦走する神経細胞で構成される白質が、神経核(神経細胞体の集まり)である灰白質を囲む構造となっている。なお、逆に脳では灰白質が白質を囲む構造となっている。中央には第4脳室の続きである中心管がみられ、脳脊髄液で満たされる。灰白質部分は、(図6下側より)前角、側角、後角に分かれ、脳から降りてきた運動に関わる神経は脊髄前角で運動ニューロンにシナプスを作って連絡する。この連絡箇所は上肢・下肢に向かうニューロンが出る際に多くなり、頚部には頚膨大、腰部には腰膨大の膨らみとして肉眼でも観察できる。 灰白質は、存在する神経細胞の性質によって分類される。前角には遠心性神経の細胞体があり、脳から降りてきた運動に関わる神経は脊髄前角で下位運動ニューロンにシナプスを作って連絡する。後角には末梢から入る求心性神経とシナプスを形成する神経細胞体がある。また腰髄・胸髄だけに側角があり、ここには交感神経の神経細胞体がある。灰白質はさらに組織学的に幾つかの部分に分類される。さまざまな分類方法があるが、最も広く用いられているのは、ブロール・レクセド による層分類である。レクセドはネコの脊髄を使って灰白質をIからXまでの10層に分類した[1][2][3]。 白質は大きく前索、側索、後索に分けられる。それぞれ、前索は前根の間、側索は前根と後根の間、後索は後根の間に概ね相当する。前索には上行路として前脊髄視床路、下行路として内側縦束、前皮質脊髄路、視蓋脊髄路、橋網様体脊髄路、前庭脊髄路、延髄網様体脊髄路がある。側索には上行路として脊髄視蓋路、脊髄オリーブ路、外側脊髄視床路、前脊髄小脳路、後脊髄小脳路が、下行路として赤核脊髄路、外側皮質脊髄路がある。後索には上行路として薄束、楔状束が、下行路として半円束、中間縁束がある。また、前索、側索、後索のいずれの部分でも、灰白質と接した部位は脊髄内の上下の連絡を行う神経線維の通る部分で、ここを固有束という。(主な伝導路については後述する) 脊髄は髄膜と呼ばれる三層の膜に包まれており、外側から硬膜(脊髄硬膜)、クモ膜(脊髄クモ膜)、軟膜(脊髄軟膜)と呼ぶ。すべての髄膜は大脳半球および脳幹を包むそれぞれの膜と一体になっている。脳と同様、クモ膜下腔には脳脊髄液が存在する。神経根の間の軟膜の外側は歯状靱帯となって硬膜に付着し、脊髄を固定している。硬膜は第二仙髄の高位で閉じている。 脊髄の分節ヒトの脊髄は31の分節に分かれており(これを髄節と呼ぶ)、それぞれの髄節の左右の腹側から運動神経根が、背側から感覚神経根が末梢に出ている。腹側神経根と背側神経根はやがて合わさって脊髄神経となる。 31対の脊髄髄節はヒトでは以下に分類される。
脊椎は脊髄に比べて成長が早く、最終的に長くなるため、成人では下位の脊髄髄節になるほど、対応する高位の脊椎骨に比べて高い位置にある。発生のはじめ(胎生3ヶ月まで)では脊椎と脊髄の高さは一致しているが、成人の脊髄の終わり(脊髄円錐)はだいたい第一腰椎と第二腰椎の間になる。腰仙髄は第九胸椎から第二腰椎の間にあり、例えば第四仙髄の神経根は胸腰椎移行部のあたりで脊髄から出て脊柱管内を下行し、第四仙椎の下から出る。脊髄円錐より下は馬尾と呼ばれる。 脊髄の径は、次の二つの部位で大きくなっている。
図5 翼板と基板での脊髄神経の発生。 発生脊髄は神経管の一部から作られる。神経管が形成され始めると、脊索はソニック・ヘッジホッグ (SHH) を分泌する。これによって底板(神経管の腹側正中にできる部分)が誘導され、さらに底板からもSHHが分泌されて基板(神経管腹側の主に運動神経となるもとの部分)が誘導される。一方外胚葉からは骨形成タンパク質 (BMP) が分泌され、これは蓋板(背側正中にあり、翼板を左右に分ける)を誘導し、さらに蓋板もBMPを分泌して翼板(神経管背側の主に感覚神経となるもとの部分)が誘導される。翼板と基板は境界溝で区切られている。 また底板はネトリンタンパク質も分泌する。ネトリンは翼板の神経細胞のうち、温痛覚ニューロン(後述)に正の走化性を起こす誘引物質として働き、この神経の軸索を中心管の前(脊髄白前交連という)で交叉して反対側の腹側を上行し、視床まで進ませる(前脊髄視床路という、後述)働きをする。 神経系が正しく組み立てられるには、神経細胞でもプログラム細胞死 (programmed cell death, PCD) によって細胞が削ぎ落とされる必要があり、これはかつてヴィクトル・ハンブルガー とリータ・レーヴィ=モンタルチーニによってニワトリで研究されたが、最近の研究でも証明されている。 図6 脊髄伝導路。 感覚系伝導路体性感覚性神経系には、触覚・固有覚(位置覚と振動覚)を伝える後索・内側毛帯路と、温痛覚(温度覚と痛覚)を伝える脊髄視床路の二つの伝導路がある。 どちらの伝導路も、感覚受容器から大脳皮質に情報が伝わるまでに3種類のニューロンがかかわっている。このニューロンを末梢から順に一次・二次・三次ニューロンという。一次ニューロンは脊髄後根神経節に細胞体があり、そこから末梢の感覚受容器と脊髄の両側に軸索を伸ばしている。 触覚・固有覚の経路(後索・内側毛帯路)では、一次ニューロンは脊髄に入ると同側の後索を上行する。第六胸髄以下のニューロンは後索の内側寄りにある薄束を通る。それより上のニューロンは後索の外側にある楔状束を通る。一次ニューロンは延髄に入るとそれぞれ薄束核、楔状束核と呼ばれる神経核でシナプスを形成しニューロンを交代する。二次ニューロンは延髄で交叉(左右のニューロンが入れ替わる)し、内側毛帯と呼ばれる束になってさらに上行して視床の後外側腹側核(VPL核)に入り、三次ニューロンとシナプスを形成する。三次ニューロンは視床から大脳の内包後脚を通り、頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野に至る。 温痛覚伝導路は、また異なった経路を通る。痛覚の一次ニューロンは脊髄に入ると1-2髄節上行または下行して後角膠様質でシナプスを形成する(この数髄節上行または下行する経路を後外側路あるいはリサウエル路という)。シナプス後の二次ニューロンは対側に交叉し、脊髄の前外側を視床まで上行する(前脊髄視床路が触覚を、外側脊髄視床路が温痛覚を伝える)。このため、脊髄視床路は前外側系とも呼ばれる。二次ニューロンは視床の後外側腹側核(VPL核)で三次ニューロンとシナプスを形成する。三次ニューロンは内包後脚を通って、頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野に投射する。 前外側系のニューロンは視床に投射するだけではなく、途中で脳幹網様体にも軸索が伸びている(脊髄網様体路)。この網様体からはさらに海馬(痛みの記憶を形成する)、視床の正中中心核(CM核、漠然とした痛みを感じる)など大脳や間脳のさまざまな場所に投射している。中脳中心灰白質(中脳水道周囲灰白質)にも二次ニューロンは投射しており、ここから延髄の大縫線核、さらに脊髄へと投射があって、痛覚信号の入力があるとそれを抑制する働き(負のフィードバック)を持つ。これによって痛み刺激が軽減される。 運動系伝導路頸髄レベルでの脊髄の断面図。運動系の伝導路は外側皮質脊髄路、赤核脊髄路、前皮質脊髄路などがある。 上位運動ニューロンによる入力は、大脳皮質および脳幹の神経核から来る。軟質骨上位運動ニューロンは骨髄脊髄路と呼ばれる。ブロードマンの脳地図の4野(一次運動野)、6野(運動前野)、1-3野(体性感覚野)および5野(頭頂葉体性感覚連合野)に始まり[4][5]、内包の膝および後脚を通って大脳脚、橋から延髄の錐体に至る。ここで運動ニューロンの軸索のうち約85%が対側に交叉し、脊髄の外側皮質脊髄路を下行する。残りの約15%のニューロンは同側の前皮質脊髄路を下行する。その名と異なって、中心前回(一次運動野)第V層のベッツ細胞(巨大錐体細胞)に始まる上位運動ニューロンは数の上では少数であり、ヒト以外の霊長類では60%以上の上位運動ニューロンが運動前野から起始していることが明らかになっている[6]。 脳幹からは4つの運動伝導路が上位運動ニューロンを出している。赤核脊髄路(中脳の赤核より)、前庭脊髄路(橋延髄境界にある外側前庭核より)、視蓋脊髄路(中脳の上丘より)、網様体脊髄路(橋および延髄の網様体からそれぞれ)の4つである。赤核脊髄路は側索(皮質脊髄路のすぐ前方)を、その他の運動路は前索を下行する。 下位運動ニューロンの機能は、外側皮質脊髄路および前皮質脊髄路の二つで異なっている。外側皮質脊髄路の上位運動ニューロンの軸索は、脊髄前角のうち背外側 (DL) 下位運動ニューロンとシナプスを形成する。DLニューロンは四肢遠位の巧緻運動を支配する。四肢に関係するので、DLニューロンは脊髄のうち頸膨大および腰膨大の灰白質にのみ存在する。外側皮質脊髄路は延髄錐体で交叉した後は、脊髄では交叉しない。 一方前皮質脊髄路の上位運動ニューロンは、大脳皮質と同側の脊髄前索を下行し、その軸索は同側の脊髄前角のうち腹内側 (VM) 下位運動ニューロンとシナプスを形成するか、あるいは白前交連で対側に交叉した後、その高位の髄節内にあるVM下位運動ニューロンとシナプスを形成する。脳幹に始まる赤核脊髄路、視蓋脊髄路および前庭脊髄路の上位運動ニューロンも同側の脊髄前索を下行するが、これらのニューロンは交叉を行わず、同側の脊髄前角にあるVMニューロンとシナプスを形成する。VM下位運動ニューロンは、体幹の大きな姿勢筋(脊柱起立筋など)を支配する。VM下位運動ニューロンはDLニューロンと異なり、脊髄のすべての高位の前角内に見られる。 脊髄小脳路固有覚の情報は、大脳皮質だけでなく小脳へも伝えられ、その経路は3つある。第二腰髄以下の固有覚情報は、感覚受容器(ゴルジ腱器官や筋紡錘)から腹側脊髄小脳路または前脊髄小脳路と呼ばれる経路を通って脊髄に入る。一次ニューロンの神経細胞体は脊髄後根神経節にある。脊髄に入ると、二次ニューロンとシナプスを形成する。二次ニューロンの神経細胞体は脊髄前角の辺縁にあり、脊髄境界細胞と呼ばれる[7]。二次ニューロンは交叉して対側にわたり、側索の前外側辺縁を上行し、橋上部の上小脳脚から小脳に入る。多くの神経線維は再び交叉して小脳虫部前部に投射する。 第二腰髄から第一胸髄までの固有覚を伝える一次ニューロンは、脊髄後角基部の背核(胸髄核、クラーク核とも)とシナプスを形成する。二次ニューロンは交叉せず、同側の脊髄側索の後外側を上行し、下小脳脚から小脳に入って小脳虫部の吻側部および尾側部に投射する。この経路は背側脊髄小脳路(後側脊髄小脳路)と呼ばれる。 第八頸髄から上位の固有覚一次ニューロンは、脊髄に入るとそのまま後索を上行し、延髄の副楔状束核(外側楔状束核)でシナプスを形成する。二次ニューロンは下小脳脚から小脳に入り、同側の小脳半球皮質の第V小葉に投射する。この経路は副楔状束核小脳路と呼ばれる。 脊髄損傷「脊髄損傷」を参照 脊髄損傷は首や背中からの落下、あるいは脊髄の除去または何らかの理由による切断で起こる。椎骨や椎間板が破壊され、骨の鋭利な破片が脊髄を傷害することもある。脊髄損傷を被った人は、通常体の一部の感覚低下がある。さらに軽症で手や足の機能の障害、重症の場合は対麻痺や四肢麻痺、あるいは損傷部位以下の全機能の喪失が起き、最悪の場合呼吸困難を引き起こし死に至る場合もある。 上位運動ニューロン線維の損傷があると、傷害部位と同側に特徴的な症状が現れる。腱反射の亢進や筋緊張の亢進、あるいは筋力の低下などが起きる。また下位運動ニューロン線維の損傷の場合にも特徴的な症状が出る。障害側の全体ではなく、傷害を受けた神経の支配筋だけが影響を受ける。また筋力低下、筋緊張の低下、腱反射の減弱や消失、筋萎縮などが起きる。 脊髄損傷をもっとも起こしやすい部位は、頸髄および腰髄である。 追加画像図7 脊髄の模式図。 図8 各レベルの脊髄横断面。 脚注^ Rexed B. The cytoarchitectonic organization of the spinal cord in the cat. J Comp Neurol 1952;96:415-495.
関連項目 |
斜角筋
斜角筋(群) |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
musculus scalenus |
英名 |
Scalenus muscles |
斜角筋(しゃかくきんScalene muscles)は、深頚筋のうち、頚部脊柱の横突起から平行に走る細長い筋肉である。前斜角筋と中斜角筋、後斜角筋、最小斜角筋の4部に分けられる。
頭部を側方へ傾けるが、呼吸補助筋としても機能する。
斜角筋
斜角筋(群) |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
musculus scalenus |
英名 |
Scalenus muscles |
前斜角筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. scalenus anterior |
英名 |
scalenus anterior muscle |
斜角筋(しゃかくきんScalene muscles)は、深頚筋のうち、頚部脊柱の横突起から平行に走る細長い筋肉である。前斜角筋と中斜角筋、後斜角筋、最小斜角筋の4部に分けられる。
頭部を側方へ傾けるが、呼吸補助筋としても機能する。
前斜角筋
前斜角筋(ぜんしゃかくきん、anterior scalene muscles)は頚部の筋肉のうち、頚堆の横突起から肋骨に伸びる筋肉である。繋がっている肋骨を上方に引く作用を持つ。
前斜角筋の起始は、第三~第六頚堆の横突起から起こり、第一、第二肋骨に停止する。また、前斜角筋と中斜角筋で斜角筋隙をつくっている。
中斜角筋
中斜角筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. scalenus medius |
英名 |
scalenus medius muscle |
中斜角筋(ちゅうしゃかくきん)は頚部の筋肉のうち、前斜角筋に沿って頚堆の横突起から肋骨に伸びる筋肉である。繋がっている肋骨を上方に引く作用を持つ。
中斜角筋の起始は、全ての頚堆の横突起から起こり、第一肋骨に停止する。
後斜角筋
後斜角筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. scalenus posterior |
英名 |
scalenus posterior muscle |
後斜角筋(こうしゃかくきん)は頚部の筋肉のうち、頚堆の横突起から肋骨に伸びる筋肉である。前斜角筋、中斜角筋と平行し、最も後方(posterior)を走っている。繋がっている第二肋骨を上方に引く作用を持つ。
後斜角筋の起始は、全ての第四~第七頚堆の横突起から起こり、第二肋骨に停止する。
最小斜角筋
最小斜角筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. scalenus minimus |
英名 |
Scalenus minimus muscle |
最小斜角筋(さいしょうしゃかくきん)は頚部の筋肉のうち、頚椎の横突起から肋骨に伸びる筋肉である。前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋と平行し、一番後ろを走っている。強制吸気作用を持つ。
最小斜角筋の起始は、全ての第六頚椎の横突起から起こり、第一肋骨外側面に停止する。
椎前筋
椎前筋(群) |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
musculi prevertebrales |
英名 |
Prevertebral muscles |
椎前筋(ついぜんきん)は、深頸筋のうち、頸部脊柱の前面に接して上下に走る細長い筋肉である。前頭直筋と頭長筋、頸長筋(斜角筋も含まれることもある)、外側頭直筋の4部に分けられる。
前頭直筋
前頭直筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. rectus capitis anterior |
英名 |
rectus capitis anterior muscle |
前頭直筋(ぜんとうちょくきん)は頚部の筋肉のうち、環椎と後頭骨の間を短く繋いでいる小さな筋肉である。両側が機能すると頭を前方に曲げ、片側が機能すると機能側に頭を曲げる作用を持つ。
前頭直筋の起始は、環椎の外側槐と横突起から起こり、後頭骨の底部に停止する。
前頭直筋
前頭直筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. rectus capitis anterior |
英名 |
rectus capitis anterior muscle |
前頭直筋(ぜんとうちょくきん)は頚部の筋肉のうち、環椎と後頭骨の間を短く繋いでいる小さな筋肉である。両側が機能すると頭を前方に曲げ、片側が機能すると機能側に頭を曲げる作用を持つ。
前頭直筋の起始は、環椎の外側槐と横突起から起こり、後頭骨の底部に停止する。
頭長筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. rectus longus capitis |
英名 |
longus capitis muscle |
頭長筋(とうちょうきん)は頚部の筋肉のうち、頚堆と後頭骨正中よりの間を長く繋いでいる筋肉である。頭を前方に曲げる作用を持つ。
頭長筋の起始は、第3から第6頚堆の横突起から起こり、後頭骨の底部に停止する。
頸長筋
頸長筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. longus coli |
英名 |
longus coli muscle |
頸長筋(けいちょうきん)は頸部の筋肉のうち、頸椎に沿うように前方に存在する筋肉である。上斜部、垂直部、下斜部の三部に分けられる。頸部を前屈させる作用を持つ。
頸長筋の起始は、上斜部において第3~第5頸椎の横突起、垂直部において第5頸椎~第7頸椎と第1胸椎~第3胸椎の椎体、下斜部において第1胸椎~第3胸椎の椎体である。
頸長筋の停止は、上斜部において環椎の前結節、垂直部において第2~第4頸椎の椎体、下斜部において第6~第7頸椎の横突起である。
外側頭直筋
外側頭直筋 |
分類 |
部位 |
ラテン名 |
m. rectus capitis lateralis |
英名 |
rectus capitis lateralis muscle |
外側頭直筋(がいそくとうちょくきん)は頚部の筋肉のうち、軸椎と後頭骨の間を短く繋いでいる小さな筋肉である。両側が機能すると頭部の起立と外側へ曲げる作用を持つ。
外側頭直筋の起始は、軸椎の横突起から起こり、後頭骨頚静脈突起に停止する。