9.手の蕨陰心包経 9穴  MERIDIEK DUMAITRE DUCCEUR

 

流 注 心包の脈は、腎経の終端であ る心包絡(心を包む絡膜)から出発してここに属会し、さらに横隔膜を貫き下って、上脱、中脱、陰交の部分で三焦の部を歴絡する。支脈は心包に属会するところから別れて胸部を循り、側胸部に出て乳頭の外方1寸ばかりのところにある天池穴に来る。経穴はここより始まり9穴を経過するが、実際は支脈となっている。すなわち天池天から腋裔に出、上腕の内側の肺経と心経の問を下行し、肘(ひじ)をすぎ前腕に下り、掌中を経て中指爪甲板部母指側の中衝に終るのである。

  その支脈は、掌中の労官穴から別れて第4指の尺側爪甲板部関衝穴に至る。








取り方 乳頭線の基準となる乳中天を第5肋間とする説があるが、ここでは第4肋骨と第5肋骨との問にある説にしたがって第4肋間とする。天地穴は乳中穴の外方1寸、すなわち正中線任脈の腰中大の外方5寸に取る。

【筋肉】大胸筋、外肋間筋、内肋間筋、前鋸筋 

【血管】外側胸動脈、内胸動、静脈の分枝、肋間動・静脈

【神経】第4肋間神経外側皮枝、および筋枝、長胸神経

【主治症】乳中の外側にあるが、局所的には、気管支炎、胸筋の痛み、肋間神経痛等のときに使われる。また、心臓性のやまいのときにも散鍼としてこの附近の経穴が使われる。


2. 天泉 (利名、天温、天湿)MC2 Tiennt5iuanp (HC2

部 位 上腕上部の内面、前腋窟横紋の頭より肘寓の内側(曲沢穴)を的に下ること2寸のところにある。

取り方 手を下げ、腋寓前面の横紋の頭から2寸下ったところ。大胸筋付着部より少し下ったところで、上腕二頭筋の筋溝の中に圧迫すると非常に痛むところがある。天泉穴をここに取る。

【筋肉】上腕二頸筋、烏口腕筋【血管】上腕動・静脈の分枝、榛側皮静脈

【神経】正中神経、内側上腕皮神経

【主治症】上腕痛、特に正中神経に痛みのある場合にこの部に圧痛が出抄如∫ラ0また肘商の内側こ 上顎宛二頭筋腱わ内側にある。肘喬のほぼ中央の太い腱は上腕二頭筋腱であるが、この内部に動脈があり、尺沢穴をここに取る。この内側端の骨は上腕骨内側上頼で、この上の横紋の頭に心経の少海穴を取る。この尺沢と少海の間の筋肉は上腕筋である。この筋の上で肘をなかばまげるとできる横紋の中で、尺沢と少海穴の中間に圧すと痛むところがある。曲沢穴をここに取る。

【筋肉】上腕二頭筋、上腕筋

〔血管】上腕動脈の分枝である尺側反回動脈、肘正中皮静脈 

【神経】正中神経、内側前腕皮神経

【主治症】相火の経の水穴であって,水経が虚し、火実として熱があり、苦しがり、精神がおどおどしているときに使われる。また心臓病で陰証、陽証いずれにも使われる。

 

 

4.部  門(鄭穴)MC4LTsrimnnrIC4

 

部 位 前腕前面の中央、手関節前面の上方5寸にある。

取り方 骨度法では肘窟横紋より手関節横蚊までを125分としてあるが、取穴法では1尺にして取る。ゆえに部門穴は前腕の中央(5寸)である。手関節のほぼ中央部に比較的太い2本の操が平行して上行している。すなわち母指側が榛側手根屈筋、尺側が長掌筋の∵睦である。心包経はこの間を経過する。部門穴はこの中央部で、前腕の中央、手関節横紋より5寸上に取る。

【筋肉】榛側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋 【血管】尺骨動静脈の分枝、前腕正中皮静脈

【神経】正中神経、内側前腕皮神経

【主治症】古典に「嘔血、瓜血、心痛」とあって、逆気して上カナら出血すヽる場合時効くとされている。心、肺、鼻、胃等の病からくる場合に、.止血法としてこの穴に灸あるいは鍼が施される。下の方から出る出血の場合に具腰の命門寒がよく効くようである。すなわち生殖器、大腸、月工門等の出血の場合である。また動悸に用いられる。沢田流では部門穴を胸膜炎と喀血、心棒冗進の特効穴と定めているのは、この根拠からである。

媚刺便 

 

 

(利名、鬼路)(経金穴)MC5TsiennCheHC5

部芯完品競結論蒜あ中央(大陵穴)の上方3寸にある。

取り方 肘関節より手関節までを1尺として、手関節の中央より上方3寸、横側手根屈筋と長掌筋との間に取る。

【筋肉】榛側手根屈筋と長掌筋との間、浅指屈筋

【血管】尺骨動・静脈の分枝、前腕正中皮静脈

【神経】正中神経、内側前腕皮神経

【主治症】部門と同じように、心痛、狭心症に効く。また、熱病や中風その他の原因で精神に異常を来たした場合に使われる。月経不順にも効くと書いてあるが使ったことがない。

 

 

  6.内   閲 (絡穴)MC6NeikoannHC6

 

部 位  前腕部の前面、手関節横紋の中央(大陵穴)の上方2寸にある。

取り方 手関節の中央より上方2寸で、榛側手根屈筋と長掌筋の両腱の間に取穴する。ここは榛骨と尺骨との関節(下境尺関節)の上線に当り、強く圧すと2骨が接合していることがよくわかる。

【筋肉】横側手根屈筋と長掌筋との間、浅指屈筋

【血管】尺骨動・静脈の分枝、前腕正中皮静脈

【神経】正中神経、内側前腕皮神経

【主拍症】心悸先進、そのほかの心臓疾患に使われるが、失神にも効果がある。経絡的にいって他経の虚実を治する目的で火経が補あるいは漬される場合があるが、このような場合には心包経の絡欠である内閣、あるいはえし、

 

 

部 位 手

野軍緋幣ようほう’な穴である

陵 (別名、心主、鬼心)(愈土原穴)MC7TaJing

のほぼ中央部にある。

節前面、横紋

取り方 手関節には教本の横紋があるが、関節を動かしてみて、接骨及び尺骨と手根骨との関節部をよく見定め、その上で榛側手根屈筋腱と長掌筋腱との間に大陵穴を取る。手関節のほぼ中央に当るが、厳密に言えば多少榛骨側に寄っている。

【筋肉】榛側手根屈筋腱と長掌筋腱の間、屈筋支帯

【血管】掌側手根動・静脈網・前腕正中皮静脈

【神経】正中神経

【主治症】本大は非常に使用法の多い穴で次のように分けられる。

1・熱病(心包経は火経である)身熱、頭痛

2・心臓疾患、呼吸困難、胸痛の場合

3・精神病、神経衰弱、ヒステリー、狂等

4・胃腸病(経絡的に牌土の母経中の子穴であるから脾胃経の虚に補穴としてよく効果のある穴である)

5.手関節の痛み、慢性関節リウマチ

 大陵は心経の神門穴とともに火経中の土穴であり、その主治症も非常に似ている。いずれも著しい効果を現わす重要な穴であることは、臨床的にだれも認めるところである。それではどういう使い方の相違があるかというと、心経や小腸経に直接やまいがあって、上述のような症を現わしている場合には禅門を使い、反対に他経にやまいがあり、そのために火経に旺気実とか、虚を表わしている場合には大陵を使うのである。たとえば、牌胃の経に虚があって、その母である火経を補わなければならない場合、しかも虚熱がある場合には大陵を使うのである。

 

 

 8・労  官(別名、五里、鬼路、掌中)(栄火穴) MC8LaokongHC8

部 位 手掌部のほぼ中央、第3、第4中手指節関節間の少し上部の陥中にある。

取り方 この大の取り方には異説もあるが、今は『十四経発揮』滑氏の説に従って取ることとする。中指とくす粥旨とをまげて手掌に当る両者の間に取るときは第34中手骨の間に当る。また、『資生経』説によって、中指を屈し、指端が手掌に当るところに取るときは  第3中手骨および中指の深及び浅指屈筋腱の上に当・る。

【筋肉】虫横筋、掌側骨間筋

【血管】総掌側指動・静脈ふ

【神経】尺骨神経、正中神経の分枝、総掌側指神経

【主治症】この穴は局所的に手掌の筋や陸の痛み、掌中熱す等のほかにはぁまり使われないようである。ただし、′ト児には府虫(かんのむし)の治療として、民間で手掌の中央部に′ト児鍼を行い、または墨、きせるのやに等にて治療する者があるところをみても1′ト児にとっては反応の強いところで、われわれが試みてよく実証されるところである。

 

 

  寧J中  衛(井木穴)MC9TchongtChrongHC9

 

部 位 中指槙側、爪甲板部の外方1分にある。

取り方 第3指母指側の爪甲根部で、爪の先の方から押し上げて止まるところに取る。

【筋肉】指伸筋腱

【血管】固有掌側指動・静脈

【神経】固有掌側指神経

【主治症】指端であり感受性の強いところである。したがって、心包のやまいで激症、急性の場合に効果のある穴である。すなわち、熱性病のため非常にもだえ苦しんでいる場合、心臓性疾患で非常に胸が苦しい場合によい。熱性病のときには演血がよい。

 

          心 包 経 冶 論

 

1.経穴の配列 乳の外側から始まって上肢陰側のほぼ中央を下り、手掌の中より、第3指の先端に終っているが、経穴もわずか9穴であり、経絡では最も少ない経である。その上、胸部に天地の1穴、上腕部に天泉の1穴、肘関節部に1穴で実にまばらな配列になっている。

 2.臓腑としての心包 は他臓のように独立したものではなくて心臓の被膜である。しかし、なぜ一臓腑として立てたかというと、心の機能上から、またさらに哲学的理念に基づいたものである。すなわち、心は君主の官であり、全身の諸器官を主権者として統率するが、「心みずからその任に当らず」他臓すなわち心包に実務をゆだねる。全身各部の個体としての統一的機能は心包の機能の働きであるとしたのである。

 古代中国哲学は、水はすべての物質の始まりであり、他のものは水から生成変化したものと考えた。しかもその活動はその物質に内在する火の働きであると解釈している。まったく火ほど変化のはげしいものはない。動き、働き、変化、そしてさらに自分から子孫への移り変り、すなわち生殖作用、これらすべて火の働きである。この火は万物の中に内在しているものであって、これを相火というが、一つの法則にのっとって変化が進行する。人身中における法則はすなわち心包にほかならない。心包は活動の元締である法則そのものである。したがってこの意味から心包は内臓そのほかの諸器官の機能を総軍するものであるといえるであろう。

 5.心包と三焦との関係

 三焦は心包とともに同じように相火とされ、陰陽一対をなしている。すなわち心包は陰であり、三焦は陽である。そして、心、腸の君火に対しての相火である。柏火は五行の中に内在する火である。すなわち「物」の中に存在する機能である。腎臓の機能、膀胱の機能、肺臓の機能……それぞれみな火の活動にほかならない。このエネルギーは内在する火の変化したものである。

 

 この機能は生物では生命的、有機的活動が営まれているのであって、その生命の根源は三焦の原気の働きである。すなわち、腎中に存する生一命カが栄衛の中に混入されて三焦の原気と命名され、全身各部に送られて有機的活動を行わせようとするものである。三焦とは栄養の消化吸収と、その残澤の排泄系統を広くさしているが、狭義では消化器系統で、栄養分の摂取部である。脾や胃の存在する部位である。すなわち、栄衛の生産部である。ここでできた栄衛にさらに腎中から生命力(精と名付ける)を取りこれに混入して全身に分配するという、栄養と生命力分配の元締が三焦である。

 それなら心包はどのような役目をもっているかというと、心包は心臓の一部であり、その代行器官である。心はこころの臓である。今日でいう意織現象の行われるところ。すなわち、大脳の働きをするところである。

 知覚、記憶、思考、随意運動、感情、意志、これらをすべて心の機能と解釈したのである。しかし心包はこういった高級な作用にはあづからないで、生物体の生理作用、すなわち生理的機能に関与し、現代医学の延髄や脊髄の下等中枢によって営まれる反射運動(瞳孔開縮、瞬目、膝蓋腱反射等)や、自律神経系によって営まれる諸種の生理作用にあづかるものと考えたのである。すなわち個々の器官がばらばらに働かないで、1個体としてよ

く環境に順応し、統括的に活動できるのは心包のつかさどると働きとしたのである。以上を図示すれば次のようになる。

(相火)

生理機能-

一機能の継続→

一栄衛(牌胃の穀気+気血)

 

一三焦の原気(腎中の精の化した気)

一機能の統括→心包(心の代行)

栄衛の生ずるところ、原気に変化するところが三焦の部である。したがって三焦の作用が心包とともにその力を相合して生命体が存続されるという意味で重大な関連性が生ずるわけである。

 4.心包経の臨床

 

 以上述べたように心包は心の代行機関として生理機能を主宰(しゆさい)するものであるから、その変調は諸器官への変調を誘発することとなる。したがって、生理機能を円滑、順調に活動を持続させるためには、常に心包を申し分ない状態に置かなければならないということになる。また、心、包は心臓の保護器官でもあるから、邪気が直接に心に行かないように常に保護している。心に邪が中(あた)れば死であるとされる。また、

他の臓腑からきた邪に中(あた)ることからも保護する。すなわち、腎からきた邪、肝からきた邪、ときには肺からくる邪、砕からくる邪はすべて心包で受け、心には及ぼさない。したがって他臓、他経からおよぼす補演はすべべて心包経で行なわれるという理論にもなる。ただし臓病でなく、経病として心経にやまいがある場合は、その経絡を使うことはもちろんである。したがって火経である関係上、熱性病の場合に火実として演法を使う場合が多い。次頁表中にある病証も熱性病に現われる場合が多いのである。

 

9・手の廠陰心包経・主冶症一覧表 9

穴  名                      部位    第 1 症         第  2  症

 

 

 

(共通鱒)

(特に琴果のある症)

 

卵 溺 タ

1.天 地  胸

 

心        気管支炎

 

2.天 泉

上 腕

熱性病

 

 

昏曲 沢

心+-

 

4・部 門

前 腕

心(痛)

嘔血

 

 

5・間 使

胃痛、腋下淋巴節腫 喉痺、癌、庁、療、熱病

 

 

6・内 閲

心+

 

7.大 陵

腕 関

 

8.労 宮

中風(精神興奮)萄症、 便血

 

 

β中衛

指 咄

精神薄弱

 

 

1・心臓性疾患