14.任 脈 24穴 MERIDIEN DEJENN・MO OU VAISSEAU
流 注 任脈も督脈と同様に、会陰部から起り、体の前面にでて、腹、胸部の正中線を上行する経脈である。オトガイの承梁穴で経穴はるが、経脈は唇をめぐって督脈の終点敵交穴に至り、分れて両眼の下の承泣穴にて胃経と会して終る。
1.会 陰 (別名、下極、屏翳)J.M.1.Roe・inr)(CV-1)
部 位 両陰の間、すなわち、男子は月工門と陰嚢との間、尿道球の後際にある。女子は月工門と後陰唇交連との間で会陰部にある。
取り方 解剖学的には外肛門括約筋の前縁で、男子は尿道球の後際、女子は膵口の後方の会陰部である。ともに外月工門括約筋の前方が伸びて腱中心を形成しているので、外部から圧すると腱様のものが感じられる。
【筋肉】外月工門括約筋、浅会陰横筋
【血管】外陰部動・静脈、尿道球動脈
【神経】陰部神経の枝(会陰神経)
【主泊症】この穴はあまり使われるところではない。とくに婦人には鍼灸 第2章 十四経絡と経穴各論ともに施術に困難な部位である。
陰部神経痛、陰部多汗症、陰部掻痔、月経痛等に効果があるが、痔疾にも効く。またときによっては気付け鍼として応用されることもある。著者はこの穴を使って男子の尿道炎、前立腺炎に好成績をあげたことがある。また男子の急性大腸炎で裏急後重のため下腹部、直腸、月工門から尿道まで不快感のある場合に、小指頭大の知熱灸を10壮くらい施すと、その直後から気分がよくなるのでしばしば応用している。
2.曲 骨 (別名、屈骨、尿胞)J.M.2.Tsiou・kou
部位腹部正中臥恥骨軟骨結合の上際にある。
取り方 下腹部正中、恥骨の上際白線上に取る。臍と恥骨軟骨の上際を骨度法では6寸5分と定めてあるが、取穴上では5寸とし、この長さを5等分して1寸と定め、下腹部の腎経、胃経、牌経、胆経の諸穴はすべてこの分寸を基準にして取穴するのである。
【筋肉】白線、腹直筋、錐体筋
【血管】下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】腸骨下腹神経、第10~12肋間神経前皮横および筋横
【主治症】臍下から恥骨上際にかけての諸穴は、すべて生殖器病、とくに婦人病に効くといわれる。さらに、恥骨上際部と上前腸骨嫌の下縁、すなわち下腹部の骨際は婦人病に著効を現わすところである。曲骨は中極、関元とともに、膀胱炎、膀胱麻痺、尿道炎等にも効果を現わす。また内臓虚弱体質にもよい。
3.中 極 (別名、勝胱募、玉泉)(膀胱募) J.M.3.Tchor)g・tSi(CV-3)
部 位 下腹部白線上、臍下4寸にある。
取り方 臍と恥骨上際の間を5寸と定めた分寸により臍下4寸で、恥骨上際の曲骨大の上1寸、臍下3寸の関元穴の下1寸のところに取る。
【筋肉】白線、腹直筋、錐体筋
【血管】下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】腸骨下腹神経、第10~12肋間神経前皮彼および筋枝
【主治症】曲骨と同様、生殖器、泌尿器疾患に効く。淋疾、産後の悪露(おりもの)、胎盤下らず、月経不順、子宮筋腫、子宮痘攣などの婦人病、また男子淋疾、精巣炎、尿道炎、陰壊、精力減退に効く。泌尿器のやまいとしては膀胱炎、腎炎等に効く。
4.関聖(別名、丹田、大中極、下青、宵之原)(′ト腸募) J.M.4.Koann-iualln(CV-4)
部 位 下腹部白線上、臍下3寸にある。
取り方 臍と恥骨上際の間を5寸と定めた分寸により臍下3寸に取る。人によって白線がまっすぐでない者もあるが、そのときでも白線の中に取るのが正しい方法である。
【筋肉】白線、腹直筋、錐体筋
【血管】下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋枝
【主治症】主治症としては中極と同様であるが、関元穴は一般に多く用いられる穴で、婦人病、男子生殖器、泌尿器疾患に著効のある穴である。とくに下腹部虚冷感があり、小便が白くにごっていたり、′ト便淋溺、遺精があったりする場合に著効がある。また痔のやまい、精力減退にもよ′く効く。関元はまた丹田とも呼ばれ、この奥に先天の原気をやどしている。すなわち先天的生命力が存在する。ここに手をあてると動惇があるが、強くなく弱くもなく平静なのがよい。関元の灸はこの原気を補うに役立つものである。
5.石門 (別名、精露、命門、丹田、絶孝)(三焦募)J.M.5.Che・menn)(CVM5)
部 位 下腹部白線上、臍下2寸にある。
第2章 十四経絡と経穴各論
取り方 臍と恥骨軟骨接合の上際の間を5寸と定めた分寸により臍下2寸の白線上に取る。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋枝
【主治症】石門は古来婦人に軋禁鍼禁灸穴になっていて、ここに施術すれば不妊症になるといわれているが、これは当らないようである。各種婦人病にしばしば使って効果がある。 腸仙痛、消化不良、腸炎、下痢等に効果がある。腹膜炎、腎炎か.らきた水腫の症にも効果がある。
6.気 海 (別名、膵膜、下胃、丹田、下気海) J.M.6.Tsri-rae(CV-6)
部位磁′白鮎脚1寸5分にある。
取り方 臍と恥骨囁骨接合の上際の間を5寸と定めた分寸により臍下1寸5分に取る。
【筋肉】白線、腹直筋
〔血管】下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋枝
【主治症】気海は気の海であって、気とは脳、神経の機能や呼野の気を意味し、また気海穴の気はそのうちで脳神経のやまいと関連のあるものである。神経過敏、神経衰弱、ヒステリー、精神病の躁病、欝病といった場合に取られる穴である。両乳の問の腰中大はまた上気海という別名があるが、同じように気の集るところである。しかしこの上気海の気は呼吸の気を多分に意味していると解すべきである。すなわち呼吸微弱、呼吸促迫に取穴される。さて臍下の気海は上述の気病のほかに、婦人病、泌尿器疾患として膀胱のやまい、腎臓のやまいに効があり、また消化器疾患として神経性胃痛、腸仙痛、あるいは急性盲腸炎等の激痛を頓挫させるのに著効がある穴である。いずれも数10壮の多壮灸、あるいは置鍼をしなければならない。
7.陰 交 (別名、′ト関、横戸、丹田=.M.7.Inn-tSiao (CV-7つ
部 位 下腹部白線中、臍下1寸にある。
取り方 臍と恥骨軟骨接合部の上際の間を5寸に定めた分寸により臍下1寸に取る。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋
【主治症】生殖器疾患として、男子の下腹が冷えて精巣の方まで引きつって痛む場合、月経不順、帯 ̄F、産後悪露等に効果がある。また坐骨神経痛にも併用すべき穴である。
8.神 闘 (別名、臍中、命帯)J.M.8.Chenかkoann
【血管】上腹壁動・静脈、下腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】第10肋間神経前皮枝
【主治症】臍中であるから通常施灸も刺鍼もできないところであるが、救急の場合、たとえば暑気霞乱、脳貧血、脳充血や精神上の衝撃等で人事不省になった場合に直接施術することがある。
、また急性・慢性腸炎、内臓下垂症、胃アトニー症等に、塩、味噌、にんにく、生姜等の切片を置いて間接(隔物)灸を毎目数10分すえると著しい効果がある。家庭療法では特別な器具が発売されていて、毎日2時間くらい塩や味噌を置いて間接(隔物)灸をする方法がある。この場合、前記 のような虚証であればよいが、十二指腸炎や胃潰瘍の場合には、かえって病状が悪化して出血するようなことがあるから、充分気をつけなければならない。腰の間接灸は、また脱肛、子宮脱出にも非常によいようであるし、夏まけや寒さまけで微熱がでて、食欲が減退し、全身に倦怠感のある場合にもよい。臍も使いようで無用の′邪魔物ではない。
9.水分 (別名、分水、中守)J.M.9.Choe・fenr)(CV-9)
勇ノ部位上腹部、白線中、臍上1寸にある
テ取り方 胸骨体の下端、すなわち、第7肋軟骨の接合部の中間にある中庭穴より臍(棚穴)までの長さを拍と定め、この8分の1を1寸として、上腹部の諸経の穴を取るのである。水分穴は臍上1寸に取る。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋横
【主治症】水分の名称は、水を分けるという意味からきたもので、むかしは小腸と大腸の境を関門といい、不要の水分はここで腸外に溶出して膀胱に至ると考えたのである。そして臍上1寸のこの部が水分に当るとしたのである。これは臍上1寸の部に灸をすれば利尿作用が高まるという結果から生じたものであると思う。したがって、腎臓病や腹膜炎によってたまった腹水に灸が効く。腎炎の浮腫の場合は数10壮から100壮という多壮の方がよいようである。また利尿という意味で、急性の大腸炎の場合にここに施灸すると、小便が多く出るようになって下痢が止る。
10.下 肢J.M.10.Sia・koann(CV-10)
宗一取り方腹部の諸穴は仰臥位で取るのが最も正しく取穴される0胸僧体下端から臍までの長さを8寸とした分寸により臍上2寸に取る。贋とは胃胱であり、胃のことである。下流は胃の下端、すなわち胃の下部のやまいを治療する穴であるという意味である。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋横
【主治症】腕は胃朕で胃袋である。胃の上口部を上腕(噴門部)、中央部を中脱(胃体部)、下口部は下脱(幽門部)を意味するものとした。しかもこの部のやまいが、これらの内臓に相当する穴に施術する羊とによって、よく治るところからこの名称ができたのである。
下脱は胃の下部、幽門部、十二指腸等におこるやまいに効く。したがって胃下垂症にもよく効くので用いられる穴である。
1l・建 里J.M.11.Tsien。・1i(CV-11)
部 位 上腹部白線上、臍上3寸にある。
取り方 胸骨下端から臍までの長さを8寸とした分寸により臍上3寸に取 Z
る。上腹部の中央臍上4寸の中脱大の下1寸に当る。
【筋肉】白線、腹直筋【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動.静脈
【神経】肋間神経前便枝および筋枝
【主治症】胃拡張、神経性胃痛、食欲不振等に効く。
@貰う 議(別名、漁㌘聖。ま慧慧岬ト12)
位 上腹部白線上、臍上4寸にある。
取り方 胸骨体下端から臍までの長さを8寸として分寸により臍上4寸に取る。すなわち上腹部中央の白線上に取る。胃の中央部という意味である。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋彼
【主治症】胃の中央にあたる部位とされ、胃を治療する代表穴である。胃は東洋医学では、現在の膵臓、肝臓、小腸などの消化吸収器官のすべてを意味することばであると解釈してもよいくらい、広範な機能をもっているのであるとしたのである。したがって中脱穴はすべての消化器病、あるいは消化吸収機能をたかめなければならない場合に、有効な穴として用いられた。これらの病名のすべてをここに列挙することは省略するが、消化器系疾患の虚症、実証のいずれにも効果がある。さらに中脱は消化器以外の疾患に対しても、経絡治療では用いる場合も多い。たとえば肺経虚証で呼吸器疾患等の場合には、肺の母である牌胃の機能をたかめ、消化吸収力を盛んにする目的で中脱穴に補法をおこなったり、腎虚証で婦人病患者に胃経を鴻する目的で用いたり、神経衰弱、不眠症等で肝経の虚、あるいは実証の場合にも腹部では中流穴を使うことがしばしばある。いずれもよい結果を期待できることが実証されているのである。
また古典に回虫症にも効果があると記載があるが、膀胱経の魂門穴と合療チ首モ効果的であるともいっている。
部 位 上腹部白
胃脱、上管、上紀)
J.M.13.Cheng・koann(CV-13)
寸にある。
取り方 胸骨体下端から臍までの長さを8寸に定めた分寸による臍上5寸で、上腹部中央の中腕穴(臍上4寸)の上1寸に取る。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮横および筋枝
【主治症】中脱同様、諸種胃疾患に用いられる。すなわち急性胃炎、神経性胃痛(胃の実証)や胃アトニー、胃下垂症、胃潰瘍(胃の虚証)などに効果がある。ただし、胃潰瘍で胃出血して間もないものには、胃の部位にあたる穴には直接鍼や灸はしないほうがよい。鍵鍼(ていしん)が最も効果的である。あるいは接触鍼、小児鍼程度がよい。各種胃の激痛、肇軌こ効き、また慮敲効き、反対に嘔吐を止める場合も鍼あるいは灸を用いると効果がある。
14・巨 闘 (別名、心寡)(心寡穴=.M.14.Tsiu-koann (CV-14)
部 位 上腹部白線上、胸骨体下端の下2寸にある。
取り方 胸骨体の下端の下2寸に取る。すなわち左右の肋骨弓を押し上げ ていき、第7肋軟骨接合部の下から2寸のところに取る。鳩尾穴(胸骨体下端の下1寸、胸骨剣状突起下端の下5分)の下1寸に当る。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】肋間神経前皮枝および筋枝
【主治症】心経の募穴であって、動惇、息切れのある各種の心臓病に効く。また神経性心悸冗進をはじめ、神経性嘔吐、神経性消化不良等にも効
ゝ 15.窟 崖(別名、断、膿前)川15.Tsi。 (CV-15)
部 位 上腹部白線上、胸骨体下端の下1寸にある。
取り方 胸骨体の下端、すなわち左右の肋骨弓を押し上げていき、とまるところ、すなわち第7肋軟骨接合部の中間の中庭穴より下1寸に取るが、胸骨体の下端に剣状突起がある。この突起を古典では鳩尾と呼んでいたところからこの名称が出たもので、この突起の下端に当る。古典では外表から触れて剣状突起の長さを5分として、鳩尾骨の下5分と記しているものもある。
【筋肉】白線、腹直筋
【血管】上腹壁動・静脈、浅腹壁動・静脈
【神経】第7肋間神経前皮枝および筋枝
【主治症】鳩尾穴は頭痛、片頭痛、咽喉(のど)のやまい、心臓病や神経衰弱、療痛、狂等の精神的疾患などの上焦のやまいに効く。また横隔膜痙攣(吃逆)、すなわち、しやつくりを止めるのにも効く。急性胃炎、あるいは毒物誤癖のときなど胃の内容物を吐かせる必要のある場合に、催嘔鍼を行うのに適している。このとき予告を与えて施術すれば、これが暗示となって嘔吐を容易にするのに役立つものである。ただし吐く物がなくなっても嘔吐が止まらなくなることがある。この場合には足
IG.管 品J.M.16.T。h。ng-ting(CV-16)
部 位 胸骨前面の正中、腹中(胸骨前面の正中、両乳の間)の下1寸6分にある。
取り方 左右乳頭を結んだ正中の点が腰中であるが、この下1寸6分、胸骨体下端より約6分上の陥凹部に取る。
【筋肉】大胸筋
【血管】内胸動・静脈貫通枝
【神経】第5肋間神経前皮枝、前胸神経
’【主治症】心臓病で胸苦しい場合に使う。また食道痙攣によって食物が下らない場合にもよい。また嘔吐が止まらない場合にも効く。
Lセ・ノ遠 耳グ上気海、元児)J・M・17・Tra試買
部 位 胸骨前面の正中、両乳の問にある。
取り方 仰臥位では普通の人の乳頭は、第5肋骨の上線近くの第4肋間にある。左右の乳頭を結んだ線と胸骨の正中線との交点で、少しくぽんだところを圧して痛むところが腰中大である。しかし両乳を結んだ直線上よりやや上方部にあるのが普通である。玉堂大の下1寸6分に当る。
任脈)
【筋肉】大胸筋 【血管】内胸動・静脈貫通枝
【神経】第4肋間神経前皮枝、前胸神経
【主治症】腰中は両乳の間にあって、臍下1寸5分の気海穴に対して、上気海ともいわれ気と関係の深い穴である。腰中は心臓の部位とされる。下の気海穴は脳神経の機能に関係あるやまいに効くのに対して、腰中は呼吸の気に関係あるやまいに効くのであって、呼吸微弱(少気)、呼吸促迫(短気)、咳蠍などの証を現わす呼吸器疾患や心臓疾患に効果がある。すなわち胸膜炎、気管支炎、肺結核、心臓喘息、心臓衰弱等である。ただしこれらのやま.いの多くは気虚の証であるから、鍼灸ともに治療に際しては充分な注意が必要である。治療刺激が過ぎるようなことがあれば、かえって悪化する場合がある。初心者は鍵鍼か知熱灸を以って試しながら、刺激の度合を定めていくようにすれば安全である。「胸苦しく、咳込み、呼吸促迫、息することもいうこともできない」といった証に肋間神経痛がある。肋間神経痛の多くはこの腰中に強い圧痛がでてくるもので、ここへの鍼灸はすぐれた効果がある。また婦人の乳のやまいとしての乳腺炎には非常によく効く。乳汁不足にも効く。ゆえに婦人腰中として奇穴でも取上げているくらいである。(奇穴の部264ページ参照)食道痙攣にも効く。
18.玉堂 (別名、玉英)J.M.18.Iu・trang(CV-18)
部 位 胸骨前面の正中、値中(胸骨前面の正中丙乳の間)の上1寸6分にある。
取り方 仰臥位で両乳頭を結んだ緑と正中線上の交るところの陥凹部で、強く′圧痛のある点(腹中穴)より上方1寸6分に取る。左右の第3肋間の中間に位置し、この上1寸6分の紫宮穴(胸骨体上端の下1寸6分)と腹中穴との中間に当る。
【筋肉】大胸筋 【血管】内胸動・静脈貫通枝
【神経】第3肋間神経前皮枝.前胸神経
【主拍症】呼吸器疾患や食道のやまいで嘔吐する場合に用いられる。
19.紫 官J.M.19.Ts托-kong(CV-19)
部 位 胸骨前面の正中、華蓋(胸骨柄と胸骨体との接合部の前面正中)の下1寸6分にある。
取り方 胸骨柄と胸骨体との接合部(胸骨角)はやや高くなっており、外表から触れることができる。この胸骨角中心部を指頭で探ると、横に細い溝があって、その正中は強圧すると痛む。これが華蓋穴である。この下1寸6分に紫宮穴を取る。この部は左右第2∵肋間中間の陥凹部に当る。
【筋肉】大胸筋
【血管】内胸動・静脈貫通枝
【神経】第2肋間神経前皮枝、前胸神経
【卓治症】胸膜炎、気管支炎等で胸苦しい場合、咳のひどい場合などに用いて効がある。食道のやまいで嘔吐する場合にもよい。
壷 蓋J。一朗ご孤R。a_k。5(CV-2。)
部 位 胸骨前面の正中、胸骨角の正中にある。
取り方 胸骨柄の上線(頸切痕)から約2寸下は胸骨体との接合部で、少し高くなり胸骨角を形成している。この部を指頭で探ってみると横に細い清があって、その中央を強圧すると胸全体に響くような痛みを感じる。ここに華蓋を取る。
【筋肉】大胸筋
【血管】内胸動・静脈貫通枝
【神経】第1肋間神経前皮枝、前胸神経
【主治症】だいたい紫宮と同じである。また咽喉炎や扁桃炎のような場合にも効く。
甥蒜
磯 (別字、旋機)J.M.21.Siuann-tSi(CV-21)
部 位 胸骨前面の正中、天突(胸骨頸切痕の直上陥中)の下1寸の陥中にある。
取り方 天突の下1寸、胸骨柄のほぼ中央、両第1肋骨切痕の中央でくぼみの中に取る。
【筋肉】大胸筋
【血管】内胸動・静脈貫通枝
【神経】第1肋間神経前皮枝、前胸神経
【主治症】胸膜炎、喘息に効果があり、咽(のど)が腫れて飲み物も通らないような場合に用いられる。
22.天 突 (別名、玉戸、天登)J. (CV-22)
部 位 胸骨上端頸切痕の直上の陥中にある。
取り方 頸切痕の上部は左右の胸鎖乳突筋腱と胸骨舌骨筋腱によって頸裔(胸骨上宿)を形成している。天突はこの窟の中央にある。天突は頸切痕の上線に取るが、鍼施術のときには、そのやや上部より気管に沿って斜めに下方へ刺入し、一般にはあまり深くは刺さない‘でのが普通である。
【筋肉】胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、広頸筋
【血管】下甲状腺動・静脈
【神経】舌下神経、頸皮神経
【主治症】天突は気管と咽喉のやまいに効く穴で、諸種のやまいから準る咳琳、疾にはよく効く。気管、咽喉がむずむずして咳がでるときに、・気管に沿って1、2センチ斜めに下方へ刺入すると、すぐ楽になる場合が多い。扁桃やその周囲の炎症にも効く。
2吉.廉(別名、舌本,本地)J・ (CV-23)
部 位 前頸部の上部の正中、喉頭隆起上方の横紋中にある。
取り方 この穴は別名を吉本ともいい、舌の運動、舌の感覚の異常等に治療効果があるという意味の穴である。したがって、この穴は舌骨体の上線に取るべきである。舌骨体の最もとがっているところから指先で上方へ圧していくと痛むところがある。オトガイ舌骨筋の付着部にあたる。
【筋肉】オトガイ舌骨筋、広頸筋
【血管】上甲状腺動・静脈
【神経】舌下神経、頸横神経
【主拍症】舌のやまい、咽喉のやまい、気管のやまいに効く。すなわち舌炎、舌の知覚および運動麻痺に効く。咽喉に腫物ができた場合、気道に障害があって咳や疾がでる場合によく効く。また、唾液分泌過多の場合にも試みてよい穴である。陛者はJある老婦で脳出血後に唾液分泌過多と声帯麻痺が残り全然声がでない者に、廉泉の施灸治療20回で発語できるようになり、唾液分泌が少なくなった治験例がある。
24・承 寮(別名、天地、醐)J・M・24・Tchre箭怒
部 位 オトガイ唇溝(下唇とオトガイとの間の溝)の中央に取る。
取り方 下唇の下とオトガイとの問に溝があるが、この中央に取る。
【筋肉】下唇下制筋
【血管】オトガイ動・静脈
【神経】下顎神経の分彼のオトガイ神経、顔面神経
【主治症】顔面、歯のやまい、言語不能などに効く。顔面浮腫、三叉神経痛、顔面神経麻痺による口眼鳩斜(顔面神経麻痺)等に非常によく効く。下歯痛や口を堅く閉じた言語不能(構音障害)の中風患者に効く。
任 脈 捻 論
任脈の任は妊娠の意味で、男女生殖器機能と密接な関係のある経脈であることを示すものである。とくに婦人病に関係が深く、その治効穴が非常に多く広く用いられている。
脈の流注は下腹部の生殖器から、督脈、衝脈とともに起り、会陰穴から陰側である膜面を上行する。正中を上ってオトガイの承梁で左右二つに分れ、目の下の承泣穴に終るのである。
主治症は次のように部位により三つに区分できる。
1・令陰から臍までの下腹部ここは主として生殖器疾患、特に婦人病に効くところで、これと平行する腎経、胃経、牌経、月旦経みな同様である。このほかに、泌尿器疾患の託として腎臓や膀胱、尿道の病気に使われる。日本人は座敷に生活する関係で、下腹部の運動が不足するので血液の循環が障害され、欝血しやすいという理由からも、以上の各種のやまいに、気海、関元、中極等に取穴する場合が非常に多い。
2.臍以上の上腹部
主として消化器疾患に効果があり、とくに胃のやまいに使われる。上中下の三脱は、その最も代表的な穴である。
冨.胸骨上の穴
気管、食道のやまいに治療効果があり、心臓病にも用いられる。腰中はその代表穴である。
なお胸骨角の華蓋から上部は咽喉のやまいに効く。天突穴はその代表的な穴ということができる。
以上、任脈上の諸穴は督脈とともに体幹の陰陽両面の正中線であって、その左右両側の諸経諸穴を統括しているかたちになっている。したがってその応用も充分注意して行えば、実に興味のあるものが多い。
算2章 十四経絡と経穴各論
14.任脈・主治症一覧表 24穴
第1症(共通症)】第2症(特に効ある症)
生(腎窪碧痔、陰痛、) |
生(栗蒜)泌(讐+) |
痔、気付鍼 |
内臓下垂体質 |
3.中 極 |
4.関 元 |
石 気/陰 |
7. |
8.神 |
9.水分 |
交 閲 |
10.下 院 |
11.建 里 |
12.中 脱 |
13.上 鹿 |
14.巨 閥 |
15.鳩 尾 |
16.ヰ 庭 |
17・腰 中 |
18.玉 堂 |
19.紫 官 |
20.華 蓋 |
21.麓 磯 |
22.天 突 |
淋、悪露、経不 |
順、胎衣下らず |
子宮筋腫、痙攣 |
陰痩\ |
生(同上) 泌(同上) |
生(婦人病) |
生(経不順) |
生(慧歪讐義悪下) |
泌(署) |
(間接灸) |
滑(羊三鮎崇門部) |
消(是拡張、心痛) |
消唱花笠_般) |
消(嘉左こ忘嘉熱) |
消(筈濃) |
呼 |
呼(気病) |
呼 |
呼(煩心、咳) |
呼 喘 |
呼(豪讐疾) |
下腹虚冷倍数㌫芸)痔 |
腸(買警滑ヒ不良)水腫 |
気病(敬語) |
風乱腫振 |
中質水不 |
仙痛、卒中 |
心痛、脱腸 |
臍中冷泄、 |
回虫 |
神経性(慧竺;肖先禁裏) |
片頭痛、神経衰弱、吃 |
逆、催吐鍼 |
食道の |
やまい |
(竃下らず) |
乳腫、乳不足 |
吐(食道の部) |
吐 |
吃逆、咽腫 |
咽腫、喉痺 |
咽腫、吃逆 |