ズキズキした拍動性の強い痛みが数時間から数日間続く、片頭痛。仕事や家庭において、複数の役割を担う時期にあたる20代~40代の女性に多いため、体質は仕方ないものと半ばあきらめて、いつ来るかもしれない痛みの予感を抱えながら頑張っている人も少なくないのではないでしょうか。実は近年発表された慢性疼痛のガイドラインに、鍼灸治療が慢性片頭痛予防に有用である可能性があることが記載されました。起きてしまった頭痛への対処法としてはもちろんのこと、東洋医学の強みを生かした体質改善、いわゆる片頭痛の起きにくい身体づくりにも使えるツボを中心に、ご紹介します!
目次
慢性的な片頭痛の予防に効果的なツボ 8選
合谷(ごうこく)
百会(ひゃくえ)
天柱(てんちゅう)
豊隆(ほうりゅう)
太渓(たいけい)
公孫(こうそん)
太衝(たいしょう)
足臨泣(あしりんきゅう)
ツボを押すときの注意点
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『片頭痛のツボ』に関するQ&A
まとめ
慢性的な片頭痛の予防に効果的なツボ 8選
東洋医学的に片頭痛は、①血・津液(しんえき)・精という、体を潤したり栄養を与えたりする要素の働きが低下し、五臓の肝の働きが失調して、頭に気や熱が集まってしまい症状が現れる「肝陽上亢(かんようじょうこう)に伴って症状が出るパターン、②もともと冷えの体質で、体に「寒湿(体の中に寒さと余計な水分が蓄積する状態)」が溜まってしまって症状が出るパターン、③「寒湿」の出現に加えて、「瘀血(血の滞り)」が生じて症状が出るパターンがあるとされています。
ツボ刺激は、こうしたパターンに応じたツボと、症状が出ている経絡(ツボの流れ)上のツボを組み合わせて行ってみましょう。
合谷(ごうこく)
いろいろな作用を持つ合谷。既に「眠気覚ましのツボ」のコラムでもご紹介しましたが、頭顔面部の症状に広く用いられ、特に頭痛などの痛み症状に対しては欠かすことができません。合谷は頭部に集まった余計な気や熱を流してくれる作用があり、東洋医学的な「鎮痛」の作用もあるツボです。痛みがある場合はまずこのツボを押してみましょう。また日常的な頭痛の予防としても時々押してください。手の親指と人差し指の間に位置します。押す時は手の甲側からです。2指の真ん中ではなく、人差し指の骨側に向かって押してください。
百会(ひゃくえ)
こちらも既に「眠気覚ましのツボ」としてもご紹介していますが、百会は、頭に集まった余計な熱を取り去る「清熱」作用を持っています。特に、イライラしやすい、のぼせやすい、めまいがする、顔が赤くなるのような症状を伴う場合は、頭部に熱が行っている証拠です。日常的にこうした症状を自覚されやすい方は、時々百会を押して頭をスッキリさせましょう。頭の中心線上で、ちょうど頭頂部に位置します。頭の中心に向かって真っすぐツボを奥に押し込むようなイメージで押しましょう。
天柱(てんちゅう)
頭痛のみならず、首や肩のこりでも頻用される経穴の一つです。天柱は眉頭から後頭部にかけて流れる膀胱経に存在する経穴で、この経絡の気の流れを良くすると同時に、東洋医学的な「鎮痛」の作用もあるツボです。片頭痛の中でも特に後頭部の頭痛に対して用いると良いでしょう。また天柱から真上3cmのあたりにかけての後頭部の場所は、頭痛に対する鍼治療でも効果的とされているエリアですので、天柱のみならずその上にかけて少し広めの範囲で押して見ると良いでしょう。
豊隆(ほうりゅう)
前頭部から始まり、足に流れていく胃経にあるツボで、体内の「痰飲(たんいん)」(水液代謝がうまくいかなくなりネットリと滞った状態)を取り除く作用があるツボです。胃の調子が悪い、あるいは普段からちょっと食べ過ぎで、かつむくみやすい体質の人の片頭痛や、梅雨をはじめとする湿度の高い季節に起こる片頭痛に効果的でしょう。すねの少し外側で、膝と外くるぶしのちょうど中間あたり、肉付きのよい場所に位置します。足の力を抜いた状態で、両手の親指を重ね合わせ、足の中心に向かって徐々に強めの圧をかけます。
太渓(たいけい)
上述のように、東洋医学的な片頭痛の一つのパターンとして、「肝陽上亢」という体質が影響する場合があると指摘しました。「肝陽上亢」には、「陰虚(いんきょ)」という、血・津液(しんえき)・精といった、体の潤いや栄養に重要な要素の働きが低下した状態が関連します。陰虚では、日常的にのぼせやすい、変に汗をかく、めまいがするなど体上部の症状を伴う一方で、腰痛がある、腰から下がだるい、などの下半身の症状が現れます。こうした状態には、陰を補う「補陰(ほいん)」という作用を持つツボが効果的で、その代表的なツボの一つが太渓です。直接的に頭痛に効果的なツボではないですが、「肝陽上亢」の改善に役立つでしょう。内くるぶしの最も高い場所とアキレス腱の間の凹みにあり、動脈の拍動が触れる位置にあります。
公孫(こうそん)
片頭痛を起こしやすい体質パターンで、「寒湿」というものがあると説明しました。片頭痛を起こしやすい女性の方々には、手足の冷え、特に足の冷えを伴う方が多いようです。公孫は、普段からお腹の調子が悪く、むくみやすい、かつ下肢の冷えを伴いやすいような体質の方に効果的で、太渓同様、このツボも直接的に頭痛を抑えるというよりは、「寒湿」の体質を改善することに役立つツボです。また「寒湿」の体質の改善を通じて片頭痛のもう一つの体質要因である「瘀血」の改善にも繋がる可能性もあります。公孫は足の親指の付け根から続く、土踏まずのアーチの真ん中で、なでるように触ると周辺よりわずかに凹んでいます。痛みを感じやすいツボですので、息を吐きながらゆっくりと押してください。
太衝(たいしょう)
東洋医学の臓腑の一つに、「肝」というものがあります。肝には、気を体の隅々まで淀みなく流すという作用がありますが、ストレスがたまる、体を日常的にあまり動かさないことで気の巡りが悪くなるようなことが積み重なると、肝の働きが悪くなり、体内の気を上手に巡らせることができなくなります。また、もともと気は陽に属し、浮揚しやすい性質を持っている上、肝の働きが悪く気が回らないと、体の上部、特に頭部に気が上昇しやすくなります。このような状態になると、日常的にイライラする、怒りっぽい、めまいがする、というような症状が現れやすくなります。
太衝は肝の働きの調整に直接的に関わる肝経に属し、「疏肝(そせつ:肝が気を流す働きを促す)」という作用を持っているツボです。足の親指と第二指の骨の間を甲に向かって辿った行き止まり、動脈の拍動を感じる場所です。やや内下方に押します。
足臨泣(あしりんきゅう)
片頭痛というと、片方の側頭部が痛むことが多いイメージがないでしょうか。側頭部には、胆経という経絡が流れていて、片頭痛の中でも側頭部の痛みを呈しやすい方には、胆経のツボを使うことがとても多いです。胆経は先程ご説明した肝経と表と裏の関係にある経絡で、肝の症状(イライラ、のぼせ、めまいなど)を伴い、かつ側頭部が痛むような場合に用いると効果的です。なかでも足臨泣は「清頭目(せいとうもく)」という、頭や目の熱を取るという作用がありますので、目が赤い、目が疲れるなどの症状も伴う方はこのツボを使ってみるとよいでしょう。足の小指と第四指の付け根にあります。
ツボを押すときの注意点
どのツボを押すときにも共通していえる注意点は、「痛すぎないように」、そして「押しすぎないように」。過剰な刺激は時に痛みが残ったり、内出血を起こすことがありますので、特に出血傾向のある方や、皮膚が敏感な方、痛みに敏感な方はくれぐれもやり過ぎに注意してください。
東洋医学的にも強すぎる刺激は行き過ぎた「瀉法」(亢進した機能を正常に近づける方法ですが、程度が大事)となり、個々のツボが持つ特性を生かせなかったり、複数を用いる場合にもバランスが崩れて効果が薄れてしまいます。また頭痛発作時には、頭部周辺の経穴をおすと却って痛みが強くなってしまうこともあります。その場合は合谷、太衝、足臨泣などの手足末端にあるツボを中心に押してみてください。