アクアコバラミン

アクアコバラミン

【英】aquacobalamin

 

=ヒドロキソコバラミン

ヒドロキソコバラミン

ヒドロキソコバラミン

【英】hydroxocobalamin

【独】Hydroxokobalamin

【仏】hydroxocobalamine

【ラ】hydroxocobalaminum

同義語:アクアコバラミン aquacobalamin,酢酸ヒドロキソコバラミンhydroxocobalamin acetate,ビタミンB12a vitamin B12a,OHB12

 

シアノコバラミンcyanocobalaminCN基がOH基で置換されたもので,水溶液中ではH+をとってアクアコバラミンの形をとる.シアノコバラミンに比べて不安定であるが,組織に対する親和性とそれに関連する体内保留時間はシアノコバラミンに比して優れており,筋肉内に注射するとき,その後の生体内ビタミンB12量は,同量のシアノコバラミンを投与した場合に比べはるかに高い濃度に維持される.また肝臓中での補酵素B12 coenzyme B12(CoB12)への変換もシアノコバラミンに比べて速く,悪性貧血疾患や神経系疾患などにも優れているといわれる.酢酸塩(C62H89CoN13O15PCHCOOH.分子量1,406.43.暗赤色の結晶.水に溶けやすい.吸湿性)が製剤として用いられている.→ビタミンB12

ビタミンB12

ビタミンビー12

【英】vitamin B12(V. B12)

【独】Vitamin B12

【仏】vitamine B12

同義語:シアノコバラミンcyanocobalamin

 

肝臓中の抗悪性貧血因子として発見,単離された.ビタミンB12という名称は狭義にはシアノコバラミン(C63H88CoN14O14P.分子量1,355.38.暗赤色の結晶.水にやや溶けにくい.吸湿性)をさすが,広義にはコバラミンcobalaminをさす.吸収されたビタミンB12類(シアノコバラミン,ヒドロキソコバラミン*,アクアコバラミンaquacobalaminなど)は,生体内で還元酵素によりビタミンB12Sに還元され,さらにアデノシル化あるいはメチル化されて補酵素型(アデノシルコバラミンadenosylcobalaminあるいはメチルコバラミン*)に変換され,生理活性を発揮する.肝臓に多量に含まれ,その大半がアデノシルコバラミンの形で存在する.生理作用は骨髄のDNA合成低下に拮抗する抗貧血因子としてだけではなく,水素移動を伴う酵素反応やメチル基転移反応に関与している.このビタミンは細菌によって作られ,動物はこれを利用する.食品では,ウシ肝臓のほか卵黄,魚肉中に多く含まれる.細菌のある種の菌株は非常に大量のビタミンB12を産生するので,本品はもっぱら発酵法によって製造されている.→造血薬

造血薬

ゾウケツヤク

【英】hematopoietics

【独】Blutbildungsmittel

【仏】he´matopo i¨ e´toques

【ラ】haematopoietica

 

血液中の赤血球数減少またはヘモグロビン低下による貧血の治療に用いる薬剤である. 1)鉄剤:鉄欠乏性貧血*の治療に用いる.経口剤として硫酸第一鉄,オロチン酸第一鉄,フマール酸第一鉄などがある.硫酸第一鉄の徐放性製剤sustained release preparation(例えばFerogradumet)は腸管内で鉄が徐々に放出され112回服用の利点がある.非経口的にはコンドロイチン硫酸鉄コロイド,グルコン酸第二鉄,含糖酸化鉄などが注射剤として用いられる. 2)ビタミンB12*:各種の貧血に用いられる.cyanocobalamin, ヒドロキソコバラミン*hydroxocobalaminのほか,補酵素型のcobamamide, mecobalaminが用いられ,貧血に伴う神経障害にも有効である.注射剤として用いるが,補酵素型薬剤は経口投与も可能である. 3)葉酸*

葉酸

ヨウサン

【英】folic acidFA

【独】Folsa¨ure

【仏】acide folique

【ラ】acidum folicum

同義語:ビタミンM vitamin MV. M),ビタミンB vitamin BC ,プテロイルグルタミン酸pteroylglutamic acidPGA),PteGlu

 

C19H19NO6・ 分子量441.40.黄色~橙黄色の結晶.水にほとんど溶けない.光に対して不安定.ヒトやサルの抗貧血因子,また乳酸菌の増殖因子*としてホウレンソウから見出されたビタミンB複合体*の一つで,ラテン語のfolium(葉)にちなんでfolic acidと名づけられた.葉酸という名称は狭義には,プテロイル〔モノ〕グルタミン酸をさすが,広義には葉酸活性を有する類似構造物の総称として用いられる.葉酸は酵母,肉,肝臓,緑色野菜など多くの食物に含まれ,その一部は遊離型で,大部分は26個のグルタミン酸*がペプチド結合したポリグルタミン酸誘導体として含まれている.葉酸にグルタミン酸が6個結合したものをとくに,ビタミンBCあるいはビタミンBCコンジュゲートと呼ぶことがある.結合しているグルタミン酸は,組織中のγ‐グルタルヒドラーゼによって加水分解され,葉酸が遊離する.さらに,葉酸は還元されて5,6,7,8‐テトラヒドロ葉酸(FAH4)となる.生理的にはFAH4のホルミル体,メチレン体,メチル体,メテニル体などになり,C 1単位の転移反応に関与する酵素の補酵素*として,プリン,ピリミジンの生合成,アミノ酸代謝,タンパク質合成などに関与している.葉酸は生体の組織細胞の発育および機能を正常に保つために必要で,ことに赤血球の正常な形成に関与し,巨赤芽球性貧血*に際して網赤血球*および赤血球の成熟をもたらし,また白血球減少症leukopeniaには骨髄を刺激して白血球を増加させる.葉酸やビタミンB12*の欠乏は骨髄成分の成熟停止を起こす.葉酸欠乏症*folic acid deficiency(ビタミンM欠乏症)の予防および治療,妊娠時の需要増大に対する補給,悪性貧血の補助療法に用いられる.→造血薬

葉酸欠乏症

ヨウサンケツボウショウ

【英】folic acid deficiency

 

摂取量が必要量(150μg)の1/10に低下すると,約4ヵ月目で葉酸欠乏症となり,骨髄*に巨赤芽球症を認めるようになる.葉酸の需要が増加する妊娠,成長,悪性新生物,溶血性貧血*などの状態で欠乏症を起こしやすい.葉酸が欠乏すると回転が速い造血細胞,舌・消化管の粘膜細胞のDNA合成が阻害され,成熟障害が起こる.骨髄細胞がこの状態になれば巨赤芽球性貧血*となる.その他の症状もビタミンB12欠乏症(悪性貧血*

悪性貧血

アクセイヒンケツ

【英】pernicious anemia

【独】pernizio¨se Ana¨mie

【仏】ane´mie pernicieuse

同義語:アジソン・ビールメル貧血AddisonBiermer anemia, Addisonian anemia,BiermerAna¨mie

 

胃内因子*の分泌障害に基づくビタミンB12*(VB12)吸収障害のためにVB12の欠乏をきたし,幼若造血細胞のDNA合成が阻害されることにより起こる貧血.成人型と先天型に分けられる.先天型は胃粘膜の萎縮は伴わずに胃内因子の産生のみが先天的に欠如する病型で,きわめてまれである.胃全摘後VB12を補充しないとVB12の欠乏をきたして同様の貧血が起こる.成人型は白人に多く,黄色人種,黒人の順に頻度は低下する.好発年齢は60歳代,20歳以下の発症はきわめてまれである.〔臨床所見〕 貧血症状のほかに消化器症状(舌の疼痛・発赤・乳頭萎縮,食欲不振,下痢,便秘など),神経・精神所見(しびれ感などの知覚異常,腱反射の減弱,位置覚・振動覚の減弱など),黄疸,出血,毛髪異常などがある.〔検査所見〕 末梢血で大球性高色素性貧血を呈する.好中球の過分節が認められ,好中球数,血小板数の減少を示すこともある.骨髄像では赤芽球系の過形成,巨赤芽球を認める.顆粒球系細胞も大型となり,とくに後骨髄球において著明である.多核の巨核球を認めることもある.このような巨赤芽球性造血を示す骨髄では,血球の成熟過程の途中で崩壊し(無効造血*),末梢血中に流出する血球数が減少している.無効造血の反映として血清ビリルビン(とくに間接型)の上昇,尿中・糞便中のウロビリノーゲン排泄増加,血清LDHの上昇が認められる.血清VB12の低値,メチルマロン酸の尿中排泄増加などのVB12欠乏の所見が認められる.最大刺激による胃液検査で無酸症を示し内因子分泌は著明に低下している.内視鏡*,生検などにより胃粘膜の萎縮像が認められる.シリングテスト*Schilling testでは内因子欠乏の所見を呈する.胃の自己免疫現象として内因子抗体が60%の症例に,壁細胞抗体が90%症例に認められる.〔治療〕 VB12の投与により造血病態は正常化するが,胃粘膜病変は不変である.

)と類似するが,神経症状を欠く.

:葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血*の治療や悪性貧血*の補助療法に用いられる.注射剤と経口剤がある. 4)エリスロポエチン*:透析施行時の腎性貧血の治療に用いる. 5)ビタミンB6*:鉄芽球性貧血*の治療に用いる. 6)その他:後天性溶血性貧血の治療に副腎皮質ホルモンが,再生不良性貧血*の治療にタンパク同化ホルモンや副腎皮質ホルモンも用いられる.