クエン酸回路

クエンサンカイロ

【英】citric acid cycle, tricarboxylic acid cycle

【独】Zitronensa¨ureZyklus, Tricarbonsa¨ureZyklus

【仏】cycle d'acid citrique, cycle tricarboxylique

糖,脂肪酸,多くのアミノ酸などの炭素骨格を完全に酸化するミトコンドリア*のマトリックスにある代謝回路(図).トリカルボン酸が関与するのでトリカルボン酸回路tricarboxylic acid cycleTCAサイクルTCA cycle),Krebs1937)が提案したのでクレブスサイクルKrebs cycleとも呼ばれる.アセチルCoA*とオキサロ酢酸との縮合によるクエン酸の生成に始まり,イソクエン酸の酸化的脱炭酸,2‐オキソグルタル酸の酸化的脱炭酸,スクシニルCoA*からのCoAの脱離,コハク酸の脱水素,フマル酸*の加水,リンゴ酸の脱水素によってオキサロ酢酸が生成することにより,アセチルCoAのアセチル基は完全に酸化される.このあいだに生成する還元型補酵素は酸化的リン酸化系によりATP(アデノシン三リン酸*)を生産し,CoAの脱離はATP生産と共役しているので,一回転で12個のATPが生産される.この回路はまた生合成にも関与している.2‐オキソグルタル酸,オキサロ酢酸はそれぞれグルタミン酸,アスパラギン酸の生成に利用され,スクシニルCoAはヘム合成に使われる.またオキサロ酢酸はホスホエノールピルビン酸となり糖新生に利用される.このように中間代謝物が生合成に利用されると,オキサロ酢酸が不足するようにみえるが,これはピルビン酸カルボキシラーゼがアセチルCoAによって活性化されることによって供給される.ATPNADHの濃度が高くなるとイソクエン酸の酸化は押さえられ,クエン酸は細胞溶質に出てアセチルCoAカルボキシラーゼを活性化するとともに,アセチルCoANADPHを供給して脂肪酸合成を促進する.このようにこの回路は糖,脂肪,アミノ酸の合成・分解の調節点である.

→図