耳鳴り・難聴
耳鳴りの2つのタイプ
「耳鳴り」とは、「周囲に音源となるものが無いのに、耳の中で音を感じる現象」をいいます。厚生労働省の調査によると、約20~30%の方が耳鳴りを感じているといわれています。特に、65歳以上の方においては70%近くの方が耳鳴りの経験があるとの報告もあります。耳鳴りは、以前は比較的高齢の方によくみられる症状でしたが、最近では、40~50歳代の方でも耳鳴りの症状を訴える方が増えています。
自覚的耳鳴り
本人にしか聞こえない耳鳴りで、耳鳴りを訴える方の多くがこの「自覚的耳鳴り」です。音の伝達経路「耳(外耳→中耳→内耳)
→内耳神経(蝸牛神経)→脳」の道のりのどこかに何らかのトラブルがある事によって「音がする」と感じてしまうのです。
他覚的耳鳴り
他の人にも聞くことのできる耳鳴りで、音源は自分の身体の中にあります。多くの場合、血液が血管を流れる音(ザーザーという音)ですが、他にも、心臓の音、のどの筋肉が働く時の音、顎の関節からの音、耳の中の筋肉の痙攣による音などが聞こえることもあります。
聴の3つのタイプ
「難聴」とは、何らかの原因によって耳の聞こえが悪くなる状態をいいます。「耳鳴り」の症状がある方のおよそ90%以上の方に「難聴」が認められますが、「難聴」の方全員に「耳鳴り」があるわけではありません。また、聴力の正常な方でも「耳鳴り」が聞こえることもあります。しかし、「難聴」を引き起こす病気は、「耳鳴り」の症状を伴う可能性が高く、そのため「耳鳴り」と「難聴」は切り離して考えることのできない症状です。
1.伝音難聴:音の振動を伝える外耳と中耳にトラブルが起きている
外耳道に耳垢や異物などがたまると、「ガサガサ」といった音がして、外からの音が聞こえにくくなるためにおこります。中耳に「中耳炎」「耳硬化症」(耳の中にある耳石が固定してしまう)などの病気が起きることでも、難聴になります。はっきりとした原因が特定できる場合は、原因となる病気を治療することで聴力が回復して、耳鳴りも治るケースが多いようです。
2.感音難聴:音を感じる内耳や聴神経・脳にトラブルが起きている
音は、蝸牛の中にある有毛細胞が感じ取り、有毛細胞から神経(蝸牛神経)を通じて電気的な信号に変換され、脳に伝わります。しかし、有毛細胞にトラブルが起こると、音がないのに電気信号が発せられて、脳は実際にはない音を感じてしまいます(耳鳴り)。また同時に、耳の聞こえの機能が低下します。耳鳴りの音に気をとられてしまい、難聴に気づかない方も多いようです。
§ 老人性難聴:加齢による難聴
高齢者の方の難聴で、年齢とともに、少しずつ聞こえが悪くなっていきます。
程度や進行の速さには個人差が大きく、難聴が加齢による自然なものなのか、病気によるものなのかの判断は難しいので、注意が必要です。加齢による難聴の場合、徐々に聴力が落ちて、高い音から聞こえにくくなることが多いようです。
§ 突発性難聴:突然起きる原因不明の難聴
はっきりとした原因がなく、突然、耳の聞こえが悪くなるものを、突発性難聴といいます。難聴の度合いは、ほとんど聞こえなくなるものから、検査して初めて発見される程度のものまでさまざまです。ほとんどの方が耳鳴りの症状を伴っており、40%の方がめまいの症状もあることから、「メニエール病」の初期症状と症状が似ているため、間違えてしまうケースも多いようです。しかし、突発性難聴はめまいの発作は通常1回だけです。何度もめまいの発作があるようならメニエール病が疑われます。突発性難聴は、内耳に障害が起きていることによる感音難聴です。はっきりした原因はまだわかっていませんが、ウィルス感染によるものや一時的な内耳の血流障害ではないかとみられています。突発性難聴は、発症後、すぐに治療を開始することで回復が望める病気です。聞こえにくい症状が固定してしまうと、症状の回復に大きな差が出ますので、できるだけ早く病院を受診しましょう。
§ 騒音性難聴:大きな音が原因の難聴
騒音の中に長時間いることで起きる難聴です。大きな音のする工場での長時間に及ぶ仕事・大きな音をイヤホン・ヘッドホンで聴く・パチンコ店や騒音のする場所に長くいることなど、さまざまな騒音が原因となります。このうち、仕事で騒音のする環境に長く居たことによる難聴を職業性難聴といい、コンサートホールなどで大きな音を長時間聴いたことによる難聴を音響性難聴といいます。日常会話は4000ヘルツよりも低い為、騒音性難聴の初期は異常に気付かない人も多く、異常に気付いた時にはかなり症状が進んでいる可能性があり注意が必要です。進行性の難聴で、耳鳴り・めまいを伴うことも多いです。
3.混合性難聴:伝音系と感音系の両方にトラブルが起きている
音の伝達経路の中で、伝音系(外耳・中耳)と感音系(内耳・内耳神経(蝸牛神経)・脳)の両方にトラブルが起きている難聴です。
耳鳴り・難聴が起きる病気
耳鳴り・難聴を引き起こす原因は、耳・脳・耳以外の病気などであることが解ってはいるのですが、詳しく検査をしてもはっきりとした原因を特定できないことが多く、その為、治療法はまだ確立されていません。現代医学においても、耳鳴りを「軽減させる」ことを目的とした治療法(薬物療法・マスカー療法・TRT療法・星状神経節ブロック・心理療法など)が行われているのが現状です。
ですが、次の様な病気は速やかな耳鼻咽喉科での治療が大変重要になりますので、気になる症状がありましたら、できるだけ早く病院を受診しましょう。
メニエール病
回転性の激しいめまいが繰り返し起きる病気です。メニエール病は、内耳のリンパ液が異常に増え、内耳の機能が低下して平衡感覚や聴覚が障害を起こすことで、めまいと供に吐き気・嘔吐・耳鳴り・耳の閉塞感・難聴などの症状が現れる病気です。メニエール病は女性に多くみられる病気で、発症のピークは30歳~40歳位と言われています。メニエール病の発症の原因は、はっきりと分かっていないことも多いのですが、原因の一つにストレスの影響が考えられています。また、過労・睡眠不足といった肉体的な疲労、性格が几帳面だったりと繊細な方に発症しやすいと言われています。
突発性難聴
突然起きる原因不明の難聴で、はっきりとした原因がなく、突然、耳の聞こえが悪くなるものを、突発性難聴といいます。難聴の度合いは、ほとんど聞こえなくなるものから、検査して初めて発見される程度のものまでさまざまです。ほとんどの方が耳鳴りの症状を伴っており、40%の方がめまいの症状もあることから「メニエール病」の初期症状と症状が似ています。しかし、突発性難聴はめまいの発作は通常1回だけです。何度もめまいの発作があるようならメニエール病が疑われます。突発性難聴は、内耳に障害が起きていることによる感音難聴です。はっきりした原因はまだわかっていませんが、ウィルス感染によるものや一時的な内耳の血流障害ではないかとみられています。
外リンパ瘻
内耳と中耳を仕切っている膜が、何らかの原因(鼻を強くかむ・せき・くしゃみ・排便時のいきみ・飛行機に乗った時や水中での気圧の変化など)で破れ、内耳の外リンパ液が中耳に漏れ出す病気です。水が流れる音のような耳鳴りが起きる場合があります。
中耳炎(急性・慢性)・内耳炎
中耳炎は、急性・慢性のどちらでも耳鳴りや難聴を起こす病気です。特に、中耳炎が慢性化し炎症が内耳までおよぶと、めまい・吐き気といった症状にもつながるので、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
ラムゼイハント症候群
水ぼうそうや帯状疱疹のウィルスが、内耳神経や顔面神経に感染して起きる病気をラムゼイハント症候群といいます。この病気は、初め頭痛や耳の痛みが起き、その数日後に耳の周りに赤い水泡ができ、痛みを伴います。顔面神経がこれらのウィルスに感染することで、顔の片側の筋肉が動かせない状態(顔面神経麻痺)が生じます。この顔面神経と内耳神経(平衡感覚を支配する前庭神経と聴覚を支配する蝸牛神経)とは構造上とても近い位置にある為、顔面神経がウィルスに感染すると内耳神経にも影響を及ぼし、耳鳴り・難聴・回転性のめまいを引き起こします。ラムゼイハント症候群の治療は、早期の治療がカギとなります。ウィルスによって損傷された神経の修復可能な期間は1~2週間と言われています。ラムゼイハント症候群の症状に気づいたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、治療を開始する事が大切です。
耳管狭窄症
耳管に細菌性の炎症が起きて、耳管の通りが悪くなる病気です。耳管とは、鼓膜の奥にある鼓室(こしつ:中耳にある空間)と咽頭をつなぐ管で、耳の中耳と外界との圧力を調整する働きをしています。唾液を飲み込んだり、あくびをしたときに、圧力が調整されて、鼓膜に負担がかからないようになっています。ところが、耳管狭窄症になると、この耳管の働きがうまくできず、鼓膜の中と外で圧力の差が生じて、耳がふさがった感じ(耳閉感)・耳鳴り(低音域のことが多い)・難聴・自分の声が響くといった症状が起こります。
東洋医学で考える耳鳴り・難聴
耳鳴り・難聴を東洋医学で考えると、大まかには4つのタイプがあります。
肝火(かんか)タイプ ストレスや激しい怒りによって、身体を流れる「気」の鬱滞がおこり、「気」が熱化して「肝」を傷害することで耳に影響を及ぼします。耳が張って痛む。激しく起こったり、強いストレスを感じると耳鳴りを強く感じる。他に、口が乾く、良く眠れない、夢をみる事が多い、頭痛(主に側頭部)、女性は生理前に胸や脇が張るなどの症状を伴うことがあります。 |
湿熱(しつねつ)タイプ 脂っこい食事や味の濃いもの、お酒などの摂りすぎによって、身体の中に余計な「湿」(しつ:水分)がたまり、たまった湿が熱化して耳に影響を及ぼします。耳が塞がったような感じで音が聞き取りにくい、重く濁った音がする。他に、胃がつかえる感じ、黄色っぽい痰がでる、身体が重くだるい、むくみやすいといった症状を伴うことがあります。 |
胃腸虚弱(いちょうきょじゃく)タイプ 体質や疲労などによって胃腸の働きが悪く消化吸収がうまくできないため、エネルギーが不足することで起こります。疲労した時に耳鳴りが悪化する、耳に冷えを感じる。他に、疲れやすい、胃腸が張る感じがする、下痢しやすいなどの症状を伴うことがあります。 |
腎虚(じんきょ)タイプ 加齢や過度の性行為によって「腎」(じん)が消耗され、耳への栄養供給が不足することによって、起こります。夜間に耳鳴りがひどくなる、細く低い耳鳴りが徐々に起こる。他に、めまい、足腰がだるい、不眠、元気が出ないなどの症状を伴うことがあります。 |
耳鳴り・難聴の鍼灸治療
当院には、耳鳴り・難聴(聴力の低下)で多くの方がご来院されています。
耳鳴りが症状として現れるハッキリとした原因は現在のところ分かっていませんが、当院の患者さんに思い当たるきっかけをお聞きすると、次のような事を耳鳴りが起きる前に感じた。と言う患者さんが多くみられます。
§ 強い疲労感を感じていた |
§ 精神的な負担やストレスを感じていた |
§ 首や肩~背中への強いコリ感を感じていた |
§ いつもなら平気な音が頭に響いて聞こえた |
耳鳴りは、高齢の方に多い・・・というイメージがあるかも知れませんが、30歳代位の比較的若い方にも耳鳴りの症状を感じている方が増えているように感じています。長時間のパソコン作業などで目を酷使したり、猫背や顎が前にでる姿勢は、首や肩に負担がかかり筋肉の緊張やコリにつながります。耳鳴りの症状がある患者さんのほとんどの方が、後頭部のコリや強い緊張、首・肩・肩甲骨の間のコリや張り感を感じています。また、触診すると実際にかなりの緊張がみられることが多いです。
しかし中には、コリ感を感じていないけど耳鳴りがある・・・という患者さんもいますが、この場合「こっている」「疲れている」という感覚を感じなくなってしまっているケースです。自律神経の乱れにも注意をはらって治療をしております。
当院の鍼灸治療では東洋医学の考えに基づき、“耳”の働きを支配している「腎」(じん)の経絡・ツボや、内耳(耳の奥)に通じる経絡・ツボに鍼やお灸をして内耳の血液循環やリンパの流れを良くする治療を行っております。
また、「耳鳴り」という症状の背景には、肉体的な疲労・首肩のコリ・背中の張り・ストレスや精神的な緊張などがあるようです。自律神経のバランスを崩されている方も多くいらっしゃいます。
当院では、初めにしっかりと患者さんのお話しをお聞きし、東洋医学に基づいてお一人おひとりの体質を診させていただいております。「耳鳴り」という症状だけではなく、お身体全体の状態をふまえて、患者さんにとって最適な治療を行っております。
原因がはっきりしない耳鳴り・難聴
耳鳴りの原因ははっきりとわかっていませんが、耳・脳のトラブル以外にも、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの体質によって耳鳴りが起きることや、自律神経失調症・更年期障害などでも耳鳴りが起きることがよくあります。
音の聞こえるという「感覚」は個人差がとても大きい為、耳鳴りの感じ方も様々です。「この耳鳴りがいつまで続くのだろう・・・」「声や音が聞き取りにくくとても不便だ」といった耳鳴りの症状に対しての不安やストレスが大きくなって、耳鳴りをより強く感じことにつながるケースが多いようです。耳鳴りは、耳鳴りに対してのとらえ方が大きく影響します。
当院の鍼灸治療
当院では、耳鳴り・難聴の症状に対して東洋医学(中国伝統医学)に基づいた鍼灸治療を行っております。当院にお越しになる耳鳴り・難聴の症状を訴える患者様の多くが、首や肩の緊張が強い、ストレスを感じる、イライラしやすい、疲れやすい、よく眠れない、などの症状に悩んでいる方が多いようです。これらの症状を同時に治療することで、身体の緊張がゆるんで身体が楽になったり、気持もリラックスして心が軽く感じられることで、「耳鳴り」の感じ方や「耳鳴り」に対しての受け止め方が変わってきます。すると、耳鳴りの不快な症状が軽減し、改善の方向に向かいます。日頃の心労やストレスで、身体の緊張や疲労で神経が敏感になっている方が多くいらっしゃいますので、優しい刺激でできるだけリラックスしながら治療を受けていただけるよう、細心の注意を払って治療を行っております。