脂肪酸

シボウサン

【英】fatty acids

【独】Fettsa¨ure

【仏】acide gras

同義語:脂酸

 

脂肪fatの加水分解で得られ,天然にあるものは偶数個の炭素原子をもつ直鎖の化合物である.二重結合をもたない飽和型と,一つかあるいはそれ以上の二重結合をもつ不飽和型に大別される.その系統的命名法は脂肪酸と同数の炭素原子をもつ炭化水素に因んで名づけられ,飽和型は炭化水素の語尾を‐anoic,不飽和型は‐enoicとする.炭素原子はカルボキシル基から数え(位置番号1),名称の基本となる主炭素鎖は,カルボキシル基を含む直鎖または両端をカルボキシル基とする直鎖部分である.二重,三重結合の位置は数字で示す.天然にはシス,トランス幾何異性体があり,天然にはシス型が多いため,2, 3の例外を除いてトランス型のみ“trans‐”をつける.飽和脂肪酸saturated fatty acidは分子式CnH2n+1 COOHで示され,なかでもパルミチン酸は自然界で最も広く分布する(パルミチン酸,C16:0).一方,不飽和脂肪酸*unsaturated fatty acidのうち,ほとんどの一不飽和脂肪酸は二重結合の位置が炭素910の間にあり,パルミトレン酸(C16:1:9),オレイン酸(C18:1:9)が最も普通である.飽和型は融点が高く,室温では固体であるが,不飽和型は同じ鎖長の飽和型より融点が低く,一般に液体である.哺乳動物では,飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は他の前駆体から生合成できるが,リノール酸linolic acidC18:2:9,12),リノレン酸linolenic acidC18:3:9,12,15)およびアラキドン酸arachidonic acidC20:4:5,8,11,14)は合成できず,食事として経口的に摂取しなければならない.しかもこれらが欠乏すると多くの病理的症状を呈することから,これらは不可欠脂肪酸とも必須脂肪酸*essential fatty acid(旧名 ビタミンF)とも呼ばれる.