アキレス腱延長術

アキレスケンエンチョウジュツ

【英】elongation of Achilles tendon

【独】Achillessehnenverla¨ngerung

【仏】allongement du tendond'Achille

 

足関節尖足位拘縮例においては,下腿三頭筋が短縮していることが多い.したがって拘縮を手術的に改善するためには,アキレス腱を延長する必要がある.アキレス腱を延長する場合には,一般にZ型延長法(図1)が用いられる.つまり腱付着部で腱の1/2の線維を横切したのち,延長する長さの分だけ近位部で,残りの1/2の線維を横切して足関節を背屈するのである.そして横切部を端々縫合すれば,目的とするアキレス腱の延長が得られるわけである.この場合,足関節の背側関節包を横切する必要も生ずる場合が多い.アキレス腱を延長することにより足関節の底屈力は低下するが,それによる日常生活上の不便さは生じない.アキレス腱延長術を行ったあとの足関節固定期間は5週間で十分である.ヴュルピウス延長術Vulpiuselongation(図2)は,アキレス腱を腓腹筋*

腓腹筋

ヒフクキン

【英】gastrocnemius muscle

【独】Zwillingswadenmuskel

【仏】muscles jumeaux

【ラ】musculus gastrocnemius

同義語:腓腸筋

 

下腿の屈筋の浅層に属し,より深層のヒラメ筋とともに下腿三頭筋triceps surae muscleを構成する.起始は内側頭と外側頭に分かれ,各々大腿骨の内側および外側上顆につき,停止はヒラメ筋の腱板と合わさって,踵骨腱*(アキレス腱)となり踵骨隆起後面につく.脛骨神経の支配で,足の底屈に作用する.椎間板ヘルニアなどの原因により第1仙骨神経根が障害されると,腓腹筋の脱力をきたすため,つま先立ちが困難となり,下肢後面外側・足底の感覚障害とアキレス腱反射*の低下を伴う.ちなみに第5腰神経根の障害では,前脛骨筋の脱力により,かかと歩きが困難となり,下肢外側・足背の感覚障害を伴う.腓腹筋外側頭の腱に種子骨が形成されることがあり,ファベラfabellaと呼ばれ,膝関節撮影では大腿骨外側顆の骨縁が二重に描出される.fabellaの圧迫による腓骨神経の絞扼entrapや,摩擦impingementによる腱炎が関節包joint capsuleの炎症に波及することがある.

との移行部で山型に切離したのち足関節を強く背屈し腱端を離開させる方法である.→腱延長術

腱延長術

ケンエンチョウジュツ

【英】tendon elongation, tendon lengthening

【独】Sehnenverla¨ngerung

【仏】allongement du tendon

 

腱の延長は拘縮や変形の矯正時によく用いられる.方法としては単に腱移植して端々縫合する場合や,Z状に切って延長する場合などがある.アキレス腱の延長では上下に部分的な横切を入れ徒手的に延長するように牽引すると連結する縦走線維部が線維内で伸ばされることもある.延長にあたっては必要な長さを術前よく計測して行うことが重要で,過度の延長は術後機能低下をきたす.→アキレス腱延長術

→図アキレス腱延長術