アガロース

アガロース

【英】agarose

【独】Agarose

【仏】agarose 

寒天水溶液にアンモニウム塩を加え,アガロペクチンagaropectinを沈殿除去して得られる多糖.

 〔D‐ガラクトシル(β 14)‐

    3, 6‐アンヒドロ‐L‐ガラクトシル(α 13)〕n 

の構造を示す.熱水に溶け,約1%溶液は室温でゼリー状ゲルとなり,多糖鎖間の網目構造は高分子も拡散できるので,免疫拡散法*,

免疫拡散法

メンエキカクサンホウ

【英】immunodiffusion

【独】Immundiffusion

【仏】immunodiffusion

同義語:ゲル〔内〕拡散〔法〕gel diffusion,オクタロニー法Ouchterlony technique 

寒天ゲルなどの支持体の中で,抗原または抗原と抗体を拡散させ,沈降リングまたは沈降線を形成させる方法で,単一(single)と二元(double)免疫拡散法とがある.単一拡散法は通常,一定濃度の抗体を支持体中に入れておき穴をあけ,その穴から抗原溶液を拡散させ沈降リングを形成させてその直径から抗原濃度を測定する.リング直径は抗原濃度の対数に比例する二元免疫拡散法は俗にOuchterlony法と呼ばれているが,実際はEleckが寒天上に培養した細菌の分泌する毒素を抗毒素血清を同じ寒天中の溝から拡散させて同定したのが最初である.すなわちこの方法では支持体中の2つの穴から抗原および抗体の両者を互いに同時に拡散させる方法であり,図のように沈降線は両者の中間に形成される.abは抗原および抗体の穴からの沈降線までの距離でありDa, Dbはそれぞれ抗原と抗体の拡散定数である.

→図

 電気泳動*(DNA断片の)

電気泳動

デンキエイドウ

【英】electrophoresis

【独】Elektrophorese

【仏】e´lectrophorese 

電導性を有する溶液に荷電粒子を溶解し,この溶液に一対の電極を浸して電圧をかけると,荷電粒子は自身と反対の符号の極へ向かって移動する.この現象を電気泳動と呼ぶ.この方法によってタンパク質の等電点が発見された. Tiselius型電気泳動装置(チゼリウス装置Tiselius electrophoresis apparatus)が開発されるに及び,電気泳動は,荷電をもつ物質の分離分析に広く用いられるに至った.次いで対流の発生を抑えるため,支持体を用いて試料をバンド状に分離するゾーン電気泳動法zone electrophoresisが開発されたが,これには濾紙電気泳動法,セルロースアセテート膜電気泳動法,ゲル電気泳動法*,

ゲル電気泳動法

ゲルデンキエイドウホウ

【英】gel electrophoresis

【独】Gelelektrophorese

【仏】e´lectrophorese sur gel 

支持体としてゲルを用いる電気泳動*法.ゲルは対流や,電極表面での気体発生を抑制し,試料のバンドが広がるのを防止する.ゲルは分子ふるいの性質をもつことがあり(ポリアクリルアミドゲルpolyacrylamide gelなど),電気泳動移動度が等しいものでも,分子の形状や大きさで分離できる.一方,試料の電気的性質のみに基づく分離パターンを観察するには分子ふるい効果が少なく,試料に対する吸着性も低いゲル(例えばタンパク質の分離における寒天ゲル)が用いられる.通常,ゲルは電気浸透を起こさないものが望ましいが,電気浸透を積極的に利用した方法(カウンターイムノエレクトロホレシス*)もある.試料は泳動後,それ自体の色,蛍光,あるいは染色,オートラジオグラフィーなどによって検出されるが,ゲルは染色にも便利な媒体である.ゲルとしては,上記のほかにデンプンゲル,アガロースゲルなどがある.→ポリアクリルアミド

等電点電気泳動法*

等電点電気泳動法

トウデンテンデンキエイドウホウ

【英】isoelectric focusing 

タンパク質などの両性電解質*amphoteric electrolyteの荷電状態を利用した電気泳動*法の一つ.一般の電気泳動法がある特定のpHにおける両性電解質の荷電状態の差を利用して分離を行うのに対し,等電点電気泳動法は,それぞれの両性電解質があるpHにおいて,実効電荷が0となって移動しなくなるのを利用して,pH勾配をもった両性担体(アンホラインに代表されるポリアミノポリカルボン酸)の存在下に泳動させ,等電点の違いで分離する方法である.最初はカラム中にショ糖による密度勾配を作り,泳動分離する方法(カラム等電点電気泳動法column isoelectric focusing)として開発されたが,最近はポリアクリルアミドゲルを用いるゲル等電点電気泳動法gel isoelectric focusingが開発されている.本法によってタンパク質の等電点*isoelectric pointpI)を求めることもできる.

などがある.分離される荷電粒子は小分子の陰・陽イオンから,ペプチド,タンパク質,核酸のような高分子電解質イオン,血球をはじめとする一般の細胞などに及ぶ.また,それ自身は荷電をもたなくても,他の化合物と結合して荷電をもつものにも適用できる.例えば糖やポリアルコールはホウ酸と錯体を形成して陰イオンとなるので分離できる.最近では,高い感度と特異性を兼ね備えた免疫電気泳動法*が,抗原,抗体の分析に用いられるようになり,疾病の診断などに有効性を発揮している.

の支持体として用いられ,ビーズ状にしたものはセファロースとして市販され,ゲル濾過に用いられる.