上がり下がり現象

アガリサガリゲンショウ

【英】upanddown phenomenon

 

→すり減り現象

すり減り現象

スリヘリゲンショウ

【英】wearingoff phenomenon

 

パーキンソン病*

パーキンソン病

パーキンソンビョウ

【英】Parkinson diseasePD

同義語:振戦麻痺paralysis agitans, shaking palsy,特発性パーキンソニズムidiopathic parkinsonism

 

中脳黒質のドパミン作動性神経細胞の変性脱落によって,神経終末がある線条体でドパミン不足をきたし,錐体外路性運動障害が出現する変性疾患で,静止時振戦*,

静止時振戦

セイシジシンセン

【英】resting tremor, tremor at rest

【仏】tremblement de repos

同義語:安静時振戦,休止時振戦

 

手を膝の上に軽く置いたようなとき,すなわち筋が活動していない状態で出現する振戦*で,36 Hzの比較的ゆっくりしたリズムのことが多い.精神的緊張,疲労時などに増強し,睡眠時には消失する.パーキンソン病*に典型的にみられる.パーキンソン病の振戦は,上肢,とくに手指に出現することが多いが,下肢から首や顔面に広がることもある.手指にみられる場合は,母指と示指の腹を擦り合わせるような運動となり,“丸薬をまるめる”ような振戦pill rolling tremor(丸剤製造様運動*)と表現されることもある.首にみられる場合は,うなずきを繰り返すような前後方向の運動のことが多い.

振戦

シンセン

【英】tremor

【独】Tremor

【仏】tremblement

 

ある関節を中心として起こる拮抗筋の間にみられる相反性の律動的な不随意運動で,一般には“ふるえ”と表現される異常運動である.わずかな振戦は健常人にも認められ,生理的振戦physiological tremorと呼ばれる.病的な振戦は一般に,その出現する状況により分類される.静止時振戦*resting tremor(安静時振戦tremor at rest)は,手を膝の上に軽く置いたときなど,筋が活動していない状態で出現する振戦で,36 Hzの比較的ゆっくりしたリズムが多い.パーキンソン病*に典型をみる.姿勢時振戦*postural tremorは,上肢を前方に挙上した状態に保つときのように,筋がある一定の強さの持続的な活動を行っているときに出現する振戦である.412 Hzと広い範囲の活動を示す.本態性振戦*essential tremorに典型的で比較的速いものが多い.動作時振戦action tremorあるいは運動時振戦kinetic tremorは,物を取ろうと手を伸ばしたときなど,筋が随意的な活動を行っている状態で出現する振戦.小脳の障害で生じる.

 

姿勢時振戦

シセイジシンセン

【英】postural tremor

【独】tremblement d'attitude

 

姿勢時振戦は,上肢を前方に挙上した状態に保つときのように,筋がある一定の強さの持続的な活動を行っているときに出現する振戦*である.412Hzと広い範囲の活動を示す.本態性振戦*essential tremorに典型的で比較的速いものが多い.健常人にもみられる生理的振戦physiological tremorは姿勢時に著明なことが多く,10Hz前後で細かいものである.

 

本態性振戦

ホンタイセイシンセン

【英】essential tremor

同義語:家族性振戦familial tremor

 

とくに原因がなく生じる振戦*のみを症状とする疾患.振戦以外に神経学的異常所見をみない.振戦の周期は,412 Hzとかなり幅広く,姿勢時とくに肢位保持に際して上肢の遠位部に現れることが多い.安静時にも振戦がみられることがあるが(→静止時振戦),姿勢時振戦*postural tremorのほうが主であり振幅も小さい.頭部にみられることもあり,また頭部のみに限局することもある.精神的緊張,疲労時などに増強し,睡眠で消失する.飲酒で軽快することは重要な徴候である.この振戦の一部には,生理的振戦physiological tremorが亢進したものも含まれている.また,約60%に家族歴がみられ,常染色体優性遺伝を示す.従来,老年性振戦*senile tremorと呼ばれていたものは本症の孤発例,晩発例と考えられている.いくつかのタイプがあり,均一な疾患ではないと考えられている.

 

老年性振戦

ロウネンセイシンセン

【英】senile tremor

 

高齢者の上肢や頭部にみられる振戦である.パーキンソニズム*の振戦とは異なり微細で周波数は10 Hz程度高い.姿勢保持時に生じ,経過とともに静止時にも認められるようになる.脱力,筋トーヌスの変化はみられず,パーキンソニズムの振戦とは鑑別可能である.精神症状は欠如する.

 

パーキンソニズム

パーキンソニズム

【英】parkinsonism

【独】Parkinsonismus

【仏】parkinsonisme

同義語:パーキンソン症候群parkinsonian syndrome

 

パーキンソニズム(パーキンソン症候群)とは,パーキンソン病*の特徴である振戦*,筋強剛,無動・動作緩慢,小刻み歩行de´marche a petits pas,すくみ足歩行freezing of gait,仮面様顔貌*のような錐体外路症状のいくつかが出現する疾患全体をさす概念で,多数の疾患が含まれる.40歳以下で発症した場合は若年性パーキンソニズムと呼ばれ,家族性発症が多い.原因疾患を大別すると,1 特発性パーキンソニズムidiopathic parkinsonism(パーキンソン病と同義),2 原因が明らかな症候性(二次性)パーキンソニズムsymptomatic p.,3 パーキンソン病以外の原因不明の神経変性疾患によるもの,の3つがある(表).L‐ドパや,その他の抗パーキンソン薬は,パーキンソン病以外の疾患には有効でない.症候性パーキンソニズムの中で最も頻度が高いのは,脳血管性パーキンソニズムarteriosclerotic p.と薬剤性パーキンソニズムdruginduced p.である.前者は大脳基底核の多発梗塞や虚血性の大脳白質変性が原因で生じ,開脚位の小刻み歩行と筋強剛を特徴とする.薬剤性パーキンソニズムの原因薬は,線条体のドパミン受容体遮断作用を有するベンザミド誘導体(鎮吐薬,腸管運動改善薬,老年者の精神症状改善薬として繁用),フェノチアジン系・ブチロフェノン系の抗精神病薬,脳循環改善薬,カルシウム拮抗薬などで,進行が速く振戦が目立たない特徴があり,原因薬剤中止により改善する.神経変性疾患のうち,線条体黒質変性症*,進行性核上性麻痺*は,初期にはパーキンソン病との鑑別が困難なことがある(James Parkinsonはイギリスの医師,17551824).

→表


青斑核
セイハンカク
【英】nucleus of locus ceruleus
【ラ】nucleus loci cerulei

橋被蓋に存在するメラニンを含む細胞集団で,菱形窩より透見され,三叉神経中脳路の腹側に位置し,ノルアドレナリン作動性線維を広範な領域に投射する.上行性線維は内側前脳束を通り視床下部に到達し,さらに全大脳皮質,視床の前核群・外側膝状体などに投射する.小脳では登上線維の一部としてプルキンエ細胞に終止する.下行性線維は,背側縫線核,延髄,脊髄に投射する.睡眠,覚醒,呼吸,循環や皮質の活動,知覚入力などを調節する.

筋強剛,動作緩慢*・無動,姿勢反射障害を四主徴とする.とくに,親指と示指で丸薬をこねるような振戦*(丸剤製造様運動pillrolling movement)は本症に特徴的である.他に,仮面様顔貌*,瞬目減少,脂顔,小声で早口,前傾で四肢を屈曲した姿勢,小刻み歩行,すくみ足,突進歩行,方向転換困難などが出現し,便秘や排尿障害,低血圧などの自律神経症状も合併する.高齢者では痴呆の頻度が高い.補充療法であるL‐ドパが著効し,ドパミン受容体刺激薬,抗コリン薬も有効である.病理学的には,中脳の黒質と橋の青斑核*のメラニン含有神経細胞の変性脱落と,残存神経細胞質内に出現する好酸性封入体(→レヴィー小体)が認められる.有病率は10万人当たり約100人である.病因は不明であるが,何らかの中毒物質の関与が推定されている.

患者でLDOPAの長期療法中にLDOPAの薬効時間の短縮がみられる.内服後23時間で血中濃度の低下とともに症状増悪が認められ,この状態をすり減り現象wearingoff phenomenon(または上がり下がり現象upanddown phenomenon)という.LDOPAを増量するとこの現象は悪化することがあり,投与した同量を多分割にして服用させたり,DA agonistを併用して症状増悪を回避することが行われている.発現機序とてド〔ー〕パミン受容体

ド〔ー〕パミン受容体

ドーパミンジュヨウタイ

【英】dopamine receptorDAR

【独】Dopaminrezeptor

 

ドパミンを内在性アゴニストとする受容体.動物の運動量の調節,常同行動などに関与している.サブタイプ分類法には現在一致したものがないが,放射性リガンドの受容体への結合特性などからD1~4の4種に分類されている.標識リガンドとしてD1には〔3H〕フルペンチキソール,D2,4には〔3H〕スピペロン,D3には〔3H〕アポモルヒネが使用される.D1受容体はシナプス前部に存在し,ドパミン放出の調節に関与すると考えられている.→カテコールアミン受容体

カテコールアミン受容体

カテコールアミンジュヨウタイ

【英】catecholamine receptor

【独】Katecholaminrezeptor

 

神経伝達物質であるノルアドレナリン,ド〔ー〕パミンなどのカテコールアミンと結合する受容体であり,大別してアドレナリン受容体adrenaline receptorとド〔ー〕パミン受容体*dopamine receptorに分類される.前者にはαとβの2つのサブタイプがあり,αはα1とα2,βはβ1とβ2に細分される.また後者はD,D2およびD3に細分される.β1,β2,D1はアデニレートシクラーゼ活性化系,α2,D2はアデニレートシクラーゼ抑制系,またα1はイノシトールリン脂質代謝系を介して作用を発現するものと考えられている.

の感受性の変化があげられる.