不眠症の原因と睡眠のしくみ
不眠症とは、睡眠時間が減少することによって、身体や精神に不調が現れることをいいます。いくつかの症状を併せ持っているケースが多く、他に倦怠感・意欲低下・集中力の低下・食欲の低下などが現れます。
不眠症は、40~50歳代の方が最も多いようです。社会的にも責任ある立場で仕事を任されている方、ちょうど「働き盛り」の年齢にあたります。
女性は、女性ホルモンの変化によって更年期の症状が出始める時期でもあります。不眠の症状としては、特に、中途覚醒や早朝覚醒の症状が多くみられ、加齢とともに発症率が増えていく傾向にあります。
不眠症の症状
§ 入眠障害:寝つきが悪い
§ 中途覚醒:夜中に目が覚めてしまう
§ 早朝覚醒:朝早くに目が覚めてしまう
§ 熟眠障害:睡眠をとっても、ぐっすり眠った気がしない
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不眠症の原因
1. 身体的要因 : 身体に何かしらの症状(痛み・かゆみなど)で眠りが浅くなる。
2. 生理的要因 : 身体の睡眠と活動のリズムが崩れている。
3. 心理的要因 : 心の状態が緊張や興奮している。
4. 精神的要因 : うつ病などによるもの。
5. 薬物的要因 : 薬の副作用によるもの。
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睡眠のしくみ
「睡眠」は、生きているものにとって、大切な生命の営みの一部です。一般的に人は、人生の3分の1~4分の1は眠りの時間に費やしています。この「睡眠」の間に私たち人間の脳は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しています。脳は眠っている間も、一定のリズムで活動をしています。
レム睡眠とは
脳波では浅い眠りを示します。目を閉じていても、目蓋の下では眼球が良く動き、夢を見ていることが多い睡眠です。
ノンレム睡眠とは
脳波では、深い眠りを示します。ゆっくりとした脳波の波形を描き、眼球もほとんど動かずに、夢もほとんど見ない睡眠です。
眠っているあいだに身体におきていること
眠っている時は、体温・心拍数・血圧が下がり、脳の内部の温度も下がっています。脳の睡眠をつかさどる中枢からの指令で、身体は新陳代謝の機能が抑えられています。そして、朝が近づいてくると、私たちの身体は起きるための準備を自動的に始めます。これは、自律神経という神経の働きによるものです。しかし、不眠・不眠症という「眠り」が上手くできない状態ではこの脳の働きが壊れ、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうのです。
当院では、不眠症の方や睡眠不足を感じている方の症状に対して、東洋医学に基づいて鍼灸治療を行っております。
不眠を東洋医学で考えると
不眠症は、心神(しんしん)の安寧と深く関係していると考えます。
§ 痰熱(たんねつ):眠りが浅く、夢を多く見る。 § 肝火(かんか):強い怒りやイライラによって眠りにつけない。 § 心脾両虚(しんぴりょうきょ):疲れすぎている。考えすぎてしまう。 § 心腎不交(しんじんふこう):精神の活動が活発すぎる。手足が火照る。 § 心胆気虚(しんたんききょ):不安や恐れ感が強い。悪夢を多く見る。 心神は、心の状態が大きく影響しています。鍼灸治療では、患者さんの不眠の原因・体質を診て、心(しん)・肝(かん)・脾胃(ひい)・腎(じん)などの経絡・ツボに鍼やお灸をして、心(しん)の状態を整え、不眠に効果の高い治療をしております。 |
心の状態や女性ホルモン・お酒の飲みすぎも原因に
不眠の症状を訴える方は、他の症状として、イライラ感・疲労感・胃腸の不調などを感じている方が多いようです。また、中年期以降の女性の約半数の方に不眠症状があるというデーターもあり、女性ホルモンの変化が大きくかかわっていると考えられています。
また、イライラ感や精神的なストレス・不安・考え事などで脳や神経の興奮した状態が続くと、自律神経のバランスが乱れ、身体のリズムも崩れやすくなります。
他に、食べすぎやお酒の飲みすぎも不眠症の原因になります。
当院の鍼灸治療
当院では東洋医学に基づいて、精神活動のバランスを整える・自律神経のバランス・胃腸の症状・女性ホルモンのバランスを調整するなど、不眠の症状を総合的にとらえ、不眠の症状を改善するための治療を行っております。不眠症は、「眠れない」ということがストレスにつながり、不眠の症状を悪化させてしまうこともあり、薬を常用している方も多いようです。 私たち人間の身体にとって必要な「バランス」や「リズム」を取り戻すことが不眠症を改善する為に大切なことだと感じています。
鍼灸治療でリラックス!
鍼灸治療を受けた方からは、「治療の後は、いつもよりぐっすり眠れる」「普段より早く眠くなって、トイレにも起きずに朝まで眠れた」「気持ちよく眠りに入れた」といった感想をいただいております。鍼灸治療は、身体全体の循環が良くなり、リラックス効果が高い治療です。
鍼灸治療に不安をお持ちの方も多い かと思いますが、当院には鍼灸が初めての方も多くご来院いただいております。不眠の症状でお困りでしたら、一度鍼灸治療を試してみてはいかがでしょうか?
リズムが不眠症対策のカギ
人間の身体は、”昼間に活動し夜間に休む”という活動のリズムを繰り返しています。私たちの身体の中でこの時計の働きをしているのが、脳の視床下部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分です。
人間は、およそ24時間の周期で睡眠と覚醒を繰り返していますが、このリズムのことを概日リズム(がいじつリズム)といいます。このリズムの働きには、脳の視床下部・脳幹の神経のネットワークなどによる調節が重要となります。また、自律神経のバランスや内分泌(ホルモン)機能にも、この概日リズムがあります。また、概日リズムは光の明暗の刺激によって調節されるという特徴があります。「朝、太陽の光の刺激を受けると良い」と言われるのは、そういった理由からなのです。身体に大切なリズムを整えることが重要なのです。また、ぐっすりと気持ち良く眠れることは、体にも脳にも必要で大切なことです。不眠対策の鍵を握るのは、自律神経の「バランス」と体内の「リズム」が重要と言えます。
自律神経のリズム
自律神経や内分泌(ホルモン)機能の多くは、睡眠ー覚醒のリズムに同調して働いています。自律神経は、環境に適した状態になるように、私たちが無意識のうちに、身体を整えてくれています。
§ 体温リズム 人間の身体は、一日のうちで体温が変化しています。朝起きる直前がもっとも低く、その後に少しずつ上がっていき夕方にはピークに達します。その体温の差は、およそ1℃以内です。
§ 循環器系のリズム 心拍数や血圧は日中に高くなり、夜間や睡眠時には低くなる傾向があります。
§ ホルモンのリズム 副腎皮質ホルモンや、副腎髄質ホルモン、また、睡眠に関わるメラトニンというホルモンの血液中の濃度にもリズムがあります。
※メラトニンとは・・・脳の松果体(しょうかたい)というところで作られ、分泌されるホルモンです。光の刺激によって分泌が抑えられ、逆に、夜間には多く分泌されます。メラトニンの作用は、睡眠作用の他に睡眠と覚醒のリズムを整えてくれる働きがあります。時差ボケのような状態では、メラトニンの働きが大きく関係しているようです。 心臓も呼吸もリズムが大切 私たちの身体には他にも大切なリズムがあります。それは、心拍数や呼吸の リズムです。心拍や呼吸のリズムは、”日中に早くなり、夜間には遅くなる”というリズムがあります。
§ 心臓のリズム 心臓には、心拍数が毎分約70回というリズムがあり、この働きは心臓にある洞房結節で自動的に調節されています。この洞房結節の働きは自律神経によって調節されているため、心臓のリズムは、自律神経やホルモンの影響を受けているのです。
§ 呼吸のリズム 呼吸のリズムは、脳幹にある呼吸中枢というところで調節されています。動脈 や脳幹の刺激を受ける受容器による影響を受けています。
ドキドキを感じている時、心臓のリズムは早くなって心拍数が増えます。緊張している時は、呼吸が浅くなり呼吸のリズムが速くなり呼吸数が増えます。心の状態は、身体に深く関係しているのです。 |